Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『国家の「罪と罰」』

先日に引き続いて本日も、元外交官にして作家の、佐藤優さんのインテリジェンス・国際外交に関する著作をご紹介するとしよう。

『国家の「罪と罰」』小学館である。

 

この本は、先日ご紹介した『私の「情報分析術」超入門』徳間書店と同様、雑誌での連載をまとめて書籍化したものである。

もっとも、本著では佐藤さんならではの「口撃」は抑え気味となっている。

「陰嚢のシワを伸ばしてよく聞け」といった、思わずギョッとするような表現や、ボロクソに言った後で「もっと厳しい言い方もあるが、あえてソフトな表現にとどめておく」といった皮肉たっぷりの表現は、本著ではあまり見ることはできない(ちぇっ!)

 

例によって、本著のなかで面白いと思った箇所をいくつか挙げてみる。

僕にとって新鮮な発見だったのは、北海道新聞の重要性である。

北海道新聞は、その名の通り北海道を拠点とする地方紙である。

ロシアのクレムリン(現在の大統領府)は、ソ連時代から、この北海道新聞を通じて重要情報を日本側に流してきたという。

どうしてわざわざ地方紙に情報を流すのか。

在京の大手紙だと大きな反響を呼んでしまい、ロシアソ連側の思惑通りに事態が運ばなくなるおそれがあるからである。

こうした事情を知っているため、日本のロシア通の政治家や有識者たちは、日頃から北海道新聞のロシア関連の記事を注意深く観察しているのだという。

地方紙だからといって、決して馬鹿にはできないのだ。

 

北方領土交渉のやり方を沖縄返還から学ぶ、という箇所も面白かった。

返還前の沖縄は米国領だったと誤解されがちだが、実際には日本が「潜在主権」なるものを有していたのである。

この「潜在主権」という概念を北方領土交渉にも応用できないか、というのが佐藤さんのアイデア

まず、歯舞、色丹の2島を返還してもらい、国後、択捉については、当面はロシアによる統治を認めるかわりに、これらの島には日本に潜在主権があるのだということをロシア側に認めさせる。

これならロシアが国後、択捉二島を“事実上”領有したままだが、“形式上”は日本の領土だといえるので、日本は晴れてロシアと平和条約を締結することができるのである。

なかなかに、興味深いアイデアだと思った。

 

「四島返還! 四島返還!」とただただオウムのように繰り返すばかりでは、事態はなにも進展しない。

従来の固定観念にとらわれない柔軟なアイデアが、今こそ求められているのである。

 

国家の「罪と罰」

国家の「罪と罰」