Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『この世で一番おもしろいマクロ経済学』

先日は、子供向けの絵本でありながら優れた経済学の入門書でもある『レモンをお金にかえる法』およびその続編『続・レモンをお金にかえる法』をご紹介した。

でも、「…いくらなんでも、大の大人が絵本だなんて、やっぱり恥ずかしいよ…」というシャイな方も当然いらっしゃることだろう。

うんうん、そんな恥ずかしがり屋さんの、そこのア・ナ・タ! 

これからご紹介する、ヨラム・バウマン著『この世で一番おもしろいマクロ経済学ダイヤモンド社から経済学の勉強を始めてみてはいかが?

 

本著の英語での原題は"The Cartoon Introduction to Economics"である。

Cartoon(欧米の漫画)とあることから分かるように、本著の売りは、マクロ経済学を漫画で解説してくれるところにある。

翻訳したのは、山形浩生さん。

山形さんは、≪大手調査会社に勤務するかたわら、科学、文化、経済からコンピュータまで、広範な分野での翻訳と執筆活動を行う≫(訳者紹介より)という、なんともスーパーマンのような方である(;^ω^)

ひと昔前にずいぶんと話題になった、トマ・ピケティ『21世紀の資本』みすず書房も、この山形さんが主に翻訳を手掛けたのである(っていうか、ピケティって、皆さんまだ覚えてます?w)

 

本著は、マクロ経済学の解説書である。

経済学は、周知のように、古典派経済学とケインズ経済学のふたつに大別される。え、マル経? バカじゃねーの

本著は、多くの論点において両論併記の形式をとっており、著者が中立性に結構気を使っていることが分かる。

もっとも、漫画という性格上、ときには結構ブラックなジョークもちりばめられており、本著に適度なスパイスを与えてくれている。

≪もちろん、子どもの行動すべてが親の責任じゃない。

「わしは電卓も使えないのに……」「うちの子は数学の天才だ!」

「リズム感なしのオレの娘は……」「すごいダンサーだぜ。」

「あたしは虫も殺さないのに……」「うちの子は死刑囚よ!」≫(75頁)

 

さて、著者がおそらく本著のなかで最も訴えたかったこと、それは貿易はゼロサムゲームではないということだ。

ゼロサムゲームとは、富が有限であるなかで、その富を奪いあい、結果、誰かが得をすればそのぶん誰かが損をする、という状態を指す。

プラス(得)とマイナス(損)の総和(サム)がゼロになることから、ゼロサムゲームと呼ぶわけだ。

ゼロサムゲームは、現在でも人々の思考を支配していることが多い。

たとえばトランプ大統領の貿易に関する発言を見ていくと、彼がどうやらゼロサムゲームの発想で世界を捉えているらしいことが分かってくるのである。

ところが本著は、貿易は“短期的には”確かに勝ち組も負け組も生みだすものの、長期的に見れば人類全体を幸せにする―本著の表現を借りるなら「万人にとってかなりすごい」ーというのだ。

 

貿易は、技術革新に似ているという。

技術革新によって、短期的に見れば確かに失業者は発生した。だが誰も、産業革命の始まった18~19世紀のままで良かったなどとは言わないはずだ19世紀のままでは、こうやってブログを公開することすらできない!)

技術革新がなんだかんだで人々を幸せにしたように、貿易もまた、なんだかんだで人々を幸せにするのである。これが、貿易はゼロサムゲームではない、という言葉の意味だ。

 

「TPPがわが国の農業を破壊する!」といった主張から分かるように、わが国の保守派には、貿易はゼロサムゲームだと考える人が多い。

かくいう僕自身、以前はTPPのせいで日本の産業が破壊されちゃったらイヤだなぁ…と漠然とした不安を抱いていた。

だが、経済学を勉強していくうちに、「…アレ? TPPって、実はそれほど怖いもんでもないんじゃねーの…?」と、少しずつではあるが、考えを改めるようになった。

もちろん、むやみに自論を変えるのは褒められたことではないだろう。だが、勉強するにつれて意見が変わってくるというのは、実は意外とよくある話でもある。

 

経済学関連の本を読み漁っていくことで、今後もさらに意見が変化していくのかもしれない。

こういう風に、意見がまるで生き物のようにどんどん変化していくというのも、また読書の醍醐味のひとつなのかもしれない。

…もっとも、あんまり変わりすぎるのも問題だろうけど(;^ω^)

 

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講