Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第25回)

・『ふたり』

仲の良かった姉を事故で亡くした妹(石田ひかり)。そんな妹の前に、姉はなんと幽霊(!)として再び姿を現す。妹と姉の奇妙な共同生活が始まった。

監督は『異人たちとの夏』を撮った大林宣彦

当時新人だった主演の石田ひかりが声がボソボソしていてセリフがやや聞きとりづらい点をのぞけば、ロケ地・瀬戸内の風景も綺麗だし、『異人たちとの夏』ラストみたいなホラー的演出もないし、なかなかに良い映画であった。 

 

ふたり デラックス版 [DVD]

ふたり デラックス版 [DVD]

 

 

・『紀ノ川』

和歌山を舞台に、明治・大正・昭和にまたがって繰り広げられる、女3代の物語。

司葉子演じる母はいかにも「明治の女」という感じで、嫁ぎ先の家の名誉ばかりを考える。そんな母に反発して育った岩下志麻演じる娘は、女学校時代すでに(今風にいうところの)フェミニズム活動家になり、東京に出てマルクス主義にかぶれ(←当時の若者にありがちなパターンですね)、恋愛結婚して母のもとを去る。

やがて終戦を迎え、夫に先立たれた母はようやく「家」とは何なのかと考えはじめる。奇しくも娘が孫娘を連れて和歌山に戻ってきた。こうして女3代がそろい、母はイエ制度のしがらみにとらわれない「家族の絆」に思いをめぐらす。

 

…というあらすじから明らかなように、本作は「イエ制度」をテーマとしている。女性でありながら長年にわたりイエ制度の擁護者であり続けた母は、晩年に至ってついにイエ制度にとらわれることのむなしさに気付く。最晩年の母の枕元で『源氏物語(※)を読み聞かせる孫娘の姿が印象的だ。

※『源氏物語』の舞台である平安中期は、母系社会であった。

 

だが、ちょっと待ってほしい(←朝日新聞の社説風)。イエ制度によって抑圧されてきたのは、本当に女性だけか。

そうではない、ということがこの映画を見ていると分かるのだ。

母の息子(娘の兄)は長男だというのにふがいなく、「自分はビジネスに疲れた」、「家でボーっと過ごしたい」と言って母に呆れられる。彼はただのドラ息子か。

違う。彼はイエ制度によって強要された「(理想の)男」を演じるのに疲れてしまったのだ。イエ制度によって、ほかならぬ男性もまた抑圧されてきたことを暗にほのめかす本作は、実に目が行き届いているといえるだろう。

 

あの頃映画 「紀ノ川」 [DVD]

あの頃映画 「紀ノ川」 [DVD]

 

 

・『青春デンデケデケデケ

舞台は1960年代の香川県。ロックに熱中する4人の高校生の青春を描く。

いまや日本を代表する名優である浅野忠信が、本作ではまだ10代の青年として(※映画公開当時18歳)瑞々しい姿を見せてくれています。

 

 

・『真昼の暗黒』

山口県の片田舎で老夫婦が殺害され金品を奪われるという強盗殺人事件が発生した。犯人はまもなく逮捕されたが、「本件のような大掛かりな犯行は単独犯では無理」という警察の勝手な思い込みにより、犯人の知人4人が「共犯」として逮捕されてしまう。

当然無実をうったえる4人であったが、警察の拷問めいた尋問により「自白」させられ、一審で有罪判決を受ける。

4人の無実を確信する弁護士は、二審にて、共犯説をとる警察/検察側の筋書きには無理があることを立証するが、下された判決は…

 

今井正監督の手による本作、実はフィクションではなく、「八海事件」という実在の事件をモデルとしている(ただし人物名などは変更されている)。

実在事件の映画化自体はかならずしも珍しいことではないが、この映画のスゴイところは当時まだ最高裁で争っている最中だった事件を映画化し、被告人4人の無罪をひろく日本国民にうったえたという点。

本作の公開当時、4人はまだ獄中の人だったのだ。

当然、最高裁は本作の公開につよく反対したが、今井監督は独立プロダクションによる配給というかたちで本作の公開を実現した。そんなわけで本作は、内容、公開にいたるまでの経緯、ともに大変にロックな映画なのである!

なお、本作の公開から12年後の1968年、最高裁にて4人の無罪が確定した。

 

真昼の暗黒 [DVD]

真昼の暗黒 [DVD]