Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第46回)

・『三文オペラ

映画がトーキー化されたからこそ誕生した新ジャンル「ミュージカル」。

映画の本場ハリウッドでは、ミュージカルといったら華やかなもの。ところがどっこい、ドイツじゃミュージカルといっても一味違うよ、という映画。

19世紀のロンドン(なのに全員ドイツ語を話す)を舞台に、下層階級の人々のドタバタ劇を―ドタバタなんだけれども決してコミカルでないタッチで―描く。

ラスト、暗闇のなかをノソノソと歩く貧しい人々を上からスポットライトで照らし出すシーンが印象的でした。

 

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・『戦慄の七日間』

第二次大戦後まもない英国・ロンドン。ひさかたぶりの平和も、核物理学を専門とするマッドサイエンティストが「英国政府が核兵器開発を中止しなければ、ロンドンで核爆弾を爆発させる」と脅迫したことで消し飛んでしまう。英国政府は非常事態を宣言、世界的大都市・ロンドンから市民を一斉に疎開させる。かくして無人都市と化したロンドンを舞台に、マッドサイエンティストスコットランドヤード(英国警視庁)との戦いが幕を開けた。

さすが撮影の際に市民を実際に疎開させた(!)というだけあって、人っ子ひとりいないロンドンの街はなんとも印象的。

もひとつ印象的なのが、核テロに対するロンドン市民の反応。まだ第二次大戦の記憶が生々しかった時代、人々は「また戦争か」と嘆きつつも着々と核テロに備える。彼らの口からは「第三次世界大戦」という言葉がごくごくふつうに飛び出す。当時(1950年前後)は第三次世界大戦が決して遠い未来ではなく、すぐそこまで迫った切実な問題として意識されていたことがよくわかる。

さて、本作の悪役であるマッドサイエンティスト。彼は本当に「マッド」サイエンティストだったのだろうか。たしかに彼のとった手段は尋常ではないが、彼の目的はといえば「英国政府に核開発をやめさせる」こと。

…アレ、もしかしてこの人のほうが正しかったんじゃ…(^_^;)

 

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・『ショウボート』

戦前アメリカのミュージカル映画としては珍しく、人種差別の問題を扱った作品。

名曲ぞろいだが、とりわけポール・ロブスンふんする黒人荷役が南部の黒人たちの悲哀を歌った「オール・マン・リバー」(O'l Man River)にいたってはもはや「ホラごらん、格が違うでしょう!」と言わんばかり。その声のパワーには圧倒されてしまう。

ただ一点、気になったことが。(白人の)主人公の友人にしてショウボート一座の主演女優であるジュリーは、白人と黒人のハーフでありながら白人俳優と結婚したことで主役を降板させられ、一座を去る羽目になる(※当時、異人種間の結婚は禁止されていた)。その後、ナイトクラブで成功したジュリーだったが、これまた一座から追放された主人公を憐れに思い、ナイトクラブでのスターの座を主人公に譲って、自身は去ってしまう。いくらなんでもこれじゃジュリーがあまりに報われないじゃないか、と見ていて憤りを覚えた。

 

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・『セールスマンの死

米国東海岸に住む、ある年配のセールスマン。かつては「デキる男」として周囲にブイブイ言わせていた彼も、年老いた今ではすっかり衰え、過去の栄光にすがる毎日。

いや、単に栄光にすがるだけならまだいいのだ。彼の場合、過去の幻影と、人々が自らを称賛してくれる妄想ばかり見ているので、周囲からも家族からも変人扱いされている。そんな彼を待ち受けていたのは、残酷な運命だった…。

本作は1951年公開の米国映画。だがまるで21世紀の現代日本社会の病理を描いているかのようだ。米国には終身雇用・年功序列といったいわゆる「日本型経営」はない。日本でもそれはついになくなってしまった。ひたすら会社に尽くしてきた人間が、当の会社から冷たく首を切られるという悲劇。崩壊する家族…。

「現在の米国社会の姿は、数十年後の日本社会の姿」とよく言われる。これなどはその最たるものだろう。20世紀半ばの時点でこれほどの映画が作られたという事実に、ただただ驚くばかりだ。

 

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・『チップス先生さようなら

ある教師の生涯を、19世紀後半から20世紀前半まで2世紀にまたがって描く。

第一次大戦が勃発し、主人公・チップス先生は戦場に赴く教え子たちを見送る。彼らの多くがその戦争で命を落とすこととなった。

僕は、木下恵介監督の『二十四の瞳』を思い出さずにはいられなかった。

去っていく命があれば、新しく出会う命がある。教師の人生は、そうして続いていくのだ。

 

チップス先生さようなら [DVD]

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