Furusawa Keisuke's blog

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書評『最新 惑星入門』

自然科学はどれも日進月歩で進歩しているものばかりだが、そのなかでもとりわけ長足の進歩を見せているのが、天文学だ。

つい先日も、地球と似たような環境にあると考えられる太陽系外惑星が一挙に7つも発見されるというニュースが報じられたばかりだ。まだみなさんのご記憶にも新しいことだろう。

 

今日ご紹介するのは、われらが太陽系に関する最新の知見を盛り込んだ、タイトルもずばり『最新 惑星入門』朝日新聞出版)だ。

著者のひとりは、天文学者にして国立天文台副台長というエラ~イ人でもある、渡部潤一さん。

メディア上での露出も多く、これまで天文学の一般社会への普及に尽力してきた人物である。

また、冥王星の地位に関する議論のため設置された「惑星定義委員会」(←何なんだろう、このめっちゃ中二病精神をそそられるネーミング)に、アジアから唯一メンバーに選ばれたという、めちゃくちゃスゴイ人でもある。

渡部さんはこれまで多くの著作を上梓してきたが、さすがに多忙のためか、この本は単著ではなく、サイエンスライターにして奥様(!)でもある、渡部好恵さんとの共著となっている。

 

惑星科学の入門書の多くがそうであるように、本著もまた惑星に関する解説から始まる。

だが乱暴に言ってしまえば、惑星の解説なんてのは、だいたいどの本でも決まった内容なのである。たとえばこんなふうに↓

「太陽系には、8つの惑星があります。水星、金星は灼熱の惑星であり、地球は唯一水を湛えた奇跡の惑星、そして火星は、今でこそ乾燥していますが、かつては水が存在していたことが分かっています。

 火星より外側には、木星をはじめとする大型のガス惑星があり、木星の周りには4つの衛星が回っていて、土星にはご存じのとおり美しいリングがあり…」

…とまぁだいたいこんな感じで解説がなされるのが常である。

天王星海王星に関しても、まぁ一応解説はされるのだが、これらは他の惑星と比べてまだあまり研究が進んでいないため、リングや衛星についてざっと説明して、ハイおしまい、というパターンが多い。

本著もまた、ご多分に漏れずこんな感じなので、天文学に関してすでにある程度知識のある方は、本著の惑星に関する箇所は読み飛ばしてしまっても差し支えないかと思うw(;^ω^)

 

意外に思われるかもしれないが、本著が本当に面白いのは、むしろ惑星ではない天体についての説明である。

具体的に言えば、太陽系小天体および太陽系外縁天体に関する説明がとても充実しており、それが本著の一番の魅力となっているのだ。

 

太陽系小天体(SSSB;Small Solar System Body)というのはなにやら聞き慣れない言葉だが、2006年に冥王星が「格下げ」された際についでに新設された、天体の新しいカテゴリーである。

太陽の周りをまわっていて、球形になれるほどには大きくない天体がこれに分類されており、たとえば小惑星や彗星、それに惑星間塵などがこれに該当する。

とくに惑星間塵というのは、正直、僕もあまりよく分からない分野だったので、今回この本を読んで、とても勉強になった。

 

もうひとつ、太陽系外縁天体(TNO;trans-Neptunian Object)について。

これは、海王星(Neptune)のさらに向こう側(trans)に存在する天体のことで、惑星から除外されてしまった哀れなる冥王星くんも、今日ではこれに分類されている。

冥王星はこれまでずっと謎の多い天体であったが、2015年に探査機「ニューホライズンズ」がフライバイ(接近探査)したことで、ようやくその詳細が明らかになった。

冥王星に関する最新の知見を盛り込んでいるのが、2016年に刊行された本著の最大のセールスポイントとなっている。

たとえば冥王星に関する以下の記述は、我々読者をドキドキさせるのに十分であろう。

≪探査機の画像からは、はるか昔、大気が多くて、温度が高かった頃にできたと考えられる、液体窒素の湖跡も発見されています。

(中略)

冥王星の山々の正体は、巨大な氷(水)の塊であり、窒素が凍った氷の「海」に浮いている状況のように思われます。窒素や一酸化炭素の氷の海に比べて、水の氷は密度が低いので、その「海」から頭を出して浮かんでいるらしいのです≫(243頁)

本著ではさらに、現在捜索が進められている仮説上の太陽系第9惑星プラネット・ナイン」についても、少しではあるが、解説されている。本著の著者たちも、プラネット・ナインの存在可能性に期待しているようだ。

 

冒頭でも書いた通り、天文学は日進月歩で進歩している。みなさんがまだ子供だったころとは全く異なる太陽系像が、現在、天文学者によって描き出されているのだ。

みなさんもぜひ本著を読んで、頭のなかの太陽系像をアップデートしてほしい。

 

最新 惑星入門 (朝日新書)

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