Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『はじめたばかりの浄土真宗』

僧侶の釈徹宗さんと哲学者の内田樹さんは、どちらも名文家として知られる。 釈さんは、以前このブログで取り上げた『宮崎哲弥 仏教教理問答』でも対談者のひとりとして登場した。とても話術のたくみな人で、彼の文章を読むと、吸い寄せられるように一気に読…

書評『現代ドイツ思想講義』

日本の保守派の間で、どういうわけだか評判が悪いのが、フランクフルト学派である。 曰く、「日本のサヨクを裏で牛耳っているのが、隠れマルクス主義たるフランクフルト学派であって…云々」といった具合。 ひどい場合には「ジェンダーフリー教育はフランクフ…

書評『日本はどう報じられているか』

日本人は、海外からの目を非常に気にする民族である。 昔から『○○人から見た日本』といったタイトルの本には事欠かないし、現在でも「見てください! 海外から来た観光客たちはこんなにも日本を絶賛しています!!」といった類の日本礼賛番組は、とても多い…

書評『其の一日』

本著は、文芸評論家・福田和也さんが戦前日本の偉人たちの「一日」を描いた、やや異色の作品である。 「一日」と言っても、何気ない日常を切り取って描く、というのではない。かといって、日本の転機となる重大事件の起こった一日を描く、というのでもない。…

書評『国家の罠』

作家・佐藤優さんのことを、本ブログではこれまで、なかば定型句的に「元外交官にして作家という異色の経歴をもつ~」と紹介してきた。 そもそも、どうして彼は外交官を辞める(辞めさせられる)こととなったのか。 今の若い方はもう知らないかもしれないが…

書評『宮崎哲弥 仏教教理問答』

お茶の間でもおなじみ、評論家の宮崎哲弥さんは、仏教に関心があることで知られる。 いや、「関心がある」どころの次元ではもはやない。自ら「ラディカル・ブディスト」を名乗り、インドの原始仏教の経典も読む宮崎さんは、したがって仏教の専門家とも極めて…

書評『今こそルソーを読み直す』

哲学者・仲正昌樹さんの『今こそ○○を読み直す』あるいは『いまこそ○○に学べ』は半ばシリーズ化されている観があり、これまでに『今こそアーレントを読み直す』、『いまこそハイエクに学べ』、『いまこそロールズに学べ』など複数の著作が刊行されている。 今…

最近見た映画の感想(第168回)

・『パピヨン』 植民地帝国はたいていの場合、流刑植民地を有していた。たとえばそれは、大英帝国にとってのオーストラリアであり、ロシア帝国にとってのシベリアであった。 ではフランスの場合、流刑植民地はどこであったか。 南米大陸の、仏領ギアナがそれ…

書評『ウルトラ・ダラー』

優れたフィクションは、時として、国際情勢を知るための良い教材ともなりうる。 僕の記憶が確かならば、「俺は『ゴルゴ13』から国際政治を学んだ」と豪語した総理大臣がいたはずである。 みなさんにだって、スパイ映画を見て、普段ニュースでは取り上げら…

書評『天皇・反戦・日本』

評論家・浅羽通明さんには、どこか“不気味さ”が付きまとう。 彼の師匠である評論家の呉智英さんは、言葉こそ過激だけれどー「差別もある明るい社会」とかねー呉さん自身に対してはむしろ、博識で快活な好人物、といった印象を受ける。 一方、弟子である浅羽…

書評『つぎはぎ仏教入門』

評論家・呉智英(くれ・ともふさ)さんについては、以前このブログで著書を取り上げたことがあった。 自ら「封建主義者」を名乗り、「差別もある明るい社会」をスローガンに掲げるなど、アイロニカルな論考が魅力の評論家だ。 今日ご紹介するのは、そんな呉…

最近見た映画の感想(第167回)

・『カバーガール』 1944年公開のミュージカル映画。主演は、フレッド・アステアとならぶアメリカ・ミュージカル界のスター、ジーン・ケリーだ。 ナイトクラブで働くヒロインが、カバーガール(雑誌の表紙を飾る女性のこと)のコンテストに応募し、みごと優…

最近見た映画の感想(第166回)

・『ガール!ガール!ガール!』 エルビス・プレスリー主演のアイドル映画。 南洋の楽園・ハワイを舞台に我らがエルビスが歌って歌って歌いまくる。 やっぱり、60年代のスターには海がとても良く似合う。わが国では、石原裕次郎がそうだったように。 ただし…

