読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

おすすめドキュメンタリー映画5選

今日はお気に入りのドキュメンタリー映画を5本、ご紹介します。

 

・『いのちの食べかた

「20世紀最大の哲学者」として知られるマルティン・ハイデガーは、テクノロジーの進歩に警鐘を鳴らしたことで知られている。

なぜ?

本作を見ると、その理由がなんとなく分かる気がする。

本作は、機械化された大規模農場や食肉工場などにおける食品生産の過程を、ナレーションを一切挟むことなく淡々と画面に映し出す。

これを見ていると、もはや人間と動物、どっちが家畜なのか分からなくなる。人間は、自分たちが家畜を支配していると思い込んでいるが、実際には人間こそ、システムによって養われる家畜同然の存在になり果てたのではないか。

僕がこれまで見てきたドキュメンタリー映画の中で、本作が最高傑作である。

 

いのちの食べかた [DVD]

いのちの食べかた [DVD]

 

 

・『100,000年後の安全

原発から日々生み出されている、放射性廃棄物。これが無害化されるのには10万年という途方もない歳月を待たなければならない。そのため、放射性廃棄物を地下深くに格納する必要が出てくる。

本作は、北欧における放射性廃棄物の処理施設を取材したドキュメンタリー映画である。我々はいやおうなく、原発というテクノロジーについて考えさせられる。

…のだが、ここから本作は少々意外な展開を見せはじめる。果たして10万年の間、我々の文明は続くのか。滅んでしまったら、そこからさき廃棄物はどうなるのか、と本作は問いかけてくるのだ。

わが国の『風の谷のナウシカ』をはじめ、優れたサブカルチャー作品は、科学文明崩壊後の世界を描いてきた。科学文明が滅びてしまえば、地下深くに埋められた放射性廃棄物を後世の人間たちが知らずに掘り返してしまうというリスクは、ないように思える。

だが、本当にそうなのか。本作は、近世ヨーロッパにおいてすでに大深度まで掘削できる技術が存在していたことを指摘している。

僕も、本作の問題提起に賛同する。たとえばマヤ文明は、暦法のみ異常に発達した文明であった。科学文明崩壊後に、掘削技術のみ異常に発達した新文明が誕生する可能性を、どうしてゼロだと言い切れるだろう。

原子力だけでなく、文明論の観点からも、非常に興味深い作品だ。

 

100,000年後の安全 [DVD]

100,000年後の安全 [DVD]

 

 

・『シッコ』

マイケル・ムーアというドキュメンタリー監督は、主に9.11のころから、アメリカや自民党政府のやることなすこと何でも批判したくてしょうがない、わが国のリベラルたちの間でもてはやされるようになった。

僕も彼の代表作『ボウリング・フォー・コロンバイン』や『華氏911』を見てみたが、どうしても左派の側からのプロパガンダ映画という印象をぬぐい切れなかった。

じゃあ全部ダメなのかというと、そうでもない。本作『シッコ』は個人的に、ムーア監督の最高傑作だと思っている。オシッコじゃないからね

本作のテーマは、アメリカの医療問題。とにかく国民皆保険制度が存在しない国なので、いったん大きな病気にかかってしまったら最後、法外な医療費を請求されてしまうのだ。

ムーア監督は、同じ英語圏ながら国民皆保険の先輩であるイギリスや、当時まだアメリカと国交を回復していなかった宿敵キューバにまで飛んで、現地の医療事情をレポートする。

本作を見ていると、あぁアメリカ人に生まれなくて良かった、と心底思う。

 

シッコ [DVD]

シッコ [DVD]

 

 

・『ヤバい経済学』

経済学者による同名の著作を原作とした、ドキュメンタリー映画。

本作では複数のテーマが取り上げられており、中には日本の大相撲の八百長問題までも含まれているから、我々日本の観客にとっても身近に感じられる映画である。

本作を見ていて驚いたのが、90年代のアメリカで犯罪発生件数が減少したのはどうしてかという話。本作は、巷で挙げられている原因を次々と否定していき、最後に真の原因としてとんでもない結論を挙げる。

僕は仰天してしまった。「真の原因」が何なのか、気になる方はぜひ本作を観てください。

本作は映像感覚もスタイリッシュで洗練されているが、日本の大相撲の話題になるととたんに『ロスト・イン・トランスレーション』的なオリエンタリズム丸出しの描写になってしまうのは、やはり欧米人の限界か。

 

ヤバい経済学 [DVD]

ヤバい経済学 [DVD]

 

 

・『ダーウィンの悪夢

東アフリカにある巨大な湖・ヴィクトリア湖

この湖では、人間が放った巨大魚・ナイルパーチのせいで固有種が絶滅の危機に瀕しているほか、地元住民も長く貧困状態に置かれている。

どうして、このような生き地獄が現出してしまったのだろう。

本作の特徴は、「わかりやすい敵」が作中のどこにも登場しないということだ。誰もが良かれと思って行動して、そのせいで最悪の結果を導いてしまう。経済学の世界で「合成の誤謬」と呼ばれている問題だ。

僕たち日本人とて、決して他人事とはいかない。ナイルパーチは日本ではスズキの代用魚として市場に出回っているからだ。僕たちが「あぁスズキが食べたいなぁ」と言って、ヴィクトリア湖産のナイルパーチを買ったとたん、僕たちはこの問題の当事者となってしまう。もちろん、僕たちは「わかりやすい敵」では決してない。

上で、『華氏911』をプロパガンダと言った。ブッシュJr、ネオコンといった「わかりやすい敵」が登場するからだ。

本作は違う。

これぞ、本物のドキュメンタリーである。

 

ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD]

ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD]