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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『ユーロの正体 通貨がわかれば、世界が読める』

上念司さん、片岡剛士さんとならんで、僕が一目置いている経済評論家に、安達誠司さんがいる。

今回ご紹介する『ユーロの正体 通貨がわかれば、世界が読める』幻冬舎新書は、2009年以降に顕在化したユーロ危機について大変わかりやすく解説してくれる著作だ。

※本著が刊行されたのは2012年

 

ギリシャにおける経済危機の際、わが国の多くのメディアは「これは対岸の火事ではなく、日本もいずれギリシャのような財政危機を迎える」とセンセーショナルに報じた。これが時の民主党政権が消費税増税を決定した一因となったともいわれる。

ギリシャが財政危機に陥ったのは事実だが、それはメディアが言っていたような「放漫財政が生んだ、財政赤字の問題」なのだろうか。

安達さんによれば、これは原因と結果を倒錯した議論だという。ギリシャをはじめとするユーロ圏の財政赤字問題は、結果であって原因ではない。では真の原因は何か。

 ≪ユーロ圏の財政危機は、不動産バブル崩壊後に金融機関の抱える不良債権問題が深刻化する中、ユーロ導入によって各国の金融政策が縛られ、抜本的な経済の修復策が制度的にとられなかったことに起因します。

 そして金融機関の破綻を回避するために、経営破綻の危機に瀕した金融機関を、財政資金を使って救済せざるをえなかったために起こったことでした。≫(213‐214頁)

 

ギリシャの財政危機を日本にとっての教訓とする考えは、誤りである。

安達さんは≪金融緩和政策を行えない(あるいは行われない)状況下で、さらに財政政策を絞る緊縮的財政運営は、“悪夢的状況”である≫(214頁)とし、≪日本の長引くデフレの状況下で、さらに緊縮的意味合いを帯びる消費税増税という策は、日本にとって悪夢的政策ではないのかという疑問が浮かぶのは、至極真っ当な話≫(同頁)であるとして、時の民主党政権を批判する。

日本を救うはずの消費増税が、むしろ日本を奈落の底に突き落とす皮肉な結果になるというわけなのだ。

 

それにしても安達さんの解説のわかりやすいことわかりやすいこと!

文体も平易であるし、たとえば「ブレトンウッズ体制」なる用語が出てくると、いったん欧州経済の話から離れて、このブレトンウッズ体制について説明してくれるのである。

さらに、章が変わると、これまでの議論の流れを箇条書きのかたちでまとめて再提示してくれる。それも、重要な箇所は太字で表記してくれるというオマケつきだ。

まるで予備校の名物講師の書いた入試参考書のようではないか!

経済のことがイマイチよくわからず苦手意識を抱いていた僕も、本著を読んで「あぁ、そういうことだったのか!」と膝を打ったことが何度もあった。

 

トランプ政権が「爆誕」し、世界がますます混迷を深めつつある現在。難しいことをわかりやすく解説してくれる安達誠司さんの経済評論家としてのバリューは、ますます高まっている。

今後も、彼の著作をフォローしていきたいと思う。

 

ユーロの正体 通貨がわかれば、世界が読める (幻冬舎新書)

ユーロの正体 通貨がわかれば、世界が読める (幻冬舎新書)