書評『現人神の創作者たち』

戦後日本において異色の保守論客として活躍したのが、評論家の山本七平さん(1921‐1991)である。 どこがどう異色であったか。 日本社会の抱える問題点をがんがん剔出していくその記述のスタイルもさることながら、デビューの経緯がいささか風変りなものであ…

書評『江藤淳という人』

優れた知識人には、たいてい、優れた師匠がいるものである。 浅羽通明さんの場合、それは呉智英さんであった。 では福田和也さんの場合、それは誰であったか。 江藤淳さんであった。 福田さんは、処女作『奇妙な廃墟』を世に出して後、江藤さんにその才を認…

書評『最後の対話』

本著『最後の対話ーナショナリズムと戦後民主主義』(PHP研究所)は、文芸評論家の福田和也さんと、批評家の大塚英志さんによる対談本である。 サブタイトル「ナショナリズムと戦後民主主義」とは、一体どういう意味だろう。 これは、対談者ふたりの立ち…

書評『神学の思考』

元外交官にして作家という異色の経歴をもつ、佐藤優さん。 だがそもそもは、チェコ語研修を希望して外務省の門をたたいた、同志社の神学生だったのである。 本著『神学の思考』(平凡社)は、そんな佐藤さんによるキリスト教神学の入門書だ。 まずプロレゴメ…

書評『下中彌三郎』

今日ご紹介するのは、政治学者・中島岳志さんによる評伝『下中彌三郎 アジア主義から世界連邦運動へ』(平凡社)である。 「下中彌三郎? 聞いたことのない名前だなぁ」と思われた方もいるかもしれない。 下中は、現代まで続く老舗出版社・平凡社の創業者。…

書評『有頂天家族 二代目の帰朝』

※以下の文章は、『有頂天家族 二代目の帰朝』およびそれを原作とするアニメ『有頂天家族2』のネタバレを含みます。これらの作品をまだ未見で、ネタバレを望まない方は、以下の文章を読まないことをお勧めします。 このブログではすでに何回も書いてきたこと…

2017年春アニメ感想(おまけ)&夏アニメ注目作

先日は、2017年春アニメのなかから個人的に気に入った5作品を取り上げた。 今日は、先日取り上げられなかった作品について簡単に感想を書くと同時に、今月から放送の始まる夏アニメのなかから、個人的に注目している作品をいくつか取り上げてみたい。 ・『冴…

2017年6月のまとめ

気候 梅雨の季節に突入した。 梅雨を嫌うという人は僕の周りに多い。曰く、ジメジメして嫌だ。雨ばっかりで嫌だ。 ……僕個人はというと、梅雨のことは決して嫌いではない。 僕が本当に大嫌いなのは、暑い、暑い夏だ。一年のなかで一番嫌いな季節が、夏。 それ…

2017年春アニメ感想

はやいもので、もう春クール放送の深夜アニメも終わりですね。 今回は、そんな春アニメのなかから個人的に気に入った5作品を取り上げます。 1位『有頂天家族2』 今期のアニメはずばり「有頂天家族とそれ以外」と総括することができる。 2013年放送の第1期…

最近見た映画の感想(第165回)

・『 ドーベルマン・ギャング』 なななんと、ワンちゃんたちが銀行強盗に挑むという衝撃(笑撃?)の犯罪映画。 強盗団から特殊な訓練を受けたドーベルマンのワンちゃんたちが、強盗団から無線で指示を受けながら銀行強盗する場面は抱腹絶倒モノだ。 それぞ…

書評『円のゆくえを問いなおす』

先日は、リフレ派の論客のひとり、経済学者の田中秀臣さんの著作を取り上げた。 今日はこれまたリフレ派の論客である、経済評論家の片岡剛士さんの著作を取り上げることとしよう。 本著『円のゆくえを問いなおす 実証的・歴史的にみた日本経済』(筑摩書房)…

書評『デフレ不況 日本銀行の大罪』

日本においてリフレ派を代表する論客のひとりとして、経済学者の田中秀臣さんの名を挙げることができる。 今回取り上げるのは、そんな田中さんの著作『デフレ不況 日本銀行の大罪』(朝日新聞出版)だ。 「日本銀行の大罪」というサブタイトルからも分かるよ…

