Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第62回)

・『コーラスライン

ダンサーたちにとってのあこがれの舞台・ブロードウェイを夢見て、オーディションにのぞむ若い男女。彼らのオーディションそれ自体をミュージカルに仕立てたのが本作だ。監督は、これまたミュージカル映画素晴らしき戦争』のメガホンをとった、リチャード・アッテンボロー

本作は、85年公開。かつて、フレッド・アステアが銀幕で踊りまくっていたころのミュージカル映画は、万人にとっての≪夢≫の世界だった。おなじミュージカル映画とはいえ、80年代製作の本作が、一部とはいえ≪夢≫破れて去ってゆく若者たちを描いているのが、僕にとっては何よりも感慨深かった。

 

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・『薔薇の名前

ショーン・コネリーふんする頭脳明晰な修道士が、北イタリアの修道院で発生する連続殺人事件のナゾに迫る。

…というわけで「中世版シャーロック・ホームズ」とも言うべき作品。だが、たんなるミステリーでもなさそうだ。

ー真理とは何か。それは宗教(キリスト教)に優越するものなのか?

本作は、中世のローマ・カトリック教会による抑圧に抗い、そこからの解放を求める≪近代≫の精神の胎動を、凝りに凝ったセット、美にこだわった映像を用いて、描き出している。

 

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・『ブレイズ』

ストリップダンサーの女性と破天荒な知事のロマンスを描いた作品。実話である。

何につけても型破りな知事アール・ロング役をポール・ニューマンが好演している。田中角栄的ともいえる独特のだみ声は、ご本人に似せたものだろう(エンドロールの場面でご本人の生前の肉声が流れる)。

議会でもなんら憚ることなく暴言を連発するロング知事は、さながら今年の米大統領選における「台風の目」トランプ候補のようだ。だが彼と大きく違うのは、ロング知事は人種差別問題に敏感なリベラル派だいう点。

まわりの“良心的な”白人たちは、黒人に差別的な社会のしくみを温存しようとしている。(一見)粗野なロング知事は、そんな社会を変えようとしている。さて、いったいどちらが“良心的”だろう。

本作を見ながら僕は、『風と共に去りぬ』のレット・バトラーを想起していた(※)。

※『風と共に去りぬ』と人種差別の問題はなかなかに興味深いテーマなので、みなさんも興味があったら調べてみてください 

 

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・『遠い夜明け』

米国において、俳優には脚本を見る目も求められる。ダメな映画に出てしまうと、その俳優の鑑識眼まで疑われるというわけだ。米国では、したがって、優れた俳優はきまって優れた映画に出演している(日本とは大違いだ)。だから「これは!」と思った俳優に目をつけておくと、名画に出会える可能性がぐっと高まる。

デンゼル・ワシントンは、僕にとってまさにそんな名優のひとりだ。黒人俳優はコミカルな役を演じることの多い米国映画界において、彼は一貫して知的でシリアスな役を演じ続けてきた。彼の出演する映画は、決まって社会派の傑作である。デンゼル・ワシントンに外れなし、だ。

本作において、彼はアパルトヘイト期の黒人活動家スティーヴ・ビコを演じている。先ほどの『ブレイズ』と同様、本作も実話であり、登場するのはすべて実在人物である。監督は『コーラスライン』のリチャード・アッテンボロー

アパルトヘイト期の南アフリカ。リベラル派のジャーナリスト、ドナルド・ウッズは黒人活動家スティーヴ・ビコと出会う。交流を深めるにつれすっかり彼に感化されたウッズは、白人でありながら反アパルトヘイト運動にコミットしていく。だがビコは南ア警察に逮捕され、謎の死を遂げる。危険はウッズとその家族のもとにまで及び、彼は家族とともに亡命を決意する。

物語後半、ウッズが家族とともに南アフリカを脱出する場面は―派手なアクションシーンこそないものの―思わず手に汗握る。本作は、その社会的メッセージ性もさることながら、同時にエンターテインメント作品としても実に秀逸だ。小説『罪と罰』や映画『ダークナイト』などがそうであるように、優れた作品は、同時に優れた娯楽性をも有しているものなのだと再確認させられた。 

なお、本日(2月11日)は黒人活動家にして南アフリカ大統領ネルソン・マンデラが釈放された日である。

 

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