Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『それをお金で買いますか』

90年代、この国を席巻した文系学問は、社会学であった。 橋爪大三郎さん、大澤真幸さんらをはじめとする“世紀転換期の社会学者たち”(※)が、論壇にて注目を集めるようになったのだ。今日でもオールドメディアやtwitterなどで「社会学者」の肩書を見かける機…

最近見た映画の感想(第278回)

・『無言歌』 1960年の中国西部。反右派闘争のあおりをうけ、ここにも政治犯の収容所が建設された。 本作は、そこで非人間的な生活を余儀なくされた政治犯たちの物語である。 ……いや、本作に「物語」と言えるほどの物語はない。本作は、収容所で生活する政治…

書評『アッラーのヨーロッパ』

日本では今、移民受け入れの是非をめぐって論戦がさかんに行われている。 日本は、本当に移民を受け入れても大丈夫なのだろうか。我々にイスラームの隣人と共存する用意はあるのか。 「イスラーム系移民はヨーロッパの問題でしょ? 日本は関係ないよ」などと…

書評『子どもたちの階級闘争』

本ブログではここ最近、ライターのブレイディみかこさんの著作をたびたび取り上げている。 ブレグジットに揺れる昨今のイギリスを、「反緊縮」という観点から鮮やかに解説してみせるブレイディさん。てっきり社会学者かなにかかと錯覚してしまうが、彼女の本…

書評『兼好法師』

日本文学史における「三大随筆」――『枕草子』の作者は清少納言、『方丈記』は鴨長明、そして『徒然草』の作者は吉田兼好。 ……そう国語の時間に習った。 ところが、その「吉田兼好」なる表記が実は誤りであると衝撃的な主張を展開しているのが、本日ご紹介す…

最近見た映画の感想(第277回)

・『天安門、恋人たち』 1980年代から2000年代にかけての、中国の青年たちを描いた作品である。 タイトルに「天安門」とあるとおり、本作ではかの89年の天安門事件も描かれる。が、それはメインテーマではなく、あくまで主人公たちの青春に影を落とすひとつ…

書評『魏志倭人伝の謎を解く』

どの国にも、我々現代人を魅了してやまない「古代史のロマン」は、当然ある。 中国の場合であれば、それは「伝説の夏王朝は実在したか否か」であろうし、わが国の場合であれば、それは「邪馬台国はどこに存在したか」となろう。 周知のとおり、女王・卑弥呼…

書評『聖なる侵入』

本ブログでは昨秋、『第四間氷期』というSF小説を取り上げた。 その書評の末尾を、僕は以下のように締めくくった。 ≪これからは、もっとSFを読み、本ブログにて皆さんにご紹介しよう――そう思っている。≫ 「なんだよ、そのわりには全然SF紹介してねーじ…

書評『地図がつくったタイ』

本ブログでは昨年暮れ、ナショナリズム研究の古典とされるアーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』を取り上げた。 さぁ本日も、ナショナリズム研究の書籍をご紹介するとしよう。トンチャイ・ウィニッチャクン『地図がつくったタイ 国民国家誕生の歴史…

最近見た映画の感想(第276回)

・『ホームレス中学生』 記念すべき新春第一発目の映画は、お笑い芸人・田村裕さんの自叙伝原作の『ホームレス中学生』だ。 「解散!」 父親のこの一言で本当に“解散”させられてしまった、ある一家の物語である。これがなんと実話だというのだから驚いてしま…

書評『ヨーロッパ・コーリング』

本ブログでは以前、『わたしは、ダイエル・ブレイク』というイギリス映画を取り上げたことがある。 緊縮財政をしく今日のイギリスにて、貧困に苦しむ庶民たちを描いた映画だ。見ていて「イギリスは先進国のはずなのに、庶民の生活はこんなにも悲惨になってい…

書評『<法と自由>講義』

本ブログではこれまで、哲学者・仲正昌樹さんによる「講義シリーズ」をたびたび取り上げてきた。 これは、仲正さんがおそらくは都内で行ったと思しき講義を活字化し、一冊の本にまとめたものである。話し言葉なので読みやすいし、重要な箇所は黒板のイラスト…

書評『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』

皆さん、新年おめでとう。 さっそく、今年一発目の書評を皆さんにお届けするとしよう。 記念すべき一発目だし、ここはひとつ、大物を取り上げよう。 カール・マルクス(1818‐1883)の『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』(新日本出版社)である。どう…

2018年秋アニメ感想(おまけ)×2019年冬アニメ注目作

昨年の暮れに、2018年秋クール放送のお気に入り深夜アニメを5作品、ご紹介しました。 本日は、前回取り上げられなかった残りの秋アニメについて、ごく簡単に感想を書いていこうと思います。 さらに、今月から放送の始まった2019年冬アニメについても、個人的…

2018年に読んだ本一覧

昨年(2018年)読んだ本の内訳を以下に記します。 太字はその月のベスト作品です。 1月 ・仲正昌樹『ハンナ・アーレント「革命について」入門講義』(作品社) ・佐藤弘夫『鎌倉仏教』(筑摩書房) ・釈徹宗『宗教聖典を乱読する』(朝日新聞出版) ・鈴木一…

