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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『地球外生命 われわれは孤独か』

先日、土星の衛星エンケラドゥスにて水素が検出されたというニュースを取り上げた

水素があれば、微生物がこれをエネルギー源として活用し、生命活動を維持できる可能性がある。地球外生命存在の可能性が出てきたわけだ。

太陽系だけではない。今年2月、TRAPPIST-1という赤色矮星にて地球サイズの系外惑星が7個発見された。

そのうちの3個は、水が液体として存在できる「ハビタブルゾーン」に位置していると考えられており、生命が存在する可能性すらある。

 

従来はSFのなかの存在にすぎなかった地球外生命が、いよいよ発見される可能性が高まってきた。

今日ご紹介する本は、『地球外生命-われわれは孤独か』岩波書店

生物学者の長沼毅さんと、天文学者の井田茂さんによる共著である。井田茂さんについては、先日このブログでも著書を取り上げたばかりだ

 

本著は大まかに、ふたつのパートに分けられる。

前半ではまず長沼さんが「そもそも生物とは何か」について解説。後半、井田さんが地球以外で生命が存在しうる天体をひとつひとつリストアップし、それぞれの星における生命存在の可能性を議論していく。

 

前半の長沼さんの解説のなかで驚いたのが、地球生命は火星起源の可能性あり、という箇所だ。

地球には今でこそ複数の大陸が存在しているが、誕生当時は一面、海洋で覆われていたと考えられるという。

大陸がないと、さてどうなるか。

大陸からは生命にとって必要なミネラルが、雨や川などの作用により海洋へと流れ込んでおり、これが生命を生む原動力となった。

もし大陸がなければミネラルは海洋に流れ込まず、生命の誕生は難しくなったかもしれないのだ。

一方、太古の火星には液体の水が存在したことが確実である。しかも地球ほど量は多くなく、海というよりかは浅瀬のような環境であったと考えられるという。

このような環境ならば、ミネラルが水中へと豊富に流れ込み、生命が誕生する可能性だって十分に考えられるのだ。

 

かりに、このように火星で生命が誕生したとして、ではどうやって生命は地球へと「惑星間旅行」をしたのだろう。

それは、隕石である。

火星の岩石が、隕石というかたちで地球へと飛来したのだ。その隕石のなかに生命が潜んでいれば、彼らは地球へと無事到着することができる。

なんだか夢物語のようにも思えるが、火星由来の隕石は実際に地球で見つかっている。

可能性は、十分にあるのだ。

現在、実業家のイーロン・マスク氏が火星への有人飛行計画を提唱しているが、もしこの生命火星起源説が正しいとするなら、彼は火星に「行く」のではなく、「帰る」と表現したほうが適切なのかもしれない。

 

後半では井田さんが、太陽系において生命の存在しうる天体ーすなわち火星、木星の衛星エウロパ、ガニメデ、そして土星の衛星タイタンとエンケラドゥスについて解説していく。

やはり今話題のエンケラドゥスが、このなかでは最も生命存在の可能性が高いようだ。

≪エンケラドスには、液体の水、有機物、熱源という生命に必要と考えられる条件がそろっています。このような三拍子そろっている天体は、地球以外では今のところエンケラドスしかありません。エンケラドスこそ、地球外生命探査の大本命ーーそう考える人もたくさんいます。≫(143頁)

一方、もうひとつの土星の衛星タイタンでは、水ではなく液体メタンを触媒として生命が誕生する可能性が考えられるという。個人的にはむしろ、こちらのタイプの生命のほうが見てみたいな、と思う。

 

井田さんはさらに、太陽系を飛び出して、前述のTRAPPIST-1系のような惑星系についても、生命存在の可能性を検討する。

TRAPPIST-1のような赤色矮星では、惑星はそのすぐ近くを周回していると考えられー実際、TRAPPIST-1系はそうであるーそのような惑星は「潮汐固定」(tidal locking)なる天文現象により、つねに同じ面を恒星に向けていると考えられる(月と同じである)

赤色矮星からはまた、強いX線や放射線、それに赤外線なども放出されている。

系外惑星のなかにはさらに、全表面にわたって、深さ100㎞にもわたる海洋が存在する、いわゆる「オーシャン・プラネット」もあるかもしれない。

このように、地球と大きく異なる環境の系外惑星では、たとえ水を利用するタイプの生命であっても、地球とはだいぶ異なる形態の生き物が考えられる。

たとえば、赤色矮星から豊富に供給される赤外線を光合成に利用する植物が考えられる。

オーシャン・プラネットでは、イルカのように視覚よりも聴覚が発達した生命も考えられる。水中では聴覚のほうが頼りになるからだ。

このように、地球外生命についてあれこれと想像力をめぐらせるのは、なんとも愉快で知的刺激に富んだ作業である。

 

本著の副題は、「われわれは孤独か」

現時点ではまだ、この問いに答えることはできない。

が、僕の個人的な予想を述べさせてもらえば、我々地球人は地球外生命を発見できると信じている。それも“今世紀”のうちに。

 

地球外生命――われわれは孤独か (岩波新書)

地球外生命――われわれは孤独か (岩波新書)