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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『コストを試算!日米同盟解体』

昨日(3日)、来日中のマティス米国防長官が「尖閣諸島日米安保条約の適用範囲内」と明言、ニュースになった。

トランプ大統領は、選挙期間中、「日韓から米軍を撤退させ、かわりに日韓に核武装させる」という趣旨の発言をした経緯があるため、トランプ政権の対アジア政策は日本政府にとって重大な関心事となっていたのだ。

今回、マティス長官の発言を聞いて、日本の政府要人たちはホッと胸をなでおろしたに違いない。

 

戦後日本にとっての命綱とも言っていい、日米同盟。

仮にこの日米同盟を解消するとしたら、一体どのような結果が日本を待ち受けているのだろう。

この思考実験のための良き材料を与えてくれるのが、今日ご紹介する著書『コストを試算! 日米同盟解体』毎日新聞社だ。

著者は、防衛大学教授の武田康裕、武藤功両氏。

武田氏は国際政治学、武藤氏は理論経済学がそれぞれ専門。政治学のプロと経済学のプロがタッグを組んだ結果、生まれたのが本著というわけだ。

 

本著は日米同盟を経済的観点から考察した、一風変わった書物である。

日米同盟をテーマとした本、というと、「現下の屈辱的な対米従属体制から脱して、民族の誇りを…云々」とか、「基地のない平和な沖縄を実現し、憲法9条を堅持、アジア諸国との友好を…云々」とかいった話になりやすい。

一方、本著は、あくまで論理と客観的なデータを前提に議論を進めているのが特徴だ。もっともそのせいで、読んでいて眠くなる、という人もいるかもしれないが…(;^ω^)

そのため、日米同盟に肯定的な人でも否定的な人でも、「フムフム」と興味深くページをめくることができるだろう。

 

タイトルに「コストを試算!」とあることから分かるように、本作のメインテーマは日米同盟のコストを試算することである。

そのコストには、直接的なコストだけでなく、間接的なコストも含まれる。間接的なコストというのはたとえば、沖縄の米軍基地が存在しないときに、跡地利用などで経済効果が1兆6000億円超も生まれる、といった話がそれである。

日米同盟を解消した場合、このようにメリットも生じる一方で当然ながらデメリットも生じる。さまざまな分野において、そうしたメリット、デメリットを考察するのが本著の特徴だ。

この場合の「さまざまな分野」というのは、たとえば貿易、株・国債・為替、エネルギー、等々である。このような観点から日米同盟を考察した書物というのは、たぶん本作がはじめてなんじゃないかな。

 

さて結局のところ、日米同盟は必要なのか不要なのか。本著の下す結論は、やはり日米同盟は自主防衛(日本の国防を日本だけでやる)と比べてコストが低い、したがって日米同盟維持が好ましい、というものだ。

しかしながら単なる現状維持というわけでもなく、日本はもっと防衛費を増額するかわりに在日米軍に対する経済的負担(いわゆる「思いやり予算」とか)を減額すべき、というのが本著の提言である。

もちろん、こうした結論に不満がある人もいるだろう。だが、先ほども書いたとおり、本著はイデオロギッシュな主張ではなく、論理と客観的なデータをもとに書かれた本だ。何かを主張する本というよりかはむしろ、議論の前提を提供する本なのだ。

まずは本著を読み、そのうえで日米同盟について賛成・反対の議論をするのが望ましい。

 

本著には、専門用語が多数出てくる。したがって、軍事に関する知識がかなりないと、本作の内容をすべて理解するのは困難と思われる。

残念ながら、戦後日本には軍事学に関する知識が乏しい人があまりにも多い。それはなにも戦後日本人がバカだからというわけではない。大学などの高等教育の場で軍事学を教えないからだ。

「大学で軍事学の講座を開くだなんて! まるで軍靴の足音が聞こえてくるようだ!」などとトンチンカンなことを言う左翼が、この国にはいまだにいる。

違う。軍靴に蹂躙されないように、軍隊のシビリアンコントロールを徹底するためにこそ、まず我々文民(シビリアン)が軍事について学ぶべきなのである。

 

コストを試算!日米同盟解体

コストを試算!日米同盟解体