2018年に見た映画一覧

昨年(2018年)に見た映画365本の内訳を以下に記します。 太字はその月のベスト作品です。 1月 『刑事マディガン』『刑事ジョンブック 目撃者』『コールガール』『激怒』『湖中の女』『コマンチェロ』『そして、私たちは愛に帰る』『愛より強く』『少女ヘジ…

2019年を迎えて

皆さん、あけましておめでとうございます。 今年一年も、よろしくお願いいたします。 さて、本日は皆さんに何の話をすればいいのかと少し迷いましたが――こう言うとなんか学校の校長先生みたいですねw――「世代」の話をすることに決めました。 より具体的にい…

2018年12月のまとめ

気候 昨月は風邪をひいてしまい、咳が止まらず難儀した。 もしかしたら本ブログ読者の皆さまにもご心配をおかけしてしまったかもしれない。申し訳ありません。おかげさまで体調はすっかり元通りとなりました。もう大丈夫です。 不思議なもので、毎年、完全に…

2018年秋アニメ感想

月日がたつのは早いもので、もう秋クール放送の深夜アニメも終わりですね。 今回は、そんな秋アニメのなかから個人的に気に入った5作品をランキング形式で取り上げてみます。 1位『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』 タイトルを見て一目で「あ…

最近見た映画の感想(第275回)

・『グッドモーニング、ベトナム』 ロビン・ウィリアムズ演じる主人公の米兵は、米軍のラジオ放送のDJである。 時はベトナム戦争まっただなか。南ベトナムへと派遣された彼は、現地放送にてラジオDJを担当。破天荒な彼のトーク番組はたちまち現場の兵士…

書評『評伝宮崎滔天』

2018年、最後の書評である。 取り上げるのは、評論家・渡辺京二さんの『評伝宮崎滔天』(大和書房)だ。 本ブログではこれまで、渡辺さんの著作をたびたび紹介してきた。三浦小太郎さんによる彼の評伝『渡辺京二』もまた然りである。 一方、本日の評伝の主人…

書評『日本一わかりやすいイスラーム講座』

今年11月28日、コラムニストの勝谷誠彦さん(1960-2018)が亡くなった。57歳であった。 彼の名を聞いて思い出すのは、『TVタックル』の名物企画「永田町時代劇」だ。彼演じる悪代官の役が妙にハマっていたのを、今でもよく覚えている。 本日は追悼の意味を…

書評『和僑』

先日に引き続き、本日もノンフィクション作家・安田峰俊さんの著作をご紹介するとしよう。 『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人』(KADOKAWA)である。 「和僑? なんだか聞き慣れない言葉だなぁ。華僑なら聞いたことあるけど」 と皆さん不…

最近見た映画の感想(第274回)

・『グランド・ブダペスト・ホテル』 おそらくはハンガリーがモデルと思しき、東欧の架空の国家・ズブロフカ。 そこにある高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」に、移民の青年・ゼロがやって来た。彼はこのホテルのコンシェルジュ、グスタフにその才…

書評『中国人のリアル』

僕は本日、無事に34歳の誕生日を迎えることができた。 僕のように生活力の乏しい男がこうして34年間も生き永らえることができたのは、ひとえに僕のことを支えてくださった皆さまのおかげだと思っている。あらためて、感謝申し上げたい。 今後とも、よろしく…

書評『この経済政策が民主主義を救う』

本ブログではこれまで、経済学者・松尾匡(まつお・ただす)さんの著作をたびたび取り上げてきた。 松尾さんは、人為的に引き起こされる緩やかなインフレ「リフレーション」(リフレ)によって賃金の上昇や雇用の拡大などを目指す、いわゆる「リフレ派」のひ…

最近見た映画の感想(第273回)

・『甘い鞭』 前回の映画評では、石井隆監督の『ヌードの夜』を取り上げた。本ブログではこれまで、石井監督のおもに犯罪映画のほうを取り上げてきたが、彼は同時にSM映画も何本か撮っているのである。有名なのは杉本彩を主演に迎えた『花と蛇』だろう。磔…

書評『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』

本ブログではこれまで、哲学者・仲正昌樹さんによる『入門講義』シリーズをたびたび取り上げてきた。 本日ご紹介する『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』(作品社)もそのひとつ。タイトルのとおり、アーレントの主要な著作のひとつ『人間の条件』…

書評『南洲残影』

大河ドラマ『西郷どん』が先日(12月16日)、最終回を迎えた。 最終回のタイトルは、「敬天愛人」。まさしく、西郷隆盛の生涯を描いたこのドラマの終幕にふさわしい。 丸一年、西郷を演じきった主演の鈴木亮平さんに、あらためて拍手を送りたい。 さぁ、本日…

書評『愛国のパラドックス』

保守主義を理解することは、なかなかに難しい。21世紀の世界に生きる我々は、近代以来の啓蒙思想に骨の髄までどっぷりと浸かっているからだ。 そんな我々が「ふむふむ、理性の限界を知ることこそが、これすなわち保守主義なのか」と理解したつもりになったと…