Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第49回)

・『素晴らしき戦争』

戦争が起こる。指導者たちはどこかゲーム感覚で戦争を指揮し、戦況に一喜一憂する。一方、無名の兵士たちは、ただひたすら戦争の犠牲になるばかり…。

日露戦争における無名戦士の叫びをテーマとした日本映画に『二百三高地』がある。今回ご紹介するイギリス映画『素晴らしき戦争』も、やはり第一次世界大戦における無名戦士たちを描いた作品だ。

が、そのアプローチの仕方は対照的。かたや戦争を重厚に描く『二百三高地』。かたや戦争をミュージカル風(!)に描く『素晴らしき戦争』。

「え、戦争映画なのにミュージカル? そんなフザけた演出があるか!」と憤る(真面目な)観客は、残念ながら本作のねらいを全く理解できていない。

本作も含めて、本当に優れた反戦映画というのは、戦争という悲劇(とされるもの)に真正面から向き合うのではなく、むしろあえて距離を置いてコミカルに描くものだ。キューブリック監督の名画『博士の異常な愛情』のラストが象徴的だろう。核戦争勃発による人類滅亡という悲劇(とされるもの)を、場違いなほど明るいBGMでシニカルに描く。

戦争という暴力に対し(サヨクの市民集会にありがちな)「笑顔」ではなく「怒り」の感情でもって立ち向かうことこそが本当の反戦の態度だ、という意見をしばしば耳にする。

…バカかよw そんな真面目すぎる態度では残念ながら戦争がなくなることはない! そうした「真面目さ」こそが戦争を生み出す源に他ならないからだ。むしろ、あえて脱力した視点から戦争という事象を眺める態度こそが、本当の意味での反戦なのである。

 

素晴らしき戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

素晴らしき戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

 

 

・『SMOKE』

ニューヨーク・ブルックリンの下町を舞台に、そこで暮らす煙草屋や小説家、家出した黒人少年など、人々の人生模様を描いた作品。

アメリカ映画にしては珍しく欧州的な、しっとりとした良い映画だなぁ、と感心しながら見ていたら、純粋なアメリカ映画ではなく日米独の合作映画だと知り、納得w

本作のキーワードとなるのが、「嘘」だ。嘘は本当に悪いものか? さにあらず。嘘が人間関係をより潤滑にし、より豊かなものにしてくれることだってあるのだ。

…ぶっちゃけて言えば、「基本的人権」だって嘘だろう。「国民国家」だって嘘だろう。だがそれらがなければ近代社会は立ち行かない。嘘も方便、なのだ。

 

SMOKE [DVD]

SMOKE [DVD]

 

 

・『三十九夜』

ミステリーの巨匠・ヒッチコックの名を不動のものとした作品。

一般に処女作というのは作家の原点であり、その作家の趣味・特徴が全てあらわれる、といわれる。本作はヒッチコックの処女作でこそないものの、たしかに彼の趣味―背中に刺さったナイフ、列車好き、劇場好き、etc―がすでに出そろっているのに気づき、驚かされる。

 

三十九夜(The 39 Steps) [DVD]【超高画質名作映画シリーズ?】

三十九夜(The 39 Steps) [DVD]【超高画質名作映画シリーズ?】

 

 

・『汚れなき悪戯』

おそらくはカトリック国でしか撮れないであろう感動作(本作はスペイン映画である)。

スペインの片田舎の修道院に、ある日赤ん坊が捨てられた。修道士たちによってマルセリーノと名付けられた赤ん坊はそのまま修道院で成長して、いたずら小僧になった。やがて修道院の奥の部屋に古びたキリスト像があるのに気付いた彼は、痩せこけたキリストを憐み、パンをあげる。するとキリスト像はなんとそれを受け取り(←!)、マルセリーノ少年と話までする(←!!)

子供が、子供であるがゆえに神とコミュニケーションできるという発想は、非キリスト教徒であるわれわれ日本人にとっても受け入れられやすいだろう。

子供だからこそ、神を見られる。神に触れられる。神と話ができる。

 

汚れなき悪戯 [DVD]

汚れなき悪戯 [DVD]

 

 

・『グース』

母親の事故死からなかなか立ち直れない少女。カナダで暮らす父親と再会した彼女は、ひょんなことからグース(雁)の卵を拾い、ヒナを孵すことに成功する。グースのヒナたちは「刷り込み」現象により、最初に見た少女を「母親」と思い、なつくようになる。少女は成長したグースたちを越冬地へと移動させるべく、父親とともに人力飛行機で南の米国へと向かう。

ずばりタイトルそのものにもなっているとおり、グースが主人公と言ってもいい映画。あぁ、某若手評論家さんが見たら「グースかわいい!グースかわいい!」と連呼して収拾がつかない事態になってただろうなぁ、と思ったw