Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第116回)

・『裁かるゝジャンヌ』

タイトル通り、百年戦争期に活躍した救国の英雄ジャンヌ・ダルクの裁判の様子を描いた、フランスのサイレント映画。公開は1928年というから、もう90年近くも前の作品ということになる。

裁判の場に姿を現したジャンヌは、男装していて短髪だからというのもあるが、最初見たときは男かと思った(;^ω^)

ジャンヌは、日本のサブカルチャーの世界でもたいへん人気のある人物であり、もちろんそれらの作品中では美少女キャラとして描かれることが多いのだが、本作におけるジャンヌには華やかさなど微塵もない。

もちろんこれは意図的な演出である。ジャンヌの物語から神話性をなるべく除去し、生身の彼女を描こうとしているのだ。

本作の特徴は、極端なまでの顔のクローズアップである。とにかくアップ、アップ、またアップの連続で驚かされる。

もうひとつの特徴は、「パンクロマティックフィルム」と呼ばれる、当時最先端のフィルムが用いられていること。

感光域が広く、可視光線全域をとらえることができるこのフィルムは、したがって肉眼で見るのに近い明暗を再現できるという。これと上述のクローズアップの技法とが結びついたことで、俳優たちの顔を実に細部まで、克明に映し出すことに成功したのである。

…僕はこれまで、サイレント映画というのはぶっちゃけ「アンティーク」ー骨董品のようなものだと思っていた。

アンティークにはアンティークなりの良さがあるじゃないか、ということで、まるでアンティーク家具を愛でるように、サイレント映画を愛でてきたつもりだった。

そしたら、違った。本作はまったくもって、アンティークなどではない。その映像感覚は、21世紀の僕たちをもシビれさせる。

僕のなかで、サイレントの印象が、ずいぶんと変わった。

 

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・『女と男の名誉』

ジャック・ニコルソンという人は正直、お世辞にもイケメンとはいいがたいご面相だが(失敬!)、いやだからこそ、観客に強い印象を残す稀有な俳優である。

本作ではジャック・ニコルソン扮する殺し屋と、キャスリーン・ターナー扮する女殺し屋とで、だまし合い、化かし合う。

ブラック・コメディというやつだ。主人公はイタリアマフィアであるから、本作全体が『ゴッドファーザー』のパロディであるとも考えられる。

監督は、ハードボイルド映画の古典として有名な『マルタの鷹』を撮ったジョン・ヒューストン。お年を召されても、やっぱり犯罪映画がお好きなようで…w

 

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・『裁きは終りぬ』

陪審員として裁判所に(嫌々)召集された市民たち。ところが今回、彼らが担当する事件は、ただの殺人事件ではなかった。恋人の男性をこれ以上苦しませまいとした女性による、安楽死事件だったのだ。

果たして安楽死を殺人として裁くべきなのか、と頭を抱える陪審員たち。最終的に下された判決は…

本作の公開年は1950年というから、実に60年以上も前の映画だ。が、そこで取り上げられているのは、安楽死陪審員裁判員など、現代に暮らす日本人にとっても決して他人事とはいえないテーマばかり。

「名画」と称される映画の持つテーマ性は、決して色あせることがない。名画は常に時を超えて、我々観客を考えさせるのである。

もっとも、娯楽性という観点からすれば、同じく陪審員をテーマにしたアメリカ映画『十二人の怒れる男』には敵わないだろう(;^ω^)

 

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・『ぼくの伯父さん』

いやぁ、こんな風変わりな映画って、ないよ!(w

正確に数えているわけじゃないけど、僕はこれまで2000本以上の映画を見てきたと思う。でも、こんな映画を見るのは生まれて初めてだ。

たとえるならば、大手新聞の朝刊に掲載されている四コマ漫画を、どんどんつなげていって、2時間の映画に仕立てたような感じの作品だ(あるいはドリフターズのコントにも若干通ずるものがある)

そこではとりたてて「ストーリー」と呼ぶべきものはなく、人々のユーモラスな日常が淡々と描かれるのみである。

ヘンちくりんな魚のオブジェのある家と、そこで暮す金持ち一家。いたずら好きな近所の子供たち。ホース工場で勤務することになった(本作における主人公的存在である)「伯父さん」とそのドタバタ劇…。

本作全体が、現代社会の風刺ともとれるが、それは決して冷たい印象を与えるものではない。むしろ、他愛もない日常を祝福しているように見える。

いやぁ、今年下半期見た映画の中で、これがベストかもしれませんw