Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第21回)

・『上意討ち 拝領妻始末』

以前本ブログでも取り上げた『切腹』の小林正樹監督。つぎに彼が描いたのは、非人間的なイエ制度に抑圧される個人(たち)だった。

舞台は江戸時代の会津藩。『切腹』が、人を人とも思わぬブラック企業ならぬ“ブラック藩”に翻弄される社畜もとい“藩畜”たちの話だったのに対し、本作ではイエ制度のしがらみに苦しむ諸個人、とりわけ女性の姿が丁寧に描かれる。

本作で面白いのは、イエ制度のしきたりに翻弄される嫁・いちに最も同情的なのが、婿養子である男性主人公・伊三郎(三船敏郎!)だという点。同性のはずの姑は一貫して「お家断絶」の危機を訴え、いちに冷たい態度をとりつづける。まさに「女の敵は女」というわけだ。

ラストでは三船敏郎仲代達矢のチャンバラも見られる。『切腹』もそうだったが、本作もまた社会派作品でありながら同時に高い娯楽性を実現している。

 

 

 

 

・『日本列島』

日本はアメリカに陰で操られているんだよ!

な、なんだってー!(AA略

戦後の国鉄三大ミステリー事件も、実はアメリカの陰謀だったんだよ!

な、なんだってー!(AA略

 

…というお話(以上、要約終了w)。

サスペンス映画としては面白いのだが、いささか陰謀論の臭いが強すぎてその点はいただけない。そういう意味では『ダ・ヴィンチ・コード』とも似ている。

 

 

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・『海と毒薬』

第二次大戦中、九州の大学病院にて行われた、米軍捕虜への人体実験を描いた作品。

監督は『日本列島』と同じく熊井啓。おそらく彼の作品の中でも最高傑作だろう。

本作では、敗戦目前という極限状態にありながらなお大学病院内での出世争いにこだわる医学部教授たちと、彼らや軍部に翻弄される若い医学生たちが描かれる。

大学病院というきわめてローカルな共同体のことしか考えない教授たちが象徴的だ。日本人はつねに自らの属する共同体(の中でのポジション取り)ばかりを考え、それを超えるキリスト教的な倫理という発想がない(本作において唯一キリスト教的倫理を体現する人物が医学部教授のドイツ人妻)。本作は、21世紀の今日までつづく日本社会の病理を鋭くえぐり出す。

ちなみに、同じく熊井監督がメガホンをとった作品として『忍ぶ川』がある。本作とは対照的に、人間の温かさを描いた恋愛映画だ。本作を見た後で『忍ぶ川』を、あるいは『忍ぶ川』を見た後で本作を見ると、その印象のあまりの違いに驚かされることだろう。

 

 

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・『東京裁判

極東国際軍事裁判―通称「東京裁判」に関する貴重な映像資料を多数まとめたドキュメンタリー映画。上映時間は優に4時間半(!)を超える超大作である。監督は『切腹』『上意討ち』でおなじみの小林正樹

ドキュメンタリー映画であるので―しかも素材が素材なので―『切腹』『上意討ち』で見られたような高い娯楽性は残念ながら本作にはない。しかし東條英機はじめ軍部を一方的に断罪するのではなく、かといって彼らに同情的というわけでもない。私には本作の姿勢はかなりニュートラルなものに感じられた(ただし南京事件に関する映像資料は信憑性が低いとされる)。

 これから、8月。いろいろな意味で「暑い季節」がやってきます。皆さんもお暇があれば是非ごらんください。

 

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