Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第122回)

・『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

「いっそ、このまま終わらないでくれればいいのに」「ずっとこの映画を見ていたい…」

そう思わせてくれる映画は、数は少ないけれども確実に、ある。

本作は、まさにそういう映画のひとつだ。

ロードムービーの名手ヴィム・ヴェンダース監督が、キューバに住む老ミュージシャンたちにスポットライトを当てた、異色のドキュメンタリー映画である。

「つねに音楽であふれている国」とも形容される、キューバ。本作では、80代、90代(!)にもなる老ミュージシャンたちの演奏が絶え間なく流れ、彼らのインタビュー映像や首都ハバナの街並みが映し出される。

観客は納得することだろう。「あぁ、これだ。これこそが、キューバの魂なのだ」と。

どの国にも、その国なりの“魂”というものがある。それを直接名指すのは難しい。が、本作には確かに、キューバという国の魂を感じる。

 

…本作を鑑賞したまさにその翌日、かの国のフィデル・カストロ前議長の訃報に触れた。これもなにかの因縁だろうか。

 

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・『ハンナとその姉妹

都会的なラブコメディを描かせたら天下一品のウディ・アレン監督。本作では、NYに暮らす中年男女たちの生活とロマンスを、同時並行的に描いている。

そのなかでも個人的に面白いと思ったのが、アレン監督自身が演じるユダヤ系の男のエピソード。

ある日、原因不明の難聴に襲われたことから、自分は近いうちに死ぬんじゃないかとの強迫観念にとらわれた男。すると急に命が惜しくなり、死について考えるようになる。

男はユダヤ教徒だったが、いっそカトリックに改宗しようか、それともインド系の新興宗教に…などと考えているうちに、映画館で往年のコメディ映画を見て、人生の意味についてあれこれ考えることの無意味さを悟るのである。

 

人生に過剰な意味を求めるな、というのは仏教の教えでもある。

 

 

・『旅情』

20世紀を代表する名女優キャサリン・ヘップバーンを主演に迎え、イタリア・ヴェネチアを舞台にアメリカ人女性のヴァカンスとイタリア人男性とのロマンスを描く。監督は『アラビアのロレンス』のデヴィッド・リーン

「ヘップバーン」と聞くと、我々日本人はどうしてもオードリーのほうをすぐ思い浮かべてしまうが、女優としてのキャリアは、実はキャサリンのほうがずっと上なのだ。

そのキャサリンと並んでもうひとつ、本作の“主人公”といえるのが、ヴェネチアの街だ。

最後まで存分に映し出されるヴェネチアの街角の、美しいことといったら! 本作は恋愛映画であるだけでなく、観光映画としても大いに価値がある。…というか、観光映画そのものである、と言い切ってしまってもいいんじゃないかな。上に挙げた『ブエナ・ビスタ~』と同様、こちらも、できることならずっ~と見ていたい、と思える映画だ。

あっちのヘップバーンが『ローマの休日』なら、こっちのヘップバーンは『ヴェネチアの休日』ですなっ!

 

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・『木靴の樹

1900年前後の北イタリアを舞台に、貧農たちの日常と四季の移ろいを描く。

上映時間3時間(!)にも及ぶ、長尺の映画だ。

本作は、貧しい小作農たちの日常を、まるでフランスの画家ジャン=フランソワ・ミレーの絵画のようなタッチで描いており、なんとも印象に残る。

こういう、社会の矛盾や理不尽を描く映画は、ともすれば「説教くさい」印象になってしまうのが難点なのだが、本作では、貧しいなかでも力強く生きていこうとする農民たちの姿が中心に描かれており、説教くささを感じさせないところが魅力だ。

左翼の集会に村人が立ち寄るシーンや、大都市ミラノで労働運動が鎮圧されるシーンなども、あるにはあるのだが、それはあくまで遠方でこだまする雷鳴のように、時折描かれるにすぎない。

本作が描くのは、あくまで農民たちの日常。ガチョウの首を躊躇なくちょん切って食用にする。豚を屠殺、解体してこれまた食用にする。娯楽に乏しい夜などには、話し上手のおっちゃんが怪談話を語って聞かせて、子供たちを驚かす。…なんだか、日本の田舎でもありそうな光景で、思わずニンマリとしてしまった。

地主階級に搾取されても、それでも農民たちはたくましく、今日を生きていく。

 

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