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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『レモンをお金にかえる法』&『続・レモンをお金にかえる法』

子供向けの絵本は、ときに大人向けの一般の書物以上に、読者に効用を与えることがある。

平易な言葉で書かれており、それでいて物事の本質をよく捉えているので、我々大人が読んでも、面白く、ためになるのだ。

断じて、子供向けの絵本だからなどという理由で、バカにしてはならない。

 

本日取り上げるのは、子供向けに書かれた経済学の入門書『レモンをお金にかえる法』、およびその続編である『続・レモンをお金にかえる法』(ともに河出書房新社だ。

 

『レモンをお金にかえる法』は、主人公の女の子が、レモンを加工してレモネードにして売るという商売を始め、きちんと利益を上げるところまでを描いた絵本である。

レモネードというのは、我々日本人にはあまり馴染みがないが、米国では非常にポピュラーな飲み物であり、日本人にとっての麦茶のような、ごく身近な存在である(のだと思う)

本作は、そんな身近な飲み物で女の子が商売を営むというお話なのだが、「資本貸付け」「資産の流動化」といった経済学の用語が唐突にポンと出てくるのには、いささか驚いた。

もちろん本文でちゃんと説明がなされているので、頭のいい子供ならばこれらの言葉の意味をきちんと理解することができるだろう。

こうして子供たちはこの絵本を通じて、すんなりと経済学の世界へと入門することができるのである。

 

新装版 レモンをお金にかえる法

新装版 レモンをお金にかえる法

 

 

では引き続いて、『続・レモンをお金にかえる法』に移るとしよう。

 

多くの子供たちが、自分なりの商売を営んでいる。その「経済圏」の中核にいるのは、前作の主人公の女の子が経営するレモネードの屋台だ。

ところがある年、不作によりレモンの値が急騰してしまった。こうなっては、レモネードの値段も上げざるを得ない。

子供たちにとっての必需品であるレモネードが値上がりするとなると、子供たちの経済圏における賃金や物価もまた、必然的に上昇していく。

かくして子供たちの経済圏は、たちまちインフレに陥ってしまった。経済危機の到来である。

 

この未曾有の危機から救ってくれたのは、子供たちの親と思しき「おとなたち」であった。

この「おとなたち」、当然子供よりかは経済のことをよく知っているので、子供たちに経済危機を解決する方策をいろいろと教えてくれる。

彼らの助言ー失業保険、新規の雇用創出、中小企業救済のための貸付、等ーは見事功を奏し、子供たちの経済圏は危機から脱することができたのであった。めでたしめでたし。

 

…いうまでもなく、これはケインズ経済学のアウトラインだ。

経済に明るく、子供たちに助言をくれる「おとなたち」は、明らかに経済学者のメタファーだろう。

当然ながら、絵本のなかには「ケインズ」の「ケ」の字も出てこない。それでも子供たちは、この絵本を通じてケインズ経済学の要諦を理解することができるのである。

 

このように見てみると、『レモンをお金にかえる法』はミクロ経済学、『続・レモンをお金にかえる法』はマクロ経済学の入門書であったことも分かってくる。

まだ幼いうちからこういう良質の入門書を読める子供たちは、幸せ者だ。

 

新装版 続・レモンをお金にかえる法

新装版 続・レモンをお金にかえる法