Furusawa Keisuke's blog

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書評『国民のための経済原論2 アメリカ併合編』

本日は、社会学者・小室直樹先生(1932-2010)著作『国民のための経済原論2 アメリカ併合編』を取り上げたい。

「えー、また小室先生ですか? 最近、小室先生が続きますねぇ」

そうです。私は今月を「小室直樹月間」と定め、ひたすら小室先生の著作を読みまくることに決めているのです。

 

というわけで、今回は『経済原論2』のお話。

タイトルの通り、小室先生が経済学について解説するという本著、まずは古典派経済学の金字塔とも言っていい「比較優位」の話から始まる。

比較優位というのは、要するにこういうことだ。

Bさんは、どんな仕事をしてもAさんにはかなわない。だが、他の仕事では全然ダメで比較にならなくても(絶対劣位)、ある仕事でならAさんに迫る仕事ぶりをみせる(比較優位)。ただ、あくまでAさんに「迫る」だけであって、実際にAさんより仕事ができるというわけではない(絶対優位ではない)

このとき、仕事のできるAさんは、Bさんに仕事を任せるべきか否か。

…実は、BさんがAさんに迫る仕事ぶりを見せる“ある仕事”については、思い切ってBさんに任せてしまったほうがいいのだ。Aさんのほうが仕事ができるにもかかわらず。

これが、経済学のいう「比較優位」なのである。

一見、我々の常識に反しているようにも見える。が、そもそも科学の法則って、そういうもんでしょw それをいうなら物理学における「慣性の法則」だって、相当常識に反しているじゃないか。

 

小室先生は続いて、比較優位がどのように発生するかを説明する「ヘクシャー=オリーンの定理」について解説。さらに続いて、国際収支について複式簿記(※)の概念を用いながら解説していく。

 ※小室先生は本著に限らず多くの著作のなかで、複式簿記が資本主義成立に果たした役割を強調している。

 

ここで面白いのが、19世紀の米国経済がなぜ順調に発展することができたのか、という話。

実は当時の米国の経済学者たちが古典派経済学の影響を受けていなかったからだというのだ。

ドイツの経済学の影響を受けていた彼らは、保護貿易を採用することによって、まだ未熟だった自国の工業を、競争力のある英国の工業製品から守ったのである。保護貿易のおかげで米国経済はここまで成長できた(※)。反対に、古典派経済学に従って市場を開放していたアイルランドは、自国の工業が壊滅、完全に英国の従属化に置かれてしまったのであった。

このように、自由貿易が必ずしも恩恵をもたらすとは限らない、と小室先生は指摘している。

※もっとも、今ではその米国が英国に代わって自由貿易体制の守護者となっているのだから、歴史というのは皮肉なものである。

 

だが本著が最も面白くなるのは、最後の部分だ。

もし米国が自由貿易をやめたら、どうなるか。

上述の通り、米国はそもそも保護貿易のおかげで強くなれたのだから、また保護貿易へと回帰することは十分に考えられる。

現に保護貿易志向の強いトランプ次期大統領の就任が目前に迫った今、これは非常にリアルな問題設定だーなお、本著が刊行されたのはバブル崩壊から間もない1993年である。

さて、このとき日本はどうすればいい?

ロシアに接近したらいい、と小室先生はいう。

当時(93年)のロシアはまだソ連崩壊から間もない時期であり、経済はどん底だった。そこで日本は、ロシアの法定通貨を日本円とする(!)ことでロシアへの投資を活性化させ、ロシアを事実上の日本の経済植民地にしてしまえばいいという。

ロシアの経済植民地化によって力を蓄えた日本は、当然米国と衝突する機会が増える。第二の日米開戦を回避するために、小室先生はここで“あるアイデア”を提案する。

このアイデアのおかげで第二の日米開戦の危機は回避され、日本経済は米国のそれを圧倒、米国は平和のうちに日本に経済的に併合されるのである。かくして本著の奇妙なサブタイトルの意味がようやく明らかとなる。

 

…って、小室先生、いくらなんでも大風呂敷を広げすぎじゃありませんか?(;^ω^)

 

国民のための経済原論〈2 アメリカ併合編〉 (カッパ・ビジネス)

国民のための経済原論〈2 アメリカ併合編〉 (カッパ・ビジネス)