Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第95回)

・『最後の人』

無声(サイレント)映画には、文字通り声が無い。

しかし声なくしては内容が分からぬ、というわけで、普通のサイレント映画では会話のシーンの合間に字幕画面が挿入されるのが常である。

今回ご紹介するドイツ映画『最後の人』には、しかしながら、そうした字幕が一切ない。字幕の挿入によってストーリーの流れが寸断されてしまうのを避けるためだ。

そのためか、本作のストーリー展開はわりと単純。軍服みたいなカッコイイ制服が自慢の老ドアマンが高齢を理由に配置転換(=もうカッコイイ制服を着られない!)の憂き目に遭うも、いろいろあって結局はハッピーエンドめでたしめでたし、というお話だ。

そういうシンプルなお話でも最後まで飽きさせないのは、ひとえに映像の美しさと俳優の演技力のなせる業だろう。

 

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・『ジャズ・シンガー』

上述の『最後の人』はサイレント映画だったが、こちらは史上初のトーキー映画として知られている記念碑的作品。

ジャズをこよなく愛するユダヤ人青年が保守的な父とケンカし、出奔してしまう。数年後、ジャズシンガーとして成功した彼は、故郷であるNYにて凱旋公演することとなった。

が、その矢先、駆け付けた母から、父が危篤であることを知らされる。母から「お父さんの目の前でユダヤ教の讃美歌を歌ってちょうだい」と懇願されるが、一方で大切な公演初日が目前に迫っていた。

父か、仕事か。主人公は二者択一を迫られる。

…とまぁこういうお話で、前半3分の2がサイレント、後半3分の1がトーキーという変則的な構成になっている。

映画評論家・双葉十三郎氏によると、公開当時は≪劇場内は異常な興奮につつまれ、感激にむせぶ観客が多かった≫のだそうである(『外国映画ぼくの500本』)

もっとも、21世紀の僕たちから見ればフツーの映画だし、「あのヘンな黒人のモノマネ何なの?」で終わってしまう作品ではある。

 

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・『暗黒街の顔役』

禁酒法時代のアメリカを舞台に、あるギャングの下剋上と破滅の物語を描く。実在のギャング、アル・カポネがモデルである。

派手な銃撃シーンが印象的な作品。とくに主人公が警官隊に包囲され、射殺されるラストはギャング映画史に残る名場面なんじゃないかな。

なお、本作をブライアン・デ・パルマ監督がリメイクして作ったのが『スカーフェイス』だ。邦題だと分かりづらいが、原題はどちらもともに"Scarface"である。

 

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・『河』

インドの雄大な自然と、そこに暮らす西洋人一家の日常を淡々と描く。

監督は、ジャン・ルノワール印象派の画家として有名なピエール=オーギュスト・ルノワールの息子である。

画家のDNAのなせる業(?)なのだろうか、本作における色彩の使い方は見事だ。ガンジス川の褐色の流れ。鮮やかに赤く咲く路傍の花たち。どれも観客に強い印象を残す(よっ、さすが“印象派”の息子!)

本作を一言で評するなら、「本来ならサタジット・レイ監督が撮るべきだった映画を、かわりに西洋人監督が撮っちゃったよ」という感じの映画だ。本作に明確なストーリーはない。繰り返される人間の生と死を、ガンジス川の悠久の流れを背景に描く。観客はそこに永劫回帰を見出すかもしれない。

同じく西洋人監督デヴィッド・リーンがインドを舞台に撮った映画として『インドへの道』が挙げられるが、インドを(西洋人にとっての)心の闇として描くというオリエンタリズムバイアスがない分、本作のほうがずっと良い。

 

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