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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

読書ノート(第2回)

・『新しい左翼入門ー相克の運動史は超えられるか』

左派の立場から金融緩和の重要性を訴えつづけている経済学者・松尾匡(ただす)さんによる左翼入門本。

松尾さんによると、左翼活動家は大きく「インテリのエリート活動家(理論家)」と「大衆運動からのたたき上げの活動家」の二つに大別される。彼はこれらふたつを大河ドラマの登場人物の名を取って、それぞれ「嘉顕タイプ」と「銑次タイプ」と命名している。重要なのは、どちらかが過激でどちらかが穏健というわけではなく、ときに嘉顕タイプが過激になることもあれば、ときに銑次タイプが過激になることもある、という点。そして、前者が正しいこともあれば後者が正しいこともあるのだ。

本著は、わかりやすく親しみやすい文体で書かれてはいるけど、内容はわりと濃密で、明治期から現代にいたるまでの左翼運動史がこの一冊にぎゅーぎゅーに詰まっている。だから、結構読み応えがある。

全体的に、「!」が多用されているのが印象に残る。著者の情熱の表れだ。松尾さんは現在50代だが、若者のようにアツい人なのだ。このように、中高年になってもなお青年のようなアツさを保っている左派インテリとしては、ほかに社会学者の大澤真幸さんが挙げられるだろう。

 

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

新しい左翼入門―相克の運動史は超えられるか (講談社現代新書)

 

 

 

・『ダメな議論ー論理思考で見抜く』

リフレ派の論客として活躍している、経済学者・飯田泰之さんによる新書。経済学というよりかは、もっと幅広く、メディアリテラシーを扱った著作だ。

世にはびこる「ダメな議論」、我々はどう見抜けばいいのだろう。飯田さんはいくつかポイントを挙げているのだが、とくに重要なのが定義の問題反証可能性の問題

たとえば「構造改革によって信頼関係が失われた」という文章について考えてみると、まず「構造」という言葉の定義がしっかりとなされていない。そして「信頼関係が失われた」か否かは客観的に判定することができない(反証不可能)。したがってこの文章には問題がある、という具合。

経済ニュースで頻出する「国際競争力」なる言葉も、よく使われるわりには厳密な定義はないのだという(この話は結構ショックだった…)

反証可能性という言葉について、もうちょっと補足。これは自然科学において重要な概念で、たとえば「光より速いものはない」という命題は、光を超える速度で飛ぶ素粒子が観測されれば否定されることになる。これが、反証可能性。自然科学だけでなく、社会科学においても、これは重要な概念なのである。

いや~、勉強になりました(^▽^;)

 

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

 

 

・『性同一性障害社会学

タイトル通り、性同一性障害を(ジェンダー社会学の観点から考察した著作。後半部分は論文集になっている。

読んでいてとても面白かったのが、第4章。まずいくつかの「ナゾ」が提示される。

たとえば、妻が「実は俺、FtM(男になりたい女)だったんだ!」とカミングアウトした場合、間違いなく結婚関係は破綻するが、夫が「実は私、MtF(女になりたい男)だったの!」とカミングアウトした場合、必ずしも結婚関係が破綻するとは限らない。etc...

なぜか。その答えは「ホモソーシャル」という概念にこそある。

ホモソーシャルは、ホモセクシャルと言葉こそ似ているが、全然違う。要するに「男同士の絆」を重んじるのがホモソーシャルなのだ。

ホモソーシャルという概念によって、人間社会は「男」と「それ以外」(女性や、ゲイなどの性的マイノリティー)に二分され、男は「それ以外」の人間が新しく「男」になるのを許さない。一方、「それ以外」の世界の住民である女は、男がMtFとして「それ以外」の世界に新しく入ってくるのを歓迎するのだ。

読んでいて「あぁ、なるほど!」とストンと腑に落ちた。まるでミステリーの謎解きのように説明がなされていくさまは、痛快ですらある。

 

性同一性障害の社会学

性同一性障害の社会学