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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『新・帝国主義の時代 右巻 日本の針路篇』

 元外交官にして作家という異色の経歴を持つ、佐藤優さん。

今日ご紹介するのは彼の著書『新・帝国主義の時代 右巻 日本の針路篇』中央公論新社だ。

佐藤さんの他の著作と同様、本著も書き下ろしではなく、佐藤さんの雑誌での連作をまとめて書籍化したものである。

 

本著、ならびにその続編である『新・帝国主義の時代 左巻~』―これについてはまた後日レビューを書く―は、おおまかに、日本がこれから先、アメリカ、ロシア、中国とどう接すべきかについて論じた著作だ。

タイトルにある「新帝国主義」とは、佐藤さんの考えによれば、現代の世界を秩序づけている思想である。

「新冷戦」が叫ばれるようになって久しい。だが佐藤さんは、現下の国際情勢の緊張は、冷戦というよりかはむしろ、それ以前の帝国主義の再来、と考えたほうが良いという。

理由は、イデオロギーの対立ではないからである。冷戦時代は、資本主義と共産主義というふたつのイデオロギーが対立した。

今はそうではない。複数の大国が、自らの国益のみを考え、行動するのである。そこにイデオロギーが顔を出す余地はない。

このような弱肉強食の国際システムは、19世紀末ー20世紀初頭の帝国主義の時代と似ている。ゆえに佐藤さんは、現下の国際秩序を「新帝国主義」と名付け、本著のタイトルとしているのである。

 

佐藤さんは、現下の新帝国主義のアクター(行動主体)を、以下の5つと見ているようだ。

すなわち、アメリカ、EU(欧州諸国は一国ではなく複数あつまってひとつの新帝国主義のアクターを形成している)、ロシア、中国、そして日本である。

佐藤さんは、欧州諸国とは異なり、日本は一国のみで新帝国主義のアクターになれると考えているようだ。

このうち、日本にとってもっとも脅威となりうるアクターは、中国である。

なぜか。

 

中国は現在、前近代的な意味での帝国から現代的な意味での帝国へと脱皮する過程にあるからだ。

 

前近代において、帝国とは、複数の民族が共存する国家体制のことを指した。

これに対し、近代以降は国民国家の時代である。現在の(新)帝国主義国は、この国民国家のシステムを基盤としている。

人々をひとつに束ねるにあたって、一番手っ取り早いのは、「敵」を設定することだ。

―そう、国民国家は敵を必要とする。

フィンランドにとってはロシアがそうであり、アイルランドにとってはイギリスイングランドがそうである。

中国の場合、我々にとって残念なことではあるが、それは日本となってしまったのだ。

ひとたび敵として日本が設定されてしまえば、どんなに日中間で経済協力が深化したとしても、「日本=敵」という基本的な構図が変わることはない、と佐藤さんは言う。

我々日本人、とりわけ中国で事業を展開するビジネスパーソンたちにとっては絶望的な見方だが、佐藤さんの言う通りだと僕も思う。

いたずらに脅威を煽るべきではない。が、日本はやはり中国を警戒すべきである。

 

新・帝国主義の時代 - 右巻 日本の針路篇