Furusawa Keisuke's blog

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書評『経済学者たちの闘い 脱デフレをめぐる論争の歴史』

まさに、タイトルに偽りなし、といった印象の本。

経済学の歴史とは、これすなわち、経済学者たちの闘いの歴史でもあった。

 

本著は、「経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスからさらに、18世紀の思想家バーナード・デ・マンデヴィルにまでさかのぼって、経済学者たちの闘いを振り返っていく。

 

「え、闘い? 経済学者が、誰と戦うの? てか、経済学者ってそもそも闘う職業なの!?」

と皆さん、ふしぎに思われるかもしれない。

 

本著では、アダム・スミスやその友人であったデイヴィッド・ヒュームがいかに当時の英国社会の既得権益層と闘ったか、近代経済学の完成者とされるデヴィッド・リカードイングランド銀行に対し、いかに中央銀行としての責任を追及したか、そして20世紀最大の経済学者ジョン・メイナード・ケインズがいかに金本位制復帰への流れに抵抗したかが、熱すぎも冷たすぎもしない筆致で、描かれている。

 

経済学は、ときに「陰鬱な学問」とも呼ばれる。

社会的不幸を予測する理論を多々生んできたからだ。

だが、その担い手たる経済学者たちは、決して陰鬱なキャラクターなどではなかった。

彼らは実に常人離れしたバイタリティーでもって、世のため人のため、そして自らの信念のために闘ってきたのである。

 

それは、この本の著者とて例外ではない。

…おっといけない、肝心の著者紹介がまだだった(;^ω^)

本著の著者は、経済学者の若田部昌澄さん。

人為的に引き起こされる緩やかなインフレリフレーションによってデフレからの脱却を目指すという、いわゆる「リフレ派」の論客のひとりとして知られる。

本著のなかで取り上げられる多くの経済学者たちと同様、若田部さんもまた、闘う経済学者のひとりとして、デフレを放置する日銀と闘い続けてきた。

 

今回ご紹介する『経済学者たちの闘い 脱デフレをめぐる論争の歴史』東洋経済新報社は、若田部さんが2003年に上梓した著作『経済学者たちの闘い エコノミクスの考古学』に、第二次安倍政権の経済政策ーいわゆる「アベノミクス」の評価などを盛り込んで、2013年に刊行された増補版である。

今回加筆された部分には、若田部さん自身の日銀との闘いの記録も含まれている。

経済学者たちの闘いは、決して歴史上のエピソードなどではない。今もなお、現在進行形で続いているホットなイシューでもあるのだ。

 

 

本著の魅力は、ほかにもある。

専門用語の解説や、コラムが充実していることである。

もともと若田部さんの解説は丁寧だが、これらの注釈を読めばなおのこと、経済学に対する理解が深まることだろう。

 

経済学者たちの闘い―脱デフレをめぐる論争の歴史

経済学者たちの闘い―脱デフレをめぐる論争の歴史