Furusawa Keisuke's blog

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書評『この国を動かす者へ』

今の日本、ちと潔癖症すぎやしないか、と思えてならない。

 

たとえば評論家の宮崎学さんは、昨今の暴力団排除の風潮に警鐘を鳴らし、現下の日本社会を「デオドラントな社会」と呼んで批判している。

以前このブログでも著作を取り上げた、社会学者の開沼博さんも、同様に、暴力団新左翼セクトなどの「周辺的な存在」を不可視化しようとする風潮への違和感を表明していた。

 

今日ご紹介する、作家・佐藤優さんの著作『この国を動かす者へ』徳間書店にもやはり、宮崎学さんの言うところの「デオドラントな社会」批判に通じるものを感じた。

 

本著は例によって、佐藤さんの雑誌での連載をまとめて書籍化したもの。

7つの章に分かれており、その全てが「~へ」と呼びかけるかたちとなっている。たとえば「外務省へ」とか「与党・民主党へ」とかいった具合に(当時はまだ民主党が与党だったのだ!)

しかし7つの章すべての根底に流れているのは、序文で示される佐藤さんの以下の信念である。

≪人間には、きれいな面もあれば、みにくい面もある。国家は人間が集まってできた組織だ。従って、国家にもきれいな面とみにくい面がある。しかし、新聞や総合雑誌に連載される内政や外交の評論は、全体からみにくい面を除去したきれい事の世界になっている。きれいごとだけを見ていても、本当の政治や外交はわからない≫(11頁)

僕が思うに、現代日本は、醜い部分を除去し、綺麗事ばかりを飾り立てるようになっている。

だが、佐藤さんは、「そうではいけない、もっと人間のドロドロとした一面を直視せよ!」

ーそう言っているのだ。

 

佐藤さんは、現代日本を動かすあらゆるセクションに警鐘を鳴らす。

とりわけ、自らの古巣、外務省に対しては特に厳しいように見える。

どの文章も、きまって≪コラ外務省! またお前たちはロクでもないことをしでかしたな≫(131頁)といった出だしばかりである。

佐藤さんお得意の「〇〇(←外務官僚の実名)はキンブクロ(陰嚢)のシワを伸ばしながらよく聞くように」という名(迷?)文句は、本著でも健在である。

 

これじゃあ、言っちゃナンだが、まるでヤ〇ザさんの恫喝のようだ。

だが、それこそがまさに佐藤さんの狙いなのだろう。

この世界は、きれいなものばかりでは成立しない。ならばこそ、あえて自らが「汚さ」を一身に引き受けることによって、言行を一致させようとしているのだろう。

 

佐藤さんには、外務省のスキャンダルを官能小説仕立て(!)で著した『外務省ハレンチ物語』なる著作があるのだという。

是非、近日中に読んでみたい。

 

この国を動かす者へ

この国を動かす者へ