最近見た映画の感想(第164回)

・『スーパーマン』 「鳥か? 飛行機か? …いや、あれは(ry」のキャッチフレーズでおなじみ、空飛ぶヒーロー、スーパーマン。 本作は、その記念すべき映画化第一作目である。主人公・スーパーマンを演じるのは、クリストファー・リーヴ このクリストファ…

最近見た映画の感想(第163回)

・『踊るアメリカ艦隊』 水兵さん3人組が休暇を与えられ、NYに上陸。そこで各々ロマンスを経験するという、『踊る大紐育』的なミュージカル映画。 本作の見どころは、やはりなんといってもラストだろう。 高さ85フィート(約26メートル)という、なんとも…

書評『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』

先日は、評論家・呉智英さんの著作を取り上げた。 今日は、その呉さんの弟子・評論家の浅羽通明さんの著作を取り上げることとしよう。 『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』(筑摩書房)である。 タイトルからして実に挑発的だが、内容はさらに凄…

書評『真実の「名古屋論」』

タレントのタモリさんが全国各地をブラブラと歩いてまわる、NHKの教養バラエティー「ブラタモリ」。 先日(6月10日、17日)のテーマは、名古屋であった。これがネット上ではずいぶんと話題になった。 なぜか。 じつはタモさん、80年代に、現在の地方イジ…

書評『教養としてのゲーテ入門』

僕は以前、ドイツの文豪・ゲーテの『ファウスト』を読んだことがある。 もちろん、日本語である(w)。いやぁ~、ここで 「『ファウスト』? ああ、もちろん読んだよ、原著でね(眼鏡クイッ」 とかサラリと言えればカッコイイんだろうけど(w)、あいにくドイ…

書評『大学講義 野望としての教養』

主に90年代にかけて活躍した評論家として、浅羽通明さんの名を挙げることができる。 一時期は漫画家・小林よしのりさんのブレーン的存在としても活躍した、浅羽さん。 今日ご紹介する『大学講義 野望としての教養』(時事通信社)は、そんな浅羽さんによる著…

書評『特高 二・二六事件秘史』

戦前日本の歴史に決定的な影響を与えたのは、二・二六事件であった。 この二・二六事件を描いた映画は、数多くある。 たとえば高倉健さんが青年将校の役を演じた東映映画『動乱』は、その代表といえるものだろう。 ところが、同じ高倉健さんが、青年将校では…

書評『デフレと円高の何が「悪」か』

本ブログでもたびたび著作を取り上げている、経済評論家の上念司さん。 今日ご紹介するのは、そんな上念さんにとって記念すべきデビュー作となった著書『デフレと円高の何が「悪」か』(光文社)だ。 この本のなかで、上念さんは現在の日本を苦しめている「…

書評『日本は破産しない!』

ひところよく叫ばれたのが、「このままでは日本は第二のギリシャになるぞ!」というフレーズ。 え、日本がかつての古代ギリシャのように、思想・哲学の世界的中心地になるってこと? やったぁ! ー残念ながら、さにあらず。 ギリシャのように日本も財政破綻…

最近見た映画の感想(第162回)

・『キング・ソロモン』 19世紀末のアフリカ。腕利きガイドの主人公と、1年前に冒険の旅に出たまま行方不明となった夫を探している人妻が、前人未踏のアフリカの奥地へと探検していくというストーリー。 実際にアフリカにてロケを敢行した、カラー映画である…

書評『岩波茂雄 リベラル・ナショナリストの肖像』

僕の父は、書店の店長をしていた。 僕が小学生のとき、(詳しい理由は忘れたけど)父は東京の岩波書店の本社を訪れたことがあった。 東京から帰ってくるなり、父は僕にこう言った。 「なぁ圭介、岩波書店というのはな、文部省よりも文部省らしいところだった…

書評『「日本の敵」を叩きのめす!』

経済評論家の上念司さんと憲政史家の倉山満さんは、中央大の弁論部における先輩と後輩の関係にあたる。 1969年生まれの上念さんが4年生のときに、1973年生まれの倉山さんが入部したのだという。 以来、ふたりは二十年以上もの付き合いなのだそうで、現在でも…

