Furusawa Keisuke's blog

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父の字を継ぐ―「通字」のはなし

大河ドラマ真田丸』、ついに主人公・真田信繁が講談などでおなじみの名前「真田幸村」を名乗った。物語はいよいよクライマックス・大坂の陣へとなだれ込んでいく。

 

真田丸』では、幸村の「幸」の字は、彼の父・昌幸の「幸」の字を受け継いだものと説明されていた。

本来「幸」の字は、真田家の長男である信幸(信繁/幸村の兄)が受け継いでいたが、徳川方についた信幸は、家康の命により「幸」の字を捨てることを余儀なくされる。信幸は名を「信之」と改めたが、読みは引き続き「のぶゆき」である。

こうして兄・信之が捨ててしまった「幸」の字を、こんどは弟・信繁が拾って「幸村」と名乗るー『真田丸』では、ここが極めて象徴的なシーンとして描かれていた(※)

 

※「いや待て! 史実では信繁が幸村と名乗った証拠なんてないぞ!」という反論が出てきそうだが、僕が言いたいのはそういうことではない。史実かどうかは別にして、「父の字を息子が受け継ぐ」というストーリーが日本社会において美談として受容されるという事実を、ここでは指摘したいのである。

 

日本の命名法の特徴として、先祖の諱(いみな)の字を子孫が代々受け継いでいく、「通字」と呼ばれる習慣が挙げられる。後述するが、こういった風習は中国・朝鮮には見られない。

通字の例を挙げると、徳川家では「家」の字がそうだし(家康とか家光とか)、伊達家では「宗」の字がそうだ(政宗とか輝宗とか)

真田家の場合は「幸」の字がそうで、だから昌幸のふたりの息子がそれぞれ信幸、幸村と名乗ることに意味があるのである。

 

 

上述のとおり、父の名前の字を受け継ぐという発想は、中国・朝鮮にはない。大陸ではその反対、「父の字を名乗るなんて恐れ多い」という発想が常識である。したがって大陸では通字の風習はない。

ところがどういうわけだか、ひとつ奇妙な例外がある。

国際ニュースをよく見る人ならピンとくるかもしれないが、北朝鮮がそれだ。

北朝鮮の指導者一族ーいわゆる「金王朝」ーは、初代の金成、二代目の金正日、三代目の金恩…という具合に通字が見られる。正恩のふたりの兄、男、哲にもやはり通字が見られる。

我々日本人はこれを見て「ああ、お父さんの字を受け継いでいるんだな」と納得してしまうが、これは完全に日本人の発想。伝統的な朝鮮の命名法ではなく、むしろ日本の武家のそれに近い。

どうして金王朝にのみ通字が見られるのかーこれはまったくの謎である。

 

 

…話がだいぶそれてしまった(;^_^A

父・昌幸の字を受け継いだ幸村(信繁)は、これから大坂の陣においてどのような活躍を見せてくれるのだろうか。

真田丸』、フィナーレまで、あと2ヶ月ちょっと。