Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第45回)

・『わが心のボルチモア

日本映画には大家族を描いた作品が少ない、という話をきいたことがある。

「はぁ? そんなバカな。日本には『東京物語』の小津監督がいるじゃないか!」という声が上がるかもしれない。

違う。家族ではない。「大家族」というのがポイントだ。核家族プラス祖父母だけではない、親戚一同まで全部ひっくるめた、大家族。なるほど、確かに日本ではそういった大家族を扱った映画は少ないかもしれない。

本作は、まさにそんな「大家族」を描いたアメリカ映画だ。20世紀初頭、東欧から米国ボルチモアへと移住してきた移民たち。彼らは自由にあこがれ、アメリカンドリームを夢見、事業に無残に失敗しては、くじけることなくまた挑戦する。

たった一人から始まった移民一家は、時とともにどんどん膨らみ、大家族となっていく。そんな彼らが原動力となることで、アメリカ社会はつねに「若さ」を維持しつづけるのだ。本作は大家族の物語であるとともに、現代アメリカ社会の物語でもある。

 

 


・『我が家の楽園

用地買収にどうしても応じない偏屈な一家がいる。買収をもくろむ富豪は業を煮やし、彼の息子に一家の説得に向かわせるが…。

その一家、家の中で勝手に花火を作るわ、楽器を演奏するわで、どいつもこいつも変り者だらけのキ○○イ一家だった。やがて「ミイラ取りがなんとやら…」、というやつで、富豪の息子もすっかり感化されてキ○○イになってしまう。さらには当の富豪までもが…。

監督は『スミス都へ行く』でおなじみフランク・キャプラ。何度も書いているように僕は『スミス』が大嫌いなのですが(w)、本作はなかなか悪くない(w

<システム>の中にとどまる限り人間は幸せにはなれない。だったらいっそみんなでキ○○イになって<システム>の外部に突き出ちゃおうよ。そうすれば幸せになれるよ、というお話でした。

 

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・『わが谷は緑なりき』

一昔前、「蟹工船ブーム」なるものがあった。戦前に書かれたプロレタリア小説『蟹工船』の内容が、ゼロ年代ワーキングプアの若者たちがすごしている過酷な現実と通じるというので、(あろうことか)元右翼活動家の女性作家がこの蟹工船ブームのけん引役となったのだっだ。

あえて問おう。『蟹工船』は傑作か?

今回ご紹介する映画『わが谷は緑なりき』を見ると、『蟹工船』が芸術としていかに陳腐か(※)よくわかる。

 

※あくまで「芸術として」というのがポイント。「革命のためのアジテーション」としては、また別の評価が可能だろう。

 

本作の舞台はウェールズの炭鉱。そこで日夜重労働にいそしむ炭鉱夫たちの姿を描く。監督はジョン・フォード。同じく現実に翻弄される労働者たちを描いた『怒りの葡萄』の監督でもある。

本作はたしかに炭鉱夫たちの「過酷な」日常を描いてはいる。だが過酷な日常というのは、本当につねに過酷なものなのだろうか。連日連夜、ずっと暗いものなのだろうか。

そうではない。つらい毎日のなかにもささやかな幸せはある。暗闇の中にときたま小さな光明が差す瞬間は、たしかにある。本作はそれを逃すことなく描いている。本作は、だから「リアル」なのだ。ひたすら「過酷な日常」を描き続ける『蟹工船』とは、そこが違う。『蟹工船』はちっともリアルじゃない。

 

本作ラスト、炭鉱で落盤事故が起こり、正義に燃える村の若き牧師は、事故死した労働者―主人公の少年の父親である―の遺体とともにエレベーターで地上へ上がってくる。エレベーターによりかかる牧師の姿は、まさにキリストそのものだ。

フォード監督は、弱者によりそう人間のなかにこそ、現代を生きるキリストの姿を見たのだろう。

 

 


・『わが命つきるとも』

近世イングランドに実在した法律家にして思想家、トマス・モアの生きざまを描いた作品。

時の国王ヘンリー8世は離婚を認めないローマ法王庁と激しく対立し、カトリック教会からの分離独立を目指す。それを正義に反するとみなしたトマス・モアは命を賭して国王に抗議。かくしてたったひとりによる戦いがはじまった。

ストーリー自体はとても良いお話なのだけれど、本作を見ていると「あぁ、SEALDsの連中がこれをみたら絶対、王様を安倍首相に、トマス・モアを 自分たちになぞらえて『これは、僕たちの映画だ!』とか言っちゃうんだろうなぁ、イヤだなぁ」とつい思ってしまうのでした(^_^;)

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