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Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『野蛮人の図書室』

元外交官にして作家という異色の経歴を持つ、佐藤優さん。

彼はまた、尋常でない知識量、連載本数と、それを支える常人離れした読書量でも有名である。

 

今日ご紹介する『野蛮人の図書室』講談社は、そんな佐藤さんが『週刊プレイボーイ』にて連載していたブックレビューを、まとめて一冊の書籍にしたものだ。

佐藤さんにはこのほかにも、『野蛮人のテーブルマナー』という著作がある。巨躯の佐藤さんには、「野蛮人」というキャッチコピーが似合うのかもしれない。

もっともそれはあくまで外見での話。中身は当代きっての教養人だけれども(;^ω^)

 

本著は、「人生を豊かにする書棚」「日本という国がわかる書棚」「世界情勢がわかる書棚」など複数の章に分かれており、最後にある「頭脳を鍛える談話室」は佐藤さんと作家たちとの対談である。

 

例によって、面白いと思った箇所をいくつか挙げてみよう。

佐藤さんは、『蟹工船』が好きではないという。理由は…

≪政治的宣伝色が強すぎるからだ。例えば、川崎船(蟹工船に付属する小型船)でロシアに漂流した船員が、ソ連体制はすばらしいと憧れる記述。そして、労働者が徐々に階級意識に目覚め、団結していくというのも「共産党に入りましょう」という勧誘のようで読後感があまりよくない≫(128頁)

僕はつねづね、『蟹工船』は文学ではなく、ものすご~く長いアジ文である、というのを持論としているので、この佐藤さんの指摘には納得。

 

日本を代表する歴史小説家・司馬遼太郎を軽くdisっているところも面白い。

≪司馬文学は素晴らしいので大いに読むべきだ。しかし、司馬史観はあくまでも物語の世界の話と考え、現実と混同しないことが重要と考える。≫(104頁)

はじめに「司馬文学は素晴らしい」と称賛するものの、それからさき佐藤さんは、出世のため学問を学ぶという態度を司馬文学が肯定しているのはけしからん、といった具合に、ネチネチと司馬文学を批判している。佐藤さん、実は司馬遼太郎が嫌いなのでは…(w

先日このブログで取り上げた『反知性主義とファシズム』での『前田敦子はキリストを超えた』評でもそうだったが、佐藤さんは本の著者をいったんは褒めても、その後、なんだかんだでネチネチと嫌味を言うことがわりと多いように見受けられる(;^_^A

 

最後に、個人的に感銘を受けた箇所をご紹介しよう。

「学歴に振り回されないために」と題された文章のなかで、佐藤さんは学歴コンプレックスや学歴ロンダリング(出身大学よりも難しそうに見える大学院に進学すること)を、自らの経験をふまえて批判している。

佐藤さんは、同志社大学神学部の卒業生だ。神学部の入試は同志社のなかでも極めてやさしかった(=学歴カーストのなかでは低めに位置していた)が、佐藤さんはそのことにまったく劣等感を抱いていない。少し長いが引用する。

≪教授たちは語学が抜群にでき、神学的にいずれも国際水準に達した学者たちだったので、大学と大学院の6年間はとても充実していた。それに生涯の友を数人得た。評者にとって最大の財産だ。

 その後、外交官試験(専門職)を受けたが、この試験に落ちる東大生や京大生もけっこういる。外交官になってから東大出身者、それも比較的成績がよい連中が周囲にはたくさんいたが、「こいつは本当に頭がいい」と思ったのは川島裕元外務事務次官をはじめ5人もいない。

(中略)

 東大、京大、早稲田、慶応などの偏差値の高い大学を卒業した人で、いつまでも出身大学にこだわるのは現在の職場で自分の場所を見つけられない「劣位集団」に属しているから、というのが評者がこれまでみてきた経験則だ。≫(34頁)

個人的な話で恐縮だが、僕はもともと京都市内にある旧帝大(ってバレバレやねw)への進学を希望していた。

が、元来文系人間であったにもかかわらず半ば強引に理系学部を受験させられ、失敗。結局、横浜市内にある国大大学(ってこれもバレバレかw)に不本意ながら進学したという経緯がある。

そのことで、これまでの人生、ずっと敗北感、劣等感を感じつづけてきた。

が、佐藤さんのこの言葉で、すこし、救われた気がしたのだった。

 

野蛮人の図書室

野蛮人の図書室