Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第83回)

・『007 スペクター』

ジェームズ・ボンドを何代目まで認めるか」というのは、映画ファンの間ではしばしば話題になるテーマだ。

「初代ショーン・コネリー以外認めない!」という人もいれば、「3代目ロジャー・ムーアまでなら許す。それ以降は認めん」という人もいる。もちろん全部認めるという寛大な人もいることだろう(※)

※ちょうど「ガンダムシリーズをどこまで認めるか」というテーマで、オタクが「『SEED』以前なら全部認める」「いや『逆襲のシャア』までなら認める」「いやファースト以外認めない」ともめるのと似ている。

僕はというと…「ショーン・コネリー以外は認めない」という原理主義者だ(笑)。

「あ~、それじゃあ金髪のダイエル・クレイグなんて絶対認めないですよね~w」とよく言われる。

それが案外、そうでもないのだ(笑)。

ここまでハッキリとイメージが一新されると、「ああ、新しい世代のジェームズ・ボンドへと代替わりしたんだな」と頭を切り替えられるのだ。クレイグ以前の、あの「中途半端にショーン・コネリーの面影引きずってます~」みたいなの(もう名前すら憶えてない)が一番タチが悪い。

それに、ダニエル・クレイグはアクションだけでなく知的な役どころもこなせる、とても器用で魅力ある役者さんなのだ。彼の知的な演技を見たいという方は、『Jの悲劇』という映画を見るといい。

で、本作『007 スペクター』は、そのクレイグ主演4作目にして、おそらくは最後(?)となる作品である。そのためか、全4作の集大成という印象が強い。

見どころは、なんといってもアクション。冒頭、メキシコシティ上空を飛ぶヘリの中で敵と格闘するシーンはいくらなんでも危険度が高すぎるので絶対CGだろうと思っていたら、なんと実際に撮影したものだという。オドロキだ。

もちろん映像そのものも実にスタイリッシュ。見ておいて、絶対に損はない。

それにしても、本作でクレイグ・ボンドも見納めというのが実に悔やまれる。ぜひ続編を!

 

 

・『蜂の旅人』

ギリシャ映画界の巨匠テオ・アンゲロプロス監督が描く、初老男性の死出の旅。主演に、イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニを迎えている。

とかく長回しのカットが目立つアンゲロプロス監督だが、本作は長回しが少ないという印象。といってもあくまで「彼にしては」という話であって、各々のシーンは1分以上あるのが普通だ。

初老の男性の旅を描いた映画だが、その根底にあるのは内戦の記憶だ。これはスペインのビクトル・エリセ監督にも共通して言えることだが、内戦をテーマにするといっても、戦闘の様子を直接描くことはしない。市井の人々の日常を描きながらも、その人々の心の奥底に内戦の記憶(トラウマ)があり、それがあたかも遠方の雷鳴のように時折こだまする―その様子をこそ描くのだ。

あ、言い忘れてましたが、女性のヘアヌードシーンもあるので男性諸君は要注目w

 

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・『ボヴァリー夫人』

言わずと知れたギュスターヴ・フローベールの同名小説をクロード・シャブロルが映画化。主人公・ボヴァリー夫人が不倫、借金のはてに自殺するまでを描く。

ボヴァリー夫人を演じるイザベル・ユペールの凛とした美貌がなんとも魅力的だ。

だが最後のヒ素による自殺のシーンでは、彼女の顔はすっかりやつれ、青ざめてしまう。これは、結構ショッキングな映像だ。

我が国には「小野小町九相図」なる絵巻があり、絶世の美女として知られた小野小町が老衰して果て、その遺体が腐敗するまでを描いている。「美の否定」というテーマは、古今東西共通するものなのだろうか。

それにしてもやっぱり、不倫って、よくないですよねっ!

ベッキー&ゲス川谷「…」

 

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・『野火』

僕は塚本晋也という映画監督の魅力が、これまでどうにもよく理解できなかった。

出世作の『鉄男』こそスゴイと思ったものの、『東京フィスト』も『バレット・バレエ』も「なんだか痛そうな映画だなぁ」としか思わなかったし、『KOTOKO』も「あ~めんどくさそうな女だなぁ」としか思わなかった(あ、ただ『六月の蛇』はわりと楽しめたw)

今回の『野火』を見て、塚本監督の映像作家としての凄みが、ようやく理解できた。

間違いなく、塚本監督の最高傑作だ。

のみならず、ここ最近の日本の戦争映画の中でもベストの出来だろう。これから、塚本作品を未見の人がいたら絶対に本作を観るよう勧める。それくらいの映画だ。

本作は、いうまでもなく大岡昇平の同名小説が原作。旧日本軍の兵士が南方の戦場にて<地獄>を目撃する。

冒頭で旧日本軍の想像を絶するブラックぶりが描かれ、終盤までグロテスクな戦争描写が続く。その凄惨さは『プライベート・ライアン』のかの有名な冒頭20分のシークエンスにも、決して引けを取らない。

ここ最近の日本の戦争映画・ドラマに頻出する「戦場で泣きながら戦争の悲惨さと命の尊さを訴える兵士」(のドアップ)みたいなベタすぎる演出は、この映画には皆無だ。ただただ、戦争によって現出した<非日常>の世界が淡々と描かれるのみである。

近年の日本映画は、実写版『進撃の巨人』だとか実写版『テラフォーマーズ』だとか、いろいろとアレな作品があまりにも多く、「あぁ、日本映画の時代って、もう終わっちゃったのかなぁ」とつねづね残念に思っていた。

だが、そんなことはなかった。この国にはまだ、塚本晋也監督がいるじゃないか。

本作は、かなりグロテスクな映画だ。間違っても、カップルがいちゃつきながら観るような映画ではない。だが、本作を見終えて僕は「日本映画って、まだまだ捨てたもんじゃないな」とずいぶんと勇気づけられたのだった。

 

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