Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『佐藤優の10分で読む未来 新帝国主義編&戦争の予兆編』

いやはや、時評なるものを書ける評論家さんって、すごいね。

評論家の先生の時評を読んでいると、おびただしい量の情報が脳みそのなかに洪水のように流れ込んできて、頭がクラクラしてくる。

しかしそれは同時に、心地よい疲労でもある。

 

今日ご紹介する『佐藤優の10分で読む未来』講談社は、元外交官にして作家の佐藤優さんによる時評だ。

新帝国主義編』と『戦争の予兆編』の2冊が刊行されており、今回は2冊まとめてご紹介することとする。

これらの著作は、ただの時評ではない。佐藤さんのメールマガジンの一部を書籍化し、さらには彼がコメンテーターとして出演しているラジオ番組でのトークも活字化したものなのだ。

したがって、ひとつの本のなかでも、硬質な書き言葉で書かれた箇所もあれば、親しみやすい話し言葉で書かれた箇所もある。こうした一種ポリフォニックな構成も、読んでいて(いい意味で)頭がクラクラしてくる原因のひとつだ。

 

新帝国主義編』および『戦争の予兆編』は、2013年から2014年にかけての時評だ。第2次安倍政権の初期にあたる。

俎上に載せられるテーマは、ロシアによるクリミア半島併合や安倍・プーチン北方領土交渉、沖縄基地問題などである。ウィキリークスで世界を騒がせた「スノーデン事件」も取り上げられている。

いうまでもなくこれらは、沖縄にルーツを持ち、かつて外務官僚として対ロシア外交で活躍した佐藤さんにとっての、十八番といえるテーマだ。

…正直に告白してしまうと、僕は佐藤さんの経済ニュースに関するコメントには、いささか疑念を抱いている。彼がマルクス経済学という(僕に言わせれば)カビの生えた古い経済学に依拠しているのがその理由だ。

だが国際情勢の話になると…やっぱり“ご本職”はさすがですね! 読んでいて、とても勉強になる。ときにはまるでスパイ映画を見ているような気分にさえなって、ハラハラすることもある。

普段から「なんだ、いつも“遺憾の意”ばかりじゃないか!」というので無能無能と言われている日本の外務省も、裏では意外と健闘していることも分かって、僕にとっては収穫だった。

 

佐藤さんのメルマガから転載された部分は「佐藤コメント」としてまとめられている。非常に簡潔で、無駄のない文体だ。

以前このブログでも取り上げた『共産主義を読みとく いまこそ廣松渉を読み直す(世界書院)で、佐藤さんは、自分には文体がない、強いて言うなら外務官僚時代に叩きこまれた報告書のスタイルが自分の文体だ、と言っていた。これがその「自分の文体」なのだろう。

「佐藤コメント」を読んでいると、僕自身の文体まで影響を受けてくるー古代ギリシャ思想でいうところのミメーシス(感染的模倣)というやつだ。不思議なものだね。

 

皆さんも、まるでお酒を飲んで酔うように、佐藤さんの時評を読んで酔ってみてはいかが?

 

佐藤優の10分で読む未来 キーワードで即理解 新帝国主義編

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佐藤優の10分で読む未来 キーワードで即理解 戦争の予兆編

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