Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『スルタンガリエフの夢』

本ブログでは先月、『イブラヒム、日本への旅』という書籍を取り上げた。ロシア出身のタタール人活動家、アブデュルレシト・イブラヒムの評伝である。 彼は19世紀のロシア帝国に生まれたが、イスラーム教を圧迫するキリスト教国・ロシアに反発して故郷を飛び…

書評『楊貴妃になりたかった男たち』

いまや日本では、女装は完全に市民権を獲得した観がある。 アニメでは女装した男の子、すなわち「男の娘」が普通にヒロインのひとりとして登場するようになったし、コスプレイベントでも男性コスプレイヤーが女性キャラのコスプレをすることが珍しくなくなっ…

最近見た映画の感想(第230回)

・『カルテル・ランド』 メキシコ社会を蝕む犯罪組織「カルテル」をテーマに描いた、ドキュメンタリー映画である。 カルテルは、自らに逆らう地域住民を次々と殺害していく。その手口は残忍そのもの。斬首して生首を晒すというのだから、もはやISあたりと…

書評『人はなぜ、宗教にハマるのか?』

本ブログではこれまで、認知科学者の苫米地英人さんの著作をいくつか取り上げてきた。一歩間違えればトンデモすれすれの(w)ユニークな仏教観が彼の魅力だ。 本日ご紹介する『人はなぜ、宗教にハマるのか?』(フォレスト出版)もまた、良くも悪くも、いか…

書評『僧侶が語る死の正体』

「ねぇ、死んだらどうなるの?」 子供の頃、僕はよく母にそう質問したものである。そういうとき、母の答えはきまって 「さぁ、死んでみなきゃわかりません♪」 というものだった。なんだかおちょくられたようで、子供心に少しムッとしたのをよく覚えている。 …

最近見た映画の感想(第229回)

・『リコシェ 炎の銃弾』 黒人の名優デンゼル・ワシントンは、社会派作品に好んで出演することで知られている。本作もまた、一見するとただのアクション映画だが、その背景には「黒人社会の紐帯」という社会的テーマがあるのである。 ワシントン演じる主人公…

書評『現代文訳 正法眼蔵』

本ブログではこれまで、曹洞宗の僧侶・南直哉(みなみ・じきさい)さんの著作をさかんに取り上げてきた。 だが、その曹洞宗において聖典としてあがめられている道元禅師の主著『正法眼蔵』(しょうぼうげんぞう)については、まだ読んだことがなかった。 僕…

書評『論文作法』

実のところ、僕は自分の書いた卒業論文の内容を覚えていない。 「え? ご冗談でしょう?(w」 と人からはよく笑われるのだが、本当の話だ。 これまでにも書いてきたとおり、僕は元来文系科目のほうが得意だったのだが、高校2年のときに就職に有利だというの…

書評『朝鮮紀行』

『朝鮮紀行』なる書物の存在は、以前から知っていた。 19世紀末、イギリスの女性冒険家イザベラ・バードによる、李朝末期の朝鮮を描いた旅行記である。同著のなかで、朝鮮はひたすら不潔で、未開の国として描かれているらしい。 この本のことは、いわゆるネ…

最近見た映画の感想(第228回)

・『世にも怪奇な物語』 エドガー・アラン・ポーの小説を映画化した作品。オムニバス形式になっており、第一章、第二章、そして第三章をそれぞれ、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、そしてフェデリコ・フェリーニという、仏伊映画界の巨匠たちがメガホンをと…

書評『アメリカン・ファシズム』

本日取り上げる本は、三宅昭良さんの『アメリカン・ファシズム ロングとローズヴェルト』(講談社)である。 「……えっ、『アメリカン・ファシズム』って、どういうこと!? あの自由の国・アメリカにファシズムなんてあったの!? まさかぁ!」 と皆さん驚か…

書評『宗教は人を救えるのか』

先日は、五木寛之さんの長編歴史小説『親鸞』を取り上げた。 本日ご紹介するのは、その親鸞が開いた浄土真宗の僧侶・釈徹宗さんによる著作、『宗教は人を救えるのか』(KADOKAWA)だ。 本著はまず第一章にて、「世界の宗教が老いをどのように捉えて…

書評『親鸞』

本ブログでは以前、宗教学者・釈徹宗さんによる親鸞入門書『親鸞の教えと歎異抄』を取り上げたことがある。 歴史上の人物について知るには、このように入門書を読むのが最も手っ取り早い。だが、もうひとつ、方法がある。 その人物を主人公にした文学作品を…

書評『ムッソリーニ ファシズム序説』

僕はこれまで、イタリアのファシズムに関する書籍を多く取り上げてきた。 そのせいか、人からはよく「あなたはファシズムが好きなんですか?」と質問される。 答え。僕は、ファシズムに興味がある。だが「興味がある」と「好き」とは、必ずしもイコールで結…

書評『国体論及び純正社会主義(抄)』

本ブログではこれまで、頭山満、北一輝、大川周明など、戦前の右翼の思想家・活動家に関する著作を多く取り上げてきた。 なかでも北については、評論家・松本健一さんの大著『評伝 北一輝』を取り上げるなどしてきたが、彼自身が書いた本については、まだ紹…

