Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『帰ってきたヒトラー』

なんでも、ヒトラーの生家の近くで、彼のそっくりさんが逮捕されたのだそうな。

 

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このニュースを見て、映画『帰ってきたヒトラー』を思い出してしまったのは、僕だけではないはずだ(いや僕だけかな?w)

帰ってきたヒトラー』は、タイトルのとおりヒトラーが現代のドイツに蘇り、「ヒトラーのそっくりさん」と勘違いされて一躍ネットの人気者になってしまう、というお話。以前、このブログでも取り上げたことがある

 

今日取り上げたいのは、映画ではなく、原作である小説のほうだ。

ヒトラーが現代に蘇ってネット界の人気者になる、という基本的なプロットは映画版と大差ないものの、キャラクターの設定や終盤のストーリー展開などについては、意外にも違いがある。

 

キャラクター設定が最も違っているのは、『帰ってきた~』のもうひとりの主人公ともいうべき、ザヴァツキ青年だ。映画版のほうではぶっちゃけ冴えない非モテ男っぽい感じだったのに、原作のほうでは結構優秀でヒトラーからも一目置かれる存在として描かれていて、ちょっぴりビックリ(^^;)

 

ストーリーのほうはどうか。

原作では、映画版では描かれなかった、ヒトラー緑の党の党首との会談の模様や、現代のオクトーバーフェストの退廃ぶりを見てヒトラーが幻滅する場面などが描かれていて、興味深かった。

映画版でも一応描かれてはいたが説明不足だった箇所も、原作ではよりわかりやすくなっている。

たとえばヒトラーが現代のネオナチ政党であるドイツ国家民主党の本部を電撃訪問するシーンでは、どうしてヒトラーが同党の名称にある「民主」の部分に反発するのか、イマイチわかりにくかった。その点、原作ではちゃんと説明がなされている。

もちろん、映画版と原作とでまったく同じという場面もある。ヒトラーwikipediaを、Enzyklopädie(百科事典)とWikinger(ヴァイキング)を組み合わせた造語だと勘違いして勝手に感激する場面などは映画でも原作でもおんなじで、どちらでも笑ってしまったw

 

…え、何? 映画版と原作、どっちが好きかって?

うーん、難しい質問だけど、「どちらも好き」でいいんじゃないかなw

結末に関して言えば、僕は原作のほうが好きなんだけど、じゃあ映画版はどこがいいのかというと、ドキュメンタリーの手法を取り入れているところ。

あの映画を見るとわかるけど、アレって明らかに台本ないですよね? ヒトラー(役の俳優さん)がじかに一般市民と接しちゃってますよね。

そしてその結果、市民たちから「ぶっちゃけ移民ウザイ」という本音を引き出すことにみごと成功している。

さらに、原作は「今のドイツにヒトラーが現れたら、ドイツ人たちは絶対(恐れるのでなく)笑ってしまうはずだ」と思考実験しているんだけど、映画版ではそれが完全に実証されちゃってるんですよね。

だから『帰ってきた~』は、原作もすごいし、映画版もすごいのです。ベタな結論で恐縮ですが…w

 

さて、 本作が本国ドイツで刊行されたのは2012年のこと。それから5年たって、欧米では確実に右翼の勢いが強まってきている。

今年の4~5月に行われるフランス大統領選では、極右政党「国民戦線(FN)マリーヌ・ルペン党首が当選する可能性が十分にありうるとされており、世界の関心を集めている。

昨年は、英国のブレグジット(EU離脱)と米国のトランプ政権爆誕というまさかのニュースが立て続けに起き、世界をあっと言わせた。

これから世界は、ある意味では1930年代へと回帰するのだろうかーそう考えると、本著の刊行は本当に絶妙のタイミングだったと、思わずため息が漏れそうになる。

 

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫)

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫)

 
帰ってきたヒトラー 下 (河出文庫)

帰ってきたヒトラー 下 (河出文庫)