Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第53回)

・『犯罪王リコ』

これは「アメリカギャング版平家物語」だ。

ギャングにあこがれて大都会に出てきたイタリア系の青年・エンリコ。彼はみるみる「出世」を遂げていき、やがて「犯罪王リコ」として暗黒界にその名をとどろかせる大物となった。だが栄光もつかの間、その後の彼を待ちうけていたのは、みじめな転落人生だった…。

暗黒界でのし上がっていくリコの姿は、さながら貴族中心社会の中を破竹の勢いで出世していった平清盛のよう。だが、「犯罪王」にはなっても根っからの大悪党にはなりきれなかったリコはそれゆえに、裏切った旧友を粛清することができず、それが彼にとって命取りとなる。

そういうところも、源頼朝を温情ゆえに殺せず、結果、平家滅亡を招いた清盛にそっくりだ。

 

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・『コンドル』

 南米で小さな航空会社を営む男たちの物語。

第二次大戦前、まだ航空技術が今日とくらべて未熟だった当時、パイロットは実に危険と隣り合わせの職業だった。ついさきほどまで一緒に冗談を言いあっていた仲間が、次の瞬間にはもうこの世の人ではなくなっている。彼らは悲しみを忘れるべく、酒の席であえて、死んだ仲間などそもそもこの世に存在しなかったかのようにふるまう―それがパイロットの世界の掟なのだ。

本作ラスト、かつて友を見捨てて事故機から脱出した過去のある男が、同様のシチュエーションに立たされて―しかも同乗しているのは、かつて見捨てた友の実の兄!―今度は見捨てず共に帰還する展開は、ベタだけれども強く印象に残る。

本作は、実に男臭い映画だ。そのせいか、女性が比較的KYなバカに描かれているのが、やや気になった。

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・『アスファルト・ジャングル』

出所した知能犯が、いかがわしい男たちを仲間に集めて、今度は宝石強盗を企てるというお話。

男臭ーいキャスト陣のなかで紅一点として輝いているのが、マリリン・モンロー(!)だ。本作中盤、マリリンの肩を大胆に露出したセクシーな衣装が完全に目にこびりついてしまったせいで、何てことだ、肝心の本編の内容が全然記憶に残っていないwww

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・『サテリコン

古代ローマ人というのは意外にも、実に退廃的な人々だった。酒の席で異国の珍しい食べ物を食しては、せっかく食べた物をわざわざ吐き出して(!)胃の中を空っぽにしたうえで、また新しい珍味を食していたといわれる。

そんな古代ローマのなんとも悪趣味な世界を、イタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニが映像化した。

全裸で水浴びをする無数の男女。「私の遺体を食した人物に遺産を贈与する」と奇妙な遺言を残して逝った富豪の死体に群がって、これを食べる人々。

本作において描かれる古代ローマの世界は、われわれが思い浮かべる『テルマエ・ロマエ』的な“健全な”ローマとは、全く印象が異なる。

本作を見ながら、僕は石井輝男監督のいわゆる「異常性愛路線」の諸作品を思い出さずにはいられなかった。

 

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・『インドへの道』

20世紀前半、英国統治時代のインド。東洋にあこがれる英国人女性がインドへやってきた。やがて現地に住む渡辺謙似のインド人のインテリ青年と親しくなった彼女は、近くにある洞窟遺跡に案内される。だがあまりにも神秘的なその洞窟で、彼女は正気を失ってしまい…

植民地時代のインドを描く本作、一見すると英国のインド統治に批判的で、虐げられるインド民衆に同情的なように思えるが…

それでもインドを、主人公を狂気へと引きずり込む「東洋の神秘」として描いてしまうところに、やはり西洋人監督の限界を感じざるをえない―そうそう、言い忘れたが、本作の監督は『戦場にかける橋』で有名なデヴィッド・リーンである。

西洋人がアジア諸国を異質で不気味な「東洋の神秘」として描いてしまうこうした傾向を、パレスチナ系アメリカ人の文学研究者エドワード・サイード(1935‐2003)は「オリエンタリズム」と呼んで批判した。本作は―おそらくは製作者の意図とは反して―オリエンタリズムの映画、と言ってしまっていいだろう。

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