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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『フルサトをつくる』

のんのんびより』というアニメがあった。

ド田舎に暮らす4人の女の子たちの日常を描いた作品で、ギャグのテンポが心地よく、それでいて「泣ける」シーンもちゃんとあることなどから、たちまち人気沸騰。「自分も田舎に移住したい!」とあこがれるアニメファンが急増した。

そういう流れを見て、僕は内心「あぁマズイなぁ…実際の田舎って、絶対ジジババがウザイでしょ? 前近代的な遺習とか、絶対まだ残ってるでしょ? あんな、女の子がキャッキャウフフできるような快適な空間じゃ、絶対ないよ…」と心配になったものだった。

僕自身はといえば、田舎に引っ越したいという気持ちは、あまり…というか、ほとんどない。昔から、人の多い都会のほうが好きだった。

僕はアルプスの大自然より、香港の雑踏のなかに身を置いているほうが落ち着く人間なのだ。

 

そんな僕も、本著『フルサトをつくる』(東京書籍)を読んで、ちょっとだけ、「あ、これなら、田舎に引っ越してみても、いいかなぁ…」と思ってしまった。

本著は、ブロガーのpha(ファ)さんと伊藤洋志さんによる共著。phaさんは自ら「スーパーニート」を名乗り、働かなくても生きていけるライフスタイルを模索している。脱力した感じだけど同時に知的でもある文章が魅力。僕も彼のファンのひとりだ。

伊藤さんのほうはというと…ちょっと説明が難しい(;^ω^) 若者たちが自力で仕事をつくるのを目指す「ナリワイ」という団体を主宰しており、和歌山県の熊野をはじめ、全国の田舎で若者たちによるコミュニティづくりに励んでいる。

本著では、ふたりの熊野での活動が中心に語られる。

…あ、大事なこと言い忘れてた。ふたりとも京大卒(phaさんのほうが1年先輩)

 

本著を読んでちょっとした発見だったのは、「…あ、なにも田舎に骨を埋める覚悟じゃなくたって、いいんだ。中途半端な考えのままでもよかったんだ」ということ。

phaさんも伊藤さんも、熊野にずっと定住しているわけではなく、東京と熊野の間を行ったり来たりする生活を送っているという。

普段は便利な東京に暮らし、ちょっと東京のテンポについていけなくなってきたら、スローテンポな熊野へと移る。で、しばらくは熊野で自然に囲まれながら生活し、そろそろ飽きてきたなと感じたら、また東京へと戻る、という具合だ。

なるほど、こういうやり方だったら、都会好きの僕でも田舎暮らしができるかもしれない。

 

田舎ではどうしても人間関係が濃密になりすぎるきらいがあるが―僕が田舎暮らしで一番心配なのもその点―彼らはその点もちゃんと考えている。

彼らは過疎地域に、若者や現地の高齢者も巻き込んだコミュニティをつくるのを目指しているわけだが、そのコミュニティの構成要員は、①もともとその地に住んでいる高齢者と、②東京などの大都市から移住してきた若い人と、③大都市との間を行き来する(phaさんたちのような)若い人、の3つに大別することができるという。

大事なのは③で、このように人間の流動性を高めることで、コミュニティの風通しがよくなるというのだ。ここでも「その地域に骨を埋める覚悟じゃない」ことがポイントとなる。

①と、②③との交流ももちろん大事である。これについては、まず②が農業を手伝ったりすることで①との信頼関係を構築し、その②が①と③の仲立ちをする、というやり方でいくとうまくいくようだ。

 

本作を読んでいてもうひとつ思ったのは、「あ、ビジネスって、実は意外と敷居が低かったんだ」ということ。

「ビジネス」というと、どうしてもネクタイをビシッ!と絞めて、ビジネスマナーを完璧に習得して、TOEIC900点くらい取って、MBAを取得して…とかいろいろと思い浮かべてしまうけど、なにもそれだけがビジネスじゃないのだ。

たとえば、過疎地に知的な若者たちが集まって「塾」を作り、その講師となって現地の子供たちの勉強をサポートする、というやり方だって、れっきとしたビジネスなのだ。

僕は以前、塾講師の仕事をしていたから、これくらいのビジネスなら僕にだってできそうだ。…さっそく熊野に行ってみようかw

 

うーん、なんだか僕もモーレツに、ビジネスがやりたくなってきたぞw

 

フルサトをつくる: 帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方

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