Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

「将棋って残酷なゲームですね…」

昨日もお伝えしたとおり、今年の将棋・名人戦は“絶対王者”羽生さんの防衛で幕を下ろした。

まぁ順当な結果だと言えるだろうが、挑戦者の行方(なめかた)八段からしてみればたまったものじゃないだろう。

行方八段はこれまで、「鬼の棲みか」とまで言われるA級順位戦をなんとかして勝ち抜け、昨年度末にはプレーオフまでやって、ようやく夢の舞台・名人戦の切符をつかんだのである。

それでもその「夢の舞台」で王者に容赦なくコテンパンにされてしまう。勝負の世界の非情さがここにある。

 

…いや、コテンパンという言い方は適切ではない。今回の名人戦は結果こそ4-1で羽生さんの大勝だったが、勝負内容を見てみると中終盤までは行方八段の方が優位に駒を進めていることが多かった。

とくに第4局は終盤までほとんど行方八段勝勢と思われる将棋だった。決して羽生さんに一方的に打ち負かされたわけではない。

が、それでも結局は羽生さんに形勢を覆されてしまったわけだから、行方八段にとってはむしろ単純に負けるのよりも堪えたかもしれない。

 

今回の名人戦のときではないが、行方八段がかつてNHK杯でうっかりミスにより逆転負けした際、感想戦にて

「将棋って、残酷なゲームですね…」

と絞り出すような声で言ったのをよく覚えている。

 

そのとおり。将棋というのは、残酷なゲームだ。

たった一つのミスで、それまでの苦労が全て水の泡になる。

名人戦は二日制の棋戦だから、一局の将棋をまるまる二日かけて行わなければならない。

一般人に想像できるだろうか。二日間、全神経を傾けて行ってきた仕事が、たった一瞬のミスで台無しになってしまう様を。

 

将棋は日本の伝統文化だが、ある意味ではこれほど非日本的な文化も珍しい。

そこでは白黒(勝ち負け)はっきり決着がつく。

引き分けが多いチェスと異なり、持ち駒ルールのある将棋では大抵の場合どちらかの玉が詰むまで対局が継続される。

日本社会にありがちな玉虫色の決着が、将棋ではないのだ。

勝ちは勝ち。負けは負け。

我々一般の日本人は、あいまいな日本社会に慣れきっているから、こうしたシビアな勝負の世界に生きる人々の苦労を想像することすらできない。

我々はただ、棋士の人々にせめてもの(だが薄っぺらい)尊敬の言葉を投げかけることくらいしかできないのだ。