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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第98回)

・『渚にて

人間、足を踏まれたほうはいつまでもその痛みを忘れないが、踏んだほうはきれいさっぱり忘れてしまうもの。原爆にしても同じことで、アメリカ人というのは落とした側だから、いまだに「原爆=大きな爆弾」程度にしか思っていない(例えば『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』を見よ)

ところがそんなアメリカからも、核戦争の恐ろしさを静かに訴える本作のような映画が生まれるのだから、つくづくハリウッドは懐が広いな、と感心する。

核戦争後の地球。南半球のオーストラリアまではまだ死の灰放射性物質が降ってこないというので、人々は続々オーストラリアに避難してくる。やがてグレゴリー・ペック演じる潜水艦艦長が、調査のためアメリカ西海岸へと赴く。核戦争のため、かつての大都市は無人の廃墟と化していた…。

人っ子ひとりいない、がらんどうのサンフランシスコの街が、何とも言えず不気味。同じく無人状態となったロンドンを描いた『戦慄の七日間』という映画を以前ご紹介したが、あちらは人々が一時的に避難しただけ。こちらは核戦争でみんな死んでしまったという設定だから、よりいっそう悲壮感が増す。

一方、最後の楽園オーストラリアでは、いつ訪れるかもわからない死の灰に人々は怯え、退廃的かつ享楽的な毎日を過ごしている。事故が頻発するカーレースが、にもかかわらず静かなタッチで描かれていて、「世界の終わり」の前のむなしさ、空虚さがなんとも的確に表現されている。

ミュージカルスター、フレッド・アステアも科学者役で出演。老けメイクのせいもあるだろうが、ミュージカル映画とは全然雰囲気が違っていて、最初見たときはアステアと気づかなかったほどだ。

余談ながら…村上春樹氏のベストセラー小説『1Q84』でも本作が言及されている。

 

渚にて [DVD]

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・『オーケストラ・リハーサル』

難解な作風で知られるイタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニ監督による短編映画。

本番前にリハーサルを行う、あるオーケストラ楽団。報酬が支払われないこともあって、その士気は極めて低く、演奏も乱れまくり。当然指揮者はキレるが、楽員たちはどこ吹く風。いったん休憩を挟むも、楽員たちの風紀はどんどん乱れていって…

かつては厳格だったというオーケストラの世界もどんどん規律が緩んでいって、楽員たちがおのおの自己主張するようになった。そのさまは、どうしても現代社会のメタファーに思えてならない。そして指揮者は、失われた過去への憧憬を隠そうとはしない。その姿は、そのまま監督・フェリーニの姿とダブって見える。

以前ご紹介した『ジンジャーとフレッド』ではフェリーニは、映画の時代が終わってテレビが取って代わったことを哀愁たっぷりに描いていた。フェリーニは失われた過去への憧憬が強い人なのかな、と思った。

 

オーケストラ・リハーサル [DVD]

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・『ピアノ・レッスン

19世紀のニュージーランドスコットランドから口のきけない女性とその娘がやってきた。彼女たちは再婚相手とともに暮しはじめるが、ひょんなことから近隣に住む男にピアノを教えることとなり、やがてその男と不倫関係に陥っていく。

本作において特筆すべきは、その「不気味さ」。べつにサスペンス作品というわけでもないのに、全編にわたって異様な雰囲気が漂っている。正直、「怖い」と思った。

一方で、先住民マオリ人がわりと好意的に(差別的でなく)描かれていて、その点では好感が持てた。

 

 

・『コクーン

老人ホームの近くのプールに、ジャガイモのような形のナゾの物体が沈んでいるのを発見した老人たち。このプールに浸かると、不思議なことにみるみる体力が戻ってきて、老人たちは活力を取り戻す。

ところがこのナゾのジャガイモの正体は、なんと宇宙人の繭(コクーン)だった!

というわけで、老人たちのせいで活力を奪われてしまったコクーンを救うべく、自責の念に駆られた老人たちが一肌脱いで、最後には友好的な宇宙人たちと一緒に大宇宙へと"往生"しちゃうよ、というお話。

言うなれば「おじいちゃん版ET」という感じの作品でした。

 

コクーン [DVD]

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・『リトルショップ・オブ・ホラーズ』

ナゾの食人植物に翻弄される人々をコミカルに描いたミュージカル映画

NYで原因不明の皆既日食が発生。その直後、街の植物ショップの店頭に謎の植物が現れ、主人公の青年がそれを持ち帰って育てる。青年の生き血を吸って成長していった植物は、やがて喋る(!)ようになり、餌として人間の死体を要求するようになる。

…と書くとなにやら不気味なホラー映画のようだが、あくまでコメディなので雰囲気はいたって明るい。一番笑ったのが、主人公のガールフレンドに暴力をふるうドSの歯医者で、「人が痛がっているのを見るのが大好きだから歯医者になった」という設定が面白い。

ギリシャ演劇のように合間合間に登場する、黒人3人娘のコーラス隊もいい味を出している。

 

リトルショップ・オブ・ホラーズ 特別版 [DVD]

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