Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第79回)

・『大河のうた』

ドイツのヴィム・ヴェンダース監督は、自らの作品『ベルリン・天使の詩』のラストのクレジットにて「全てのかつての天使、特に安二郎、フランソワ、アンドレイに捧ぐ」と、敬愛する3人の監督の名を挙げている。が、その後のインタビューでは「今ならロベール・ブレッソンとサタジット・レイを必ず加える」としている。

今回取り上げるのは、そのサタジット・レイ監督の「うた三部作」のひとつ『大河のうた』だ(実は三部作の最後『大樹のうた』は以前このブログでも取り上げている)。

サタジット・レイ監督は、インド人。インド映画というとどうしても「やや小太りのおじさんが主人公で、何の前触れもなく唐突に歌と踊りの場面が挿入され、わかりやすい勧善懲悪のストーリーが延々3時間続く」的な作品を連想してしまう。実際ほとんどはそうだから仕方ない。

だがサタジット・レイ監督の映画はまったく違う。多くの人々が織りなしていく人生のドラマを、インドの豊かな自然とともに描いていく。我々日本の観客は、何もかもを静かに優しく呑み込んでいくインドの自然の美しさに、ただただ感動せずにはいられない。

どうかみなさんもぜひ本作を、というか「うた三部作」を見てほしい。みなさんのインド映画に対するイメージが、きっと変わるはずだ。

 

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・『大地のうた』

紹介の順番が逆になってしまって恐縮だが、サタジット・レイ監督「うた三部作」は『大地のうた』→『大河のうた』→『大樹のうた』の順番で制作された。ストーリーもその順で展開されていく。

「うた三部作」は、主人公オプーがその半生を通じてさまざまな人々との死と出会いを繰り返す、という内容だ。

三作品を通じて、かなりの数の人間が死ぬ。というか、オプーの親族はほとんど全員(!)死ぬ。だが三作品に決して悲壮感はない。インドの豊かな自然が、人の死をやさしく包み込んでくれるからだ。

三作品を通じて、水が繰り返し象徴的に描かれる。それは雨であったり、アメンボが浮かぶ水たまりであったり、ゆったりとしたガンジス河の流れだったりする。

そう、インドの自然はガンジス河の流れのように、何もかもを優しく洗い流していくのだ。

インドを描いた映画としては、デヴィッド・リーン監督『インドへの道』がある。植民地時代のインドを描いたこの作品は、総じて植民地支配に批判的であり、インド人に同情的である(ようにみえる)。だが『インドへの道』は同時に、主人公の英国人女性を狂気へと引きずり込む「心の闇」としても、インドを描いてしまう。

インド人のレイ監督が撮った、すべてを優しく洗い流していくインド。リーン監督が撮った、欧米人を発狂させる「心の闇」としてのインド。

どちらが本当のインドかは、言うまでもないだろう。

 

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・『八月の鯨

先日ご紹介した散り行く花』のヒロイン、リリアン・ギッシュ御年93(!)にして主演をつとめた作品。

93歳で主演女優というのもものすごい話だが、本作のギッシュはふつうに70代くらいにしか見えないから、つくづく女優というのはすごい種族だと思う(共演するベティ・デイビスはギッシュより14歳年下だが、デイビスのほうが老けて見える)

そんなギッシュは、本作では米東海岸の小島に暮らすふつうの老女を演じている。ストーリーは「田舎のお年寄りあるある」モノ。近所の老人仲間たちが集い、やれ「近頃越してきた若者連中がウザい」だの、やれ「だれだれさんが亡くなった」だのとおしゃべりをする。

役者にとって、「ふつうの人」を演じるのが最も難しいという。それを軽々とやってのけるのだから、さすが超がつくほどベテランのギッシュだ。

本作は、田舎の老人たちの日常を、美しい映像とともに優しく描き出していく。

見ていて、これほど幸福を感じた作品も珍しい。

 

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・『フリー・ウィリー

いったんは社会から見放された孤児の少年が、水族館のシャチと仲良くなり、その調教師となることで心の傷をいやされ、人間的に成長するというストーリー。

シャチはもちろん人間ではないが、きわめて知的な生物だ。人間社会から疎外された少年の相棒には、やはりシャチこそがふさわしい。

 

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・『秘密の花園』

高名な小説『秘密の花園』の映像化作品。

非社交的な主人公の少女が両親を失い、親戚の貴族の屋敷に引き取られる。そこには貴族の息子である病弱な少年がいた。やがて広大な屋敷の庭にて「秘密の花園」を発見した少女は、大人たちには内緒で、病弱な少年とともにそこで遊ぶようになる。

ラスト、秘密の花園にて健康を回復した少年が、ひさかたぶりに父親と再会を果たす場面がなんとも感動的。『ハイジ』でいうところの「クララが立った!」的な感動があって、とってもよろしい。

映像も美しく、子供だけでなく大人が見ても十分に楽しめる作品だ。

 

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・『サムソンとデリラ

旧約聖書におけるサムソンとデリラの物語は、これまで映画やオペラなどで何度も題材とされてきた。最も有名なのは1949年の映画『サムソンとデリラ』だろう。

今回ご紹介するのは、2009年に制作された同名のオーストラリア映画。先住民族アボリジニの若い男女を描く。彼らを聖書のサムソンとデリラになぞらえているのだろう。

主人公たちが暮らすアボリジニの村は、それなりに平和なのだが同時に閉塞感に満ちてもいる。やがて主人公たちは村から脱出するが、さりとて外の白人社会にもなじめず、結局は村へと帰っていく。

とにかくアボリジニの描写が興味深い本作。日本にいるとアボリジニの情報なぞなかなか入ってこないから、いまだに彼らは原始的な狩猟生活を営んでいるのかと誤解してしまう。

当然ながら、アボリジニだって車に乗るし、ロックミュージックも大好きだ。21世紀だもの。その一方、野原でカンガルーを見つけたら直ちに撲殺して食べてしまう(それを見た近所のアボリジニがカンガルーの肉をねだる)という一面もあり、その点は「ああ、やっぱり狩猟民族なのね…w」といささか驚いてしまう(^_^;)

それにしても、かつては「白豪主義」と呼ばれる人種隔離政策をとっていたオーストラリアでもこのようなアボリジニ映画が作られるようになったのか、と思うとなんとも感慨深い。

 

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