書評『現代の地政学』

皆さんは、「地政学」(英:geopolitics、独:Geopolitik)なる学問をご存じだろうか。 地政学とは、地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響をマクロの視点から研究する学問である。 「へぇー、なんだか面白そうな学問だな」と思ったそこのア…

書評『視覚文化「超」講義』

僕が批評家・石岡良治さんを知ったのは、宇野常寛さん主宰『PLANETS』でのこと。 彼はそこで「最強の自宅警備員」と称し、極めて情報量の多いアニメ評論を行っていた。 今日ご紹介する『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)は、そんな石岡さんにとって…

書評『高学歴社員が組織を滅ぼす』

世の中を変えたい ーこう思っている若い方は、きっと多いはずだ(いやなにも若くなくてもかまわない)。しかし、そういった人たちは同時に、こうも思っていることだろう。 東大、京大を卒業した超エリートの人たちがこれまで社会を引っ張ってきて、それでも…

最近見た映画の感想(第161回)

・『オーケストラの少女』 歌が得意な少女がオーケストラづくりに奮闘する、という内容の音楽映画。 少女は、名指揮者レオポルド・ストコフスキーに、自らの楽団の指揮を依頼する。最初は多忙を理由に申し出を断っていた彼だったが、実際に楽団の演奏を聞い…

書評『棋士の一分』

今日、将棋界において異彩を放っているのが、橋本崇載八段だ。 派手なスーツに金髪というまるで歌舞伎町のホストのような外見と、NHK出演時に他のプロ棋士のモノマネをするなど、絶えずネタを投下しつづけるサービス精神から、ネット上では「ハッシー」と…

書評『プラハの憂鬱』

先日は、作家・佐藤優さんの『同志社大学神学部』を取り上げた。 佐藤さんが京都・同志社大での自らの学生生活を回顧した本だ。 佐藤さんは同志社大を卒業後、チェコ語研修を希望して外務省に入省する。が、実際に研修を命じられたのはチェコ語ではなく、ロ…

最近見た映画の感想(第160回)

・『レヴェナント:蘇えりし者』 レオナルド・ディカプリオというのはなかなかに面白い役者さんだ。 『タイタニック』のころはいかにも「王子様~」といった印象で、俳優というよりかはむしろアイドルといった趣きだった。しかしその後は、“いい意味で”汚ら…

書評『同志社大学神学部』

今日はまず、自分の話から始めることをお許しいただきたい。 僕は関東のとある国立大学の工学部に進学した。しかし高校時代には、むしろ文科系の科目のほうが得意だったし、好きだったのだ。一番好きな科目は世界史で、その次が倫理、3番目が英語だった。 そ…

書評『楽器と武器だけが人を殺すことができる』

評論家・宇野常寛さんの仕事には、前々から注目している。 …と正直に言うと、周囲からはよく驚かれるのだ。 「え~! 古澤さん、なんで宇野なんか褒めるんですか? あいつサヨクじゃないですかぁ~」みたいな感じで。 確かに、今上天皇を平気で平成天皇と呼…

書評『奇妙な廃墟』

現在の論壇において、いささか特異なポジションを占めているのが、文芸評論家の福田和也さんだ。 昭和天皇や石原莞爾の評伝などを書いていることから、いちおう保守の論客、ということになってはいる。が、いわゆる「従軍慰安婦」問題や「南京大虐殺」問題、…

書評『インテレクチュアルズ』

高邁な理想を掲げる知識人が、だからといって人間的に優れているとは限らない。 今日ご紹介する本は、ポール・ジョンソン著『インテレクチュアルズ』(講談社)。 近現代史において「偉人」としてあがめられている知識人たちの実像を暴露する、なかなかに衝…

書評『テロリズムの罠』

僕の友人が、以前こんなことを言っていた。 「佐藤優の『テロリズムの罠』って本、右巻と左巻に分かれてるじゃないですかぁ。「右巻」と「左巻」なんて変な名前だなぁ、それをいうなら「上巻」と「下巻」だろ~と思って読んでみたら、右巻のほうは右翼が喜び…

書評『日本でテロが起きる日』

いまや、我々先進国に生きる人間にとって一番の脅威は、戦争よりもむしろテロだ。 つい先日(日本時間5月23日)もイギリスでテロが発生、若者が多数亡くなるという痛ましい事件が起きたばかりである。 本日取り上げるのは、タイトルもずばり『日本でテロが起…