書評『石原慎太郎を読んでみた』

本ブログでは、昨年の暮れ、『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』という対談本を取り上げた。 三人の社会学者・評論家の鼎談であるこの本のなかで、毎回鋭いコメントを連発、もはや同著のMVPとすら言っていいほどの活躍を見せてくれたのが、評論家…

書評『イスラーム神学』

先日は、気鋭のイスラーム研究者・松山洋平さんの『イスラーム思想を読みとく』を取り上げた。 本日ご紹介する本も、これまた松山さんによる著作『イスラーム神学』(作品社)だ。 ただしこちらは、入門書としての性格が強かった『イスラーム思想~』と比べ…

最近見た映画の感想(第227回)

・『ゆりかごを揺らす手』 新しい月に入って早々、いきなり怖い映画を見てしまったw(;^ω^) アメリカ・シアトル。主人公の女性が、医師をセクハラで訴えた。セクハラ騒動がメディアで大々的に報じられるなか、医師は自殺してしまう。 まもなく、主人公女性の…

書評『イスラーム思想を読みとく』

本ブログではこれまで、イスラーム法学者・中田考さんの著作を多く取り上げてきた。 本日取り上げる本は、中田さん……ではなく(w)、イスラーム思想史を専門としている松山洋平さんの『イスラーム思想を読みとく』(筑摩書房)だ。 松山さんは、今注目の若…

書評『「女装と男装」の文化史』

本ブログではこれまで、ジェンダー論に関連する書籍をいくつか取り上げてきた。 本日ご紹介する『「女装と男装」の文化史』(講談社)もまた、ジェンダーに関する本のひとつだ。著者は、比較文化学者の佐伯順子さん。 「女装と男装」というタイトルのとおり…

2018年4月のまとめ

気候 今年は春の訪れが早かったような気がする。 4月に入った時点では桜はすでに散り始めていたし、新緑も芽吹いていた。 中旬になると、日中、25度を超える夏日もちらほら出てきた。 皆さんも薄々お気づきかと思うが、今の日本はもはや四季というよりかはむ…

2018年春アニメー4月までの感想

月日が経つのはまことに早いもの。 ついこの間「うぁ~、もう桜が咲いちゃったよ! 今年は早いなぁ」と驚いていたばかりのような気がしますが(;^ω^)、もう4月もそろそろ終わりです。 というわけで、また例によって、この4月から始まった春クール深夜アニメ…

最近見た映画の感想(第226回)

・『遊星からの物体X』 南極の観測基地が、謎の宇宙生命体「生きもの」(The Thing)に襲われる様子を描いた、アメリカのパニック映画である。1982年公開。 この「生きもの」、特定の形を持っているわけではなく、人間、犬などの地球の生命体のなかに入り込…

書評『日本中世の国家と仏教』

本ブログではこれまで、歴史学者・佐藤弘夫さんの著作をいくつか取り上げてきた。 本日ご紹介するのも、佐藤さんの著作『日本中世の国家と仏教』(吉川弘文館)である。本著はまた、佐藤さんにとって記念すべきデビュー作となった本でもある。 これまでに紹…

書評『希代のジャーナリスト・徳富蘇峰 1863‐1957』

戦前の右翼思想やアジア主義に関する書籍を読んでいると、たいてい名前が挙がる人物のひとりに、ジャーナリスト・徳富蘇峰(1863‐1957)がいる。 ところが僕は浅学なものだから、この蘇峰なる人物のことが、どうにもよく分からない。ジャーナリストだという…

書評『大西郷遺訓』

戦前、戦後の右翼思想家・活動家たちがこぞって持ち上げるのが、今年の大河ドラマの主人公・西郷隆盛である。 頭山満は「右の籠に西郷さんを入れ、左の籠に一億人を入れてそれを天秤棒で担ぎ上げたら、どちらが重からうかネ」とさえ言っていた。 西郷は、ど…

最近見た映画の感想(第225回)

・『アフガン零年』 タリバン政権下のアフガニスタン。 主人公の少女の家では、男が全員戦乱で死んでしまった。もはや他に稼ぎ手がいないというので、やむなく少女が髪を切り、男装して働くこととなった。 ところが、タリバンの神学校などへ引きずり回される…

書評『岡倉天心「茶の本」をよむ』

最近、アジア主義に関する書籍を、やや集中的に読んでいる。 それらの本のなかで決まって出てくる名前のひとつに、美術評論家・岡倉天心(1863‐1913)がある。 本ブログでは以前、アジア主義の思想家・大川周明の評伝を取り上げたが、その大川の師匠筋にあた…

書評『大本襲撃』

本ブログではこれまで、日本のアウトサイダーたちは必ずしも天皇を敵視してはいなかった、という話を繰り返ししてきた。 むしろ逆だ。アウトサイダーこそ、「天皇は俺たちの味方だー!」と自らを鼓舞しつづけてきたのである。 天皇は社会的弱者に寛容であり…

最近見た映画の感想(第224回)

・『恋人たち』 「恋人たち」だなんて、実にロマンティックなタイトルだから、てっきりラブコメなのかと思いきや…… いやぁ、とんでもないタイトル詐欺(w)。実に暗い映画だった(w だが、駄作というのではない。むしろ逆だ。現代の鬱屈とした日本社会を見…