Furusawa Keisuke's blog

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書評『「知」の読書術』

先日は、作家の佐藤優さんによる読書術指南書『読書の技法東洋経済新報社をご紹介した。

今回取り上げる『「知」の読書術』集英社インターナショナルもまた、タイトルからも分かるとおり、佐藤さんが読書の仕方を教えてくれる本だ。

ただし、本著は大まかに2部構成となっている。

前半部分は「『未完の20世紀』を理解するための読書」がテーマ。いくつかの、わりと専門的な書物が紹介されている。一方、後半部分では電子書籍の活用術が主に語られる。

こうした構成のため、『読書の技法』とはだいぶ趣が異なっている。

 

まずは前半部分から。そもそも佐藤さんのいう「未完の20世紀」とは、いったい何だろう。

皆さんは、20世紀は1914年から始まった、という話を聞いたことがあるだろうか。

「はぁ? 20世紀は1901年から始まったんじゃないの?」

とほとんどの方は答えることだろう(え、1900年からじゃないの、だって? 論外ですね)

たしかに、時間の単位としての20世紀は、1901年から始まった。だが、それとは異なる、ひとつの時代としての20世紀は、第一次大戦の勃発した1914年から始まったーこういう議論があるのだ。

こうした議論では、たいてい、20世紀はソ連の崩壊した1991年で終わった、とされることが多い。だが佐藤さんは、そうではない、ひとつの時代としての20世紀は現在もなお継続している、と考えるのだ。これが佐藤さんのいう「未完