Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第74回)

・『永遠と一日

今月の一発目は、ギリシャ映画界の巨匠テオ・アンゲロプロス監督の『永遠と一日』から。

余命いくばくもないことを悟った詩人が、アルバニア難民の少年とともに旅をする。

…というお話なのだが、そこはさすがアンゲロプロス作品。単なるロードムービーでは終わらず、19世紀の民族主義的詩人(の幻影)、国境のフェンスで射殺された難民の死体、赤旗を振る左翼の青年など、<政治>が随所で顔をのぞかせる。とても一筋縄ではいかない作品だ。

日本の溝口監督もそうだったけど、アンゲロプロス監督もまた長回しの映像作家として有名だ。一つのカットが5分、6分なんてザラ。俳優たちもさぞや大変だったろう。もっとも、長回しのほうが適度の緊張感を維持できて、かえって良いのかもしれないけれど。

2時間強の作品だが、もっと長く感じられる。まるで大河のような映画だ。

 

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・『鬼火』

この前、アルコール中毒の夫婦を描いたアメリカ映画『酒とバラの日々』を紹介したばかりだが、本作もアルコール中毒の男を主人公とするフランス映画だ。

もっとも、『酒とバラ~』の主人公はいかにも酒乱という感じで始終暴れまわっていたが、こちらの主人公はもう完全に肉体をむしばまれ、暴れる気力も持てない。

人生に、絶望しきってしまっている。

ルイ・マル監督は、そんな主人公が自死へと至る過程を、モノクロームの鮮明な映像で克明に描いていく。

BGMとして用いられるエリック・サティの楽曲が本作の雰囲気にマッチしていて、実に印象的。

 

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・『散り行く花

近代映画の父」D.W.グリフィス監督によるサイレント映画の傑作。本作をもって「映画は第八芸術となった」(※)と評されるにいたった。

文芸・音楽・絵画・演劇・建築・彫刻・舞踊に次ぐ新しい芸術、という意味

欧米列強に仏の教えを広めるべく、一人の中国人青年が英国へと渡ってきた。しかし布教の夢もあえなく潰え、ロンドンの下町にてアヘン中毒者になってしまう。その頃、下町の近所ではある少女(リリアン・ギッシュ)が父から虐待を受けていた。中国人青年はひょんなことから、行き倒れになっていた少女を助け、介抱する。少女は生まれて初めて人の優しさを知る…

なんで中国人役が白人なんだよというツッコミはさておくとして、リリアン・ギッシュの見た目上の若さが印象的な本作。撮影当時、彼女はすでに26歳だったはずなのだが、どう見ても10代の少女である。「永遠の少女」と評されるゆえんだろう。

本作を見終えて、ああ、グリフィス監督って、ロリコンだったんだろうな、となんとなく思った。

 

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・『望郷』

フランス本国から(撮影当時まだフランス領だった)アルジェリアに逃れた犯罪者と、フランス人女性のロマンスを描いた作品。

アルジェの旧市街カスバが舞台で、実際にカスバにて撮影されている。フランス統治時代のアルジェリアの風俗を垣間見ることができ、大変に興味深い。

本作においてカスバは、『BLACK LAGOON』のロアナプラに似た、犯罪者の巣窟、さまざまな人種・民族が暮らす「人種のるつぼ」として描かれている。実際、当時のアルジェリアに住んでいた白人(ピエ・ノワール)に純然たるフランス系は意外と少なく、イタリア系、ドイツ系など多くの民族が暮らしていたという。

アルジェリアはフランス植民地の中でも別格の存在であり、本国に準ずる扱いを受けていた。「セーヌ川がパリを横切るように、地中海がフランスを横切る」とまで評されるほどだった。

だが、本作で描かれるカスバの街は、音楽といい街並みといい、男性が被るアラブ帽といい、実にエキゾチック。これでフランスというのは、やっぱり無理があるでしょう(^_^;)

 

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