Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

あえて成らないという手

本日行われた電王戦第2局は、劇的な終幕となりました。

対局者の永瀬拓矢六段が、成れる角をあえて成らずに王手をかけるという「奇手」を放ったのです。

対戦ソフト「Selene」はプログラムの不備で大駒の不成(ならず)という事態を把握できず、その王手を放置してしまい、反則負けとなったのです。5対5の団体戦形式で行われる電王戦、これで人間側の2連勝となりました。

 

周知の通り、将棋の駒は敵陣に入ると「成る」ことができます。

この「成る」、初心者にはよく「パワーアップ」と説明されるのですが、必ずしも単純なパワーアップというわけではありません。

たとえば桂馬の場合、成ってしまうと「駒を跳び越えられる」という桂馬唯一の特性が失われるため、あえて不成を選択する場合もあります。

銀についても同様に、成ってしまうとナナメ後ろに移動できなくなるため、あえて不成を選択する場面が少なくありません。「銀は不成に好手あり」とすら言われるほどです。

 

一方で、飛車や角といった大駒の場合は、よほど特殊な場合を除いて、成ったほうがいい。成れば単純に移動できるマス目が増えるからです。

それでは不成が推奨される「よほど特殊な場合」とは何か。

将棋には「打ち歩詰め禁止」というルールがあります。打ち歩詰めとは、持ち駒の歩を打って相手の玉将を詰ますことで、これは「二歩」などと同様に将棋では禁止されています。

この打ち歩詰めを回避するために、あえて大駒が成らないというケースがあるのです。

高難度の詰将棋でたまに出てくる、この「打ち歩詰め回避のための不成」、なんと実戦例もあります。

1983年7月19日王位戦挑戦者決定リーグにおける谷川対大山戦がそれで、先手(谷川)は打ち歩詰め回避のためあえて▲4三角引不成と指し、見事勝利をおさめたのでした。

 

このような実戦例もある以上、今回の一件では「大駒の不成」という(特殊とはいえ実現しうる)事態を想定していなかったコンピューターソフト側に落ち度があると言えるでしょう。

 

…とはいうものの、将棋の内容でも圧倒し、なおかつプログラムの不備まで指摘するという永瀬六段は「勝負の鬼」というか、コワイ人だなぁと思いましたw