Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

読書ノート(第4回)

・『黒いスイス』

白く輝く氷河、澄んだ清浄な空気、そびえ立つアルプスの山々…

日本人の思い描くスイスのイメージは、おそらくはアニメ『アルプスの少女ハイジ』によるところが大きい。そこではスイスは、小国ではあるが平和で美しい理想郷として描かれている。

だがはたしてその実態は……という内容の本。

もう冒頭からして、優生学の観点からロマ人(ジプシー)の子供を親から無理やり引き離しただの、ナチスによる迫害から逃れてきたユダヤ人をドイツに追い返しただの、と衝撃の展開が続く。

また、スイスが窮屈な相互監視社会であることや、金融立国としての性質からマネーロンダリングの格好の舞台として悪用されていることなども、容赦なく抉出されている。

ただ一点気になったのが、スイスの核開発を扱った章。冷戦期にスイスが核武装を検討していたという話で、毎日新聞支局長である著者はこうしたスイスの動きを批判的に書いている。

だが、「核武装はリベラルの観点からは好ましくない」とは必ずしも言い切れない。リベラル派が核武装に賛成することだって、十分にありうる。スイスの核武装を、上述のロマ人、ユダヤ人迫害と同列に扱うことはできないと思うのだが…

こういうところは、「リベラルであれば核武装に反対して当然」と思い込む日本のリベラル派のニブい部分が出ているかな、と思う。

 

黒いスイス (新潮新書)

黒いスイス (新潮新書)

 

 

・『全国民必読 経済ニュースのウソを見抜け!』

リフレ派の経済評論家として、随所でサヨクをdisりまくっている上念(じょうねん)司さんの著作

タイトルのとおり、経済ニュースのウソをガンガン暴いていくというスタイルの本著。リフレ反対派の唱える「増税財政再建」がまったくのデタラメであり、本当に財政再建するためには税収を増やさねばならず、税収を増やすためには名目GDPを上げなければならず、名目GDPを上げるためには増税ではなく)金融緩和すべきであることが示されていく。

…これは本著に限らずリフレ派の論客たちの本を読んでいていつも思うことだが、「金融緩和でハイパーインフレになる!」だとか「円高は日本の誇り」だとか言う自称エコノミスト、自称経済アナリストの人たちは、果たして本当に経済学というものを分かっているのだろうか。

う~ん、これなら僕も、もうちょっと経済学を勉強すれば経済アナリスト稼業を始められるんじゃないかな。よ~し、がんばるぞ!(w

 

全国民必読 経済ニュースのウソを見抜け!

全国民必読 経済ニュースのウソを見抜け!

 

 

・『日本経済復活一番かんたんな方法』

リフレ派の3人の論客、勝間和代さん、宮崎哲弥さん、飯田泰之さんによる対談本。日本経済復活の一番かんたんな方法=金融緩和について語っている。なお、勝間さんは上に挙げた上念司さんの共同事業パートナーでもある。

内容は…他のリフレ派論客の著作とおおむね重なっている。ただ、個人的に面白いなぁと思ったのが一点あって、精神科医香山リカさんとのいわゆる「勝間・香山論争」について勝間さん本人はどう思っているのか、という話。彼女はこう述べている。

≪私はずっと「自立、自立、自立」って話をしているんですけど、香山さんはそれに対して自立でくたびれちゃってる人もいるんだと。それはそれで間違っているとは思いません。ただ、これは重要で本質的な問題だとは思っていないんです。問題は、それを、香山が正しいのか、勝間が正しいのかみたいな二極構造にすることのほうだと思うんですね。≫(本著63頁)

然り。ふたりは対立するものではなく、ふたりでひとつ、セットなのだ。

現に僕は、勝間、香山双方のファンだという女性の話を知人から聞いたことがある。彼女はあっぱれにもこう言い切ったそうだ。

「私は勝間先生、香山先生、両方のファンです! 元気な時は勝間先生の本を読んで奮い立ってスキルアップに励んで、それに疲れちゃったら今度は香山先生の本を読んで『あぁ、自分はこのままでもいいんだ』と安堵して癒されて、それでしばらく経って元気が出てきたらまた勝間先生の本を読んで奮い立っています。だから私にとっては、勝間先生も香山先生も、どちらも大切な人なんです!」

 

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)

日本経済復活 一番かんたんな方法 (光文社新書 443)

 

 

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・追記(2016.9.14)

上記の『日本経済復活一番かんたんな方法』を今日読み返してみて、あらためて評論家・宮崎哲弥さんのコメントに感心した。

宮崎さんは大乗仏教中観派にコミットしており、自らを「ラディカル・ブディスト」と位置づけている。そんな熱心な仏教者なら「資本主義なんて煩悩の塊だ! 煩悩から、資本主義から、解脱しろ!」とか言い出しそうな気もするが(w)、宮崎さんは違う。彼は以下のように発言している。

≪安易にゲームから降りるのではなく、まずそのゲームの内において問題を解決する以外にないでしょう。「夢のなかの火は夢のなかの水で消せ」というのが仏教の教えです(チャンドラキールティ『プラサンナパダー』)。≫(191頁)

ここでいう「ゲーム」とは言うまでもなく資本主義のことだ。うーむ、やっぱり宮崎さん、言うことが深い…(;^ω^)