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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『円高の正体』

今回ご紹介するのは、わかりやすい解説に定評のある経済評論家・安達誠司さんによる、円高解説本だ。

 

「てゆーか、そもそも円高って、何?」「ど~いう人にとって得で、ど~いう人にとって損なの?」というヒジョーに初歩的なレベルから解説をしてくれる。「経済のことはさっぱり…」という初学者の方には、ぴったりの入門書だ。

反対に、経済のことはすでにある程度わかってるよ、という方は「えー、そんなところから解説始めるのかよ…」と少々まどろっこしく感じるかもしれない。

 

本著を読んでいて「あ、面白いな」と思ったのが、いわゆる韓流デモに関する箇所だ。

円高に関する本なのに唐突に韓流の話題になるのもなんだか意外な感じがするが、読み進めていくと決してそうではないことがわかる。

≪韓国の通貨であるウォンと円のレートは、2007年ぐらいから趨勢的な円高傾向が続いています。そのため、韓国からの輸入品の一つである韓流ドラマなどのテレビコンテンツの価格が相対的に割安になっているのです。

 日本のテレビ局も御多分にもれず、長引く不況の中で業績が悪化し、かつてのように多くの予算をかけた番組がつくれなくなっています。そこで、安い韓国のコンテンツを買ってきて流そうとテレビ局の人間が考えたとしても、何も不思議なことではありません。≫(58頁)

なるほどそうだったのか! と読んでいて思わず膝を打ったのだった。

 

さて、ここで右派の人にひとつ質問をしたい。

円高は、日本にとって良いことか、否か。

「うーん、良いことかなぁ」と思ってしまう人が、右派には意外と多いのではあるまいか。

円高、つまり円が高いとは円の「価値が高い」ということだし、この場合の「高い」は英語で言えばstrongだ。

自国の貨幣がstrongだというのは、ナショナリストにとってはなんとも誇らしいことではないか!

 

…と思ってしまった右派の方、残念ながら「ブッブー」である。

安達さんは本著のなかで、円高がいかに日本社会にデメリットをもたらすかを丁寧に説明していく。

いや、個人個人のレベルで見ればーつまりミクロの視点ではー円高で得をする人もいるにはいるのだが(外車ディーラーとか)、日本は輸出産業を基幹産業とする国であるからして、日本社会全体で見るとーつまりマクロの視点ではー円高は損、という結論になるのである。

 

ゆえに、真に日本の国を憂うのならば、円安をこそ歓迎すべきなのである!

 

…さてさて。さきほど「うーん、円高のほうが良いことかなぁ」と思ってしまったナショナリストのそこのアナタ! 安心してください、決して恥ずかしい間違いではないのですよ。

実をいうと、なんと日銀総裁も過去にまったく同じ間違いをしていたからなのだ!

安達さんは本著66ページにおいて、かつて日銀総裁などを歴任した速水優(1925‐2009)の著書『強い円 強い経済』東洋経済新報社のなかから、彼が円高を礼賛している箇所を引用している。孫引きになってしまうが、以下にご紹介したい。

≪通貨は強くて安定し、使い勝手のよいことによって信認を得るのであって、先進諸国の中央銀行では、皆このような通貨の強さを目指している。そして、その国の通貨の強いことがその国の国力や発信力に直接、間接に影響を持つのである。≫(『強い円 強い経済』154頁)

なんと、日銀総裁ともあろうお方が、上に挙げた初歩的な間違いを犯していたのだ!

であるから、一般人である皆さまは、なんら恥ずかしがる必要はないのである。

もっとも、経済・金融のプロともあろう方々にとってはなんとも恥ずかしい間違いであるが…。

 

円高の正体 (光文社新書)

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