Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第42回)

・『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

 今年(2015年)随一の話題作となった本作について、評論家の三浦小太郎さんがこう評していたのをよく覚えている。

「あぁ、頭のいい人があえてバカになると、なるほどこんな面白い映画が生まれるのか、と思いました」

…もはや三浦さんのこの一言で、本作の本質がズバリ言い尽くされてしまった感が否めないのではなはだ恐縮なのだが(^_^;)、本ブログにて取り上げた以上、私からも簡単にコメントをば。

 

本作のテーマは、紛うことなき「生命賛歌」だ。

といっても、よくサヨクが持ち上げるような人畜無害の作品群とは全く異なる。

サヨクのいう「生命賛歌」がたいていの場合クダラナイのは、その「生命」の本質がタナトス(攻撃や自己破壊に傾向する死の欲動)であることに彼らが気づかないか、気づいたとしても見て見ぬふりをするからだ。

生命は、人間は、タナトスにあふれている。だからこそ、ときには勢い余って同属をぶっ殺すし、場合によっては自らの身体をも破損させる。

 

…それで、いいじゃないか(笑)

 

そう、この最後の(笑)が重要なのだ(笑)。こうやって笑い飛ばせるかどうかが、本作を楽しめるか否かの分水嶺となるだろう。

マッドマックス 怒りのデス・ロード(字幕版)

マッドマックス 怒りのデス・ロード(字幕版)

 

 


・『処女の泉』

 スウェーデンが生んだ巨匠イングマール・ベルイマン監督は、「神の沈黙」「生と死」など、キリスト教をテーマとした難解な作品を多く世に出したことで知られている。

そんなベルイマン監督が、黒澤明羅生門』にインスパイアされて作ったという本作は、復讐劇。娘をレイプのすえ殺害された父親が犯人一味―レイプには加わっていない少年一名を含む―を報復のため殺害する。

羅生門』に影響を受けたというが、僕はむしろ60年代に東映が量産した任侠映画に雰囲気が似ているな、と感じた。報復を決意した父親がサウナに入って身を清める場面は、仲間を殺されたヤクザがやむにやまれず敵対するヤクザ一味の陣営に殴り込みに行く場面と似た趣がある。北欧の巨匠は、意外にもアジアに通じる感性を持っていたのかもしれない。

ラスト、娘の遺体のあった場所からこんこんと泉がわきだす場面は、観客に不思議な感動をもたらしてくれる。

 


・『第七の封印』

十字軍遠征からの帰途につく騎士。ふと、彼の前に死神(!)が現れ、騎士は死神とチェスの対局をすることになる。負ければ彼の命はない。ところがこの死神、「チェスは得意」というだけあって、まるで将棋の羽生さんのように強い! はてさて騎士の運命や如何に…

監督は『処女の泉』と同じくベルイマン。日本人には皆目意味が分からないタイトルは、『新約聖書ヨハネの黙示録の一節に由来。もうタイトルからして、キリスト教を生涯のテーマとしたベルイマン監督らしさにあふれているではないかっ!(w

生前、本作が最もお気に入りだったと伝えられるベルイマン監督。本作を通じて「ベルイマン・ワールド」を堪能したい。

 


・『ある結婚の風景』

『処女の泉』『第七の封印』で知られるスウェーデン映画界の巨匠・ベルイマン監督がもともとはテレビドラマとして撮った作品をつなげて一つの映画としたもの。

周囲のだれからも「理想のおしどり夫婦」とみられていた主人公夫婦。だがその実態はギクシャクとした仮面夫婦にすぎなかった…。

紆余曲折を経て離婚した二人は、今度は友人として再会、思い出の別荘で一夜を過ごす。もはや「理想の夫婦」という空虚な仮面を捨てたことで、飾らない「素の自分」としてはじめて相手と向き合えるようになった二人。その表情も、ややぎこちなさが感じられた冒頭のシーンとは打って変わって、実にやわらかい。

夫婦とは何か、結婚とは何か、を考えさせられる作品だ。

 

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・『セッション』

マッドマックス 怒りのデス・ロード』と並んで今年(2015年)の話題作となったのが、本作だ。

主人公は、スクールカースト底辺と一目でわかる、イケてない音大生。そんな彼が音大で出会ったのは…

 

…あれ、ハートマン軍曹?(^_^;)

 

…そうなのだ(笑)。音大生たちを容赦なくシゴく鬼教師(J・K・シモンズ)の言動は、『フルメタル・ジャケット』に登場する海兵隊の鬼教官・ハートマン軍曹そのもの。本作を見ていると「…あれ、俺、『フルメタル・ジャケット』見てたんだっけ?」「ハートマン軍曹、なんで音大にいるの?」と思わず疑ってしまうほどだw

 

鬼教官による容赦ない体罰を描いた本作、その暴力描写があまりに凄惨だというので批判も殺到したという。

だが、あえて言おう。暴力を通じて初めて、見える世界がある。触れられる世界がある。

それこそが、本作のラスト9分19秒だ。観客はまぎれもなく、奇跡を目撃することとなる。

 

セッション(字幕版)

セッション(字幕版)