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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『中韓以外みーんな親日 クールジャパンが世界を席巻中!』

僕はあまりテレビを見ない人間なのだけど、最近、テレビをつけると「日本はこんなにも素晴らしい国なんです~!」とか「見てください! 外国人観光客はみんな日本を称賛していますよ~!」とかいった内容の番組がやたらと目につく。

僕はなにごとも斜に構えて見てしまうタチだから、このテの番組を見ても「あぁ、日本が長期デフレで停滞しているから、こういう日本礼賛番組を作って、バブル期の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』的自意識を温存ないし強化したいわけね。はいはいワロスワロスといった感想しか湧いてこない。

 

今回ご紹介する新書『中韓以外みーんな親日 クールジャパンが世界を席巻中!』ワニブックスも、こうした安直な日本礼賛論のたぐいと誤解されるかもしれない。

著者の酒井亨さんは、ジャーナリストから大学教員に転身した人物。アジア通として知られ、2000年から約10年間、台湾に在住し、現地から台湾の現状をレポートし続けてきた。

バブル崩壊以降、わが国がたどってきた20年間は、今では「失われた20年」との評価がすっかり定着してしまった。が、著者は、いやいや、その20年の間にこそ日本文化は世界に受け入れられ、評価されるようになったのだ、と数々のデータや自らの豊富な海外経験をもとに指摘していく。そこが、テレビにあふれる日本礼賛番組と違う点である。

僕は、デフレは社会的弱者ーとりわけ若年層の生活を圧迫するものであるから、日本経済は速やかにデフレから脱却すべきである、と考えている。

が、その一方、「失われた20年」が決してただの暗黒時代ではなかった、とする著者の指摘にもまた同意する。

歴史というのは決して、画一的な評価を下せるものではない。一般に「暗黒時代」と呼ばれる時期にあっても、輝かしいもの、評価に値するものは、確かに存在するのだ。

(現に著者は、たとえば列強による過去の植民地支配について、「罪」だけでなく「功」の部分もあることを指摘している)

…もっとも、第5章で展開される著者の円高肯定論は、個人的にはどうかと思うのであるが…(;´・ω・)

 

中韓以外みーんな親日』というタイトルには、なにやらネット右翼的な響きがあるが、著者は決して戦前日本を礼賛しているわけではない。

彼はあくまで“戦後”日本をこそ評価しているのであり、戦前日本については概して批判的である。また「親日」とされる台湾・東南アジアの人々も、実際には戦後日本をこそ好いているのであって、戦前日本には否定的であることを、著者はデータを挙げて指摘している(228頁)

著者は中国には非常に厳しいが、それは人権弾圧、軍事拡張路線をとる現在の中国に、戦前日本と通じるものを見出しているからだろう。

 

本著ではこのほかにも、興味深い指摘が次々となされる。

たとえば「日本文化はいまや韓流に押されている」という見方についてもー僕自身、この見方をかなりの程度信用していたー著者は、≪韓国は日本から(支持層を)奪ったのではなく、2000年代になって香港の発信力が低下した間隙を埋めたと思われる≫(169頁)とし、韓国のライバルはむしろ香港であると指摘している。また、日本文化と韓流とでは受け入れている階層が異なる、とも指摘している(日本文化のほうが高学歴。韓流のほうが…言っちゃ悪いが低学歴なんだとか)

 

…それにしても、著者のジャーナリスト離れしたオタク知識の豊かさには圧倒される!(w

第2~3章ではおびただしい数のアニメ作品名、声優名が列挙される。ご本人曰く≪アニメを毎週10本以上は見ている≫(150頁)とのことだから、こりゃあもう、れっきとしたアニメオタクですな! ちなみに僕が見ているアニメの本数も、大体同じくらいである。

つくづく、オタク文化って市民権を獲得したんだなぁ、と実感させられた。

 

リオデジャネイロ・オリンピック閉会式での演出が世界的に注目を浴び、「クールジャパン」なるスローガンが人口に膾炙している昨今。本著の価値は、まるで土管から飛び出す安倍首相のように(←?)、ますます高まるに違いない。