Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第31回)

・『午後の遺言状』

 「老い」と「死」をテーマにした新藤兼人監督作品。

避暑地の別荘を訪れた老女優。管理人の女性が出迎えるが、彼女にはある秘密があった。さらに老女優の友人で重度の認知症を患う女性と、彼女を献身的に介護する夫が別荘を訪れる。やがて、ふりかかる様々なできごとを契機に、老女優は人生について考える。

本作にて管理人の女性を演じている(そして新藤監督の妻でもある)乙羽信子は、本作公開の後、ガンで死去した。本作撮影時にはすでに末期ガンに侵されていたという。乙羽はこれまで『縮図』『裸の島』など、新藤監督作品で主役を演じてきた。少々大げさかもしれないが、新藤監督にとっての乙羽は、小津監督にとっての原節子、あるいは成瀬監督にとっての高峰秀子のような存在だった。

本作は実は、新藤監督自身の物語でもあるのだ。

…余談だが、本作で描かれる農村の足入れ式(婚約式)は、民俗学的にたいへん興味深いものだ。これだけでも見る価値がある。

 

午後の遺言状 [DVD]

午後の遺言状 [DVD]

 

 

・『黒い家』

家族ゲーム』で斬新な映像感覚を見せてくれた森田芳光監督。この『黒い家』ではホラーに挑戦している。

金沢で保険会社につとめる主人公。ごく平凡な男である彼の前に、サイコパスの女の魔の手が忍び寄る…

主人公は内野聖陽。ドラマ『JIN―仁―』で豪傑・坂本龍馬を好演したのと同じ俳優とは思えない、平凡で内気なサラリーマンを演じている。が、本作の真の「主役」は、やはり何と言ってもサイコパスの女を怪演した大竹しのぶだろう。本作は完全に彼女の映画。ただただ、恐ろしかった…。

 

黒い家 [DVD]

黒い家 [DVD]

 

 

・『マリアの胃袋

ホラーでありながら心温まる佳作『学校の怪談』シリーズを成功させた平山秀幸監督。本作は彼の記念すべきデビュー作。

日本人観光客でごったがえす、バブル期の南の島。とあるカップルが行方不明になる。一年後、この島を観光に訪れた日本人のOLたちが次々と姿をくらましていく。はたしてその真相やいかに。

上で取り上げた『黒い家』とは違って、本作は基本的にホラーでありながらどこか人を食ったような、コミカルな演出が特徴的。個人的にはこういうタッチのホラーの方が好きだなァ。やっぱり怖いのは嫌いデス…

 

マリアの胃袋 [DVD]

マリアの胃袋 [DVD]

 

 

・『王将』

実在の将棋棋士坂田三吉の生涯を描いた『王将』。1948年に伊藤大輔監督の手で一度映画化されたが、今回取り上げるのは、62年に同じ伊藤監督が撮ったセリフリメイク作品。

オリジナル版では「バンツマ」こと阪東妻三郎が演じた坂田三吉の役を、本作では三國連太郎が演じている。決してミスキャスティングではないのだが、「勝負師としての凄み」がいささか出すぎていて、オリジナル版でバンツマが見せてくれたような「(いい意味での)情けなさ」が足りないように感じる。

やっぱり、オリジナル版にはかなわない。

 

王将 [DVD]

王将 [DVD]

 

 

・『それから』

夏目漱石の同名小説が原作。

松田優作(!)演じる主人公は資産家の息子で仕事もせずぐーたら過ごしているニート高等遊民。ある日、そんな彼のもとに失業した大学時代の友人が職を斡旋してもらうため、妻とともにやってくる。何を隠そうこの妻こそ、かつて主人公と恋仲にあった女性であった。ひさかたぶりの再会で、眠っていた二人の情愛が再燃する…

監督は、なんと『家族ゲーム』『黒い家』の森田監督。本作では本格的な文芸路線に挑戦し、みごと成功をおさめている。実に器用な監督さんですね。

主演の松田優作も良い。『陽炎座』の時も思ったが松田優作は、もちろんアクションも素晴らしいが、むしろこういう(冴えない)インテリの役のほうが味のある演技を見せてくれて、個人的には好きだ。

 

それから [DVD]

それから [DVD]