Furusawa Keisuke's blog

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書評『韓国化する日本、日本化する韓国』

最近つくづく思うことだが、いわゆる「ネット右翼」は、ある意味では勝利したと言えるのではないだろうか。

 

…こう反論されるに違いない。いわゆる「ネット右翼」の代表的人物とされる桜井誠氏は、2016年夏の東京都知事選で落選したではないか、と。

確かにそうなのだが、彼らの主張はより希釈されたかたちで、日本社会を覆う空気(ニューマ)となった、と言えるのではないか。

その証拠に、「嫌韓」の風潮が日本社会に完全に定着したことが挙げられる。

00年代にあれほど「キャーッ! ヨン様~!♡♡」と騒いでいたのがウソのように、いまや「韓国ウザくない?」「何を考えてるか分からない、気持ちの悪い国だよね」という会話が当たり前のように交わされるようになった。

データを見ても、2012年の李明博大統領(当時)竹島訪問を境に、韓国に親しみを感じないと答えた日本人の割合が、感じると答えたそれを逆転。以降、若干の変動はあれど、その趨勢は変わっていない内閣府「外交に関する世論調査」より)

 

日本の前に立ちはだかるメンドクサイ隣人・韓国。我々は彼らと、どう接すればいいのだろう。

今、twitter上で韓国ウォッチャーとして注目と人気を集めているのが、政治学者の浅羽祐樹・新潟県立大教授だ。

韓国の国内事情を冷静に解説することで定評がある一方、ネクタイを結べないことを自虐ネタとして売りにするなど、そのユーモアも人気の一因となっている。

そんな浅羽教授による、いささか挑発的なタイトルの著作が、今回ご紹介する『韓国化する日本、日本化する韓国』講談社だ。

 

この本の論点は、複数にわたっている。

たとえば慰安婦問題における、韓国の対外戦略のうまさ。

この場合の「うまさ」というのは、韓国がいかに自らの主張を国際社会に納得させるのに長けているかという意味であって、韓国側の主張が正しいという意味では必ずしもない点にご注意。

そして浅羽教授は、現在の日本の、とくに保守派のアプローチの仕方ー「うちだけじゃなく、よそもやっていた!」みたいなーでは、女性の人権問題に関する意識が世界的に高まった今日、かえって海外の反発を強める結果にしかならない、と指摘している。

 

韓国人はなにかと「位相」(위상)という言葉を多用する、という話も興味深かった。

これは、韓国人があらゆることを一種のカースト制度として理解するのと関係している。

大学にせよ企業にせよ、韓国社会ではありとあらゆるものに「カースト」がある。大学であれば最上位はソウル大であり、企業であればそれはサムスンである。

韓国人はつねに、自らの所属する大学、企業がカーストのなかでどのランクにあるかを意識しており、そのランクのことを「位相」と呼ぶのである。

これは、前近代において東アジアが中国を頂点とする華夷秩序(国のカースト制度)のもとにあり、朝鮮はつねにそのなかでのランクを意識してきたことに由来する、と浅羽教授は見ているようだ。

 

浅羽教授はなるべく、韓国の国内事情に起因していて日本からはなかなか見えづらい、韓国人の行動を規定する独自の論理佐藤優氏なら「内在的論理」とでも呼ぶのだろうかーを把握しようとする。

ゆえに、そのスタンスはいわゆる「嫌韓本」のそれとはだいぶ異なる。

韓国が嫌いな読者ーと言っても今の日本人の大半なのかもしれないがーのなかには「なんだ、この浅羽とかいうヤツは韓国の肩ばかり持ちやがって!さては朝鮮人だな!」と反発を抱く人もいるに違いない。

僕自身、本著を読んでいて、必ずしも共感するばかりではなく、反発を抱くこともあった、と正直に告白しておく。

が、それこそがむしろ、韓国ウォッチャー・浅羽祐樹の本領なのだろう。

既存の左右とは違って、日本にも韓国にもどちらにも「媚びる」ことなく、一歩引いた冷静な視点から両国を見つめなおすーそれが、彼の人気の所以なのである。

 

これから先、日韓関係がこじれるたびにーしょっちゅうだろうがーメディア上で彼の姿を見かける機会が増えることだろう。…もっとも、それはネクタイを締めなければならない機会が増えるという意味でもあるので、ご本人はフクザツな心境かもしれないが。

 

韓国化する日本、日本化する韓国

韓国化する日本、日本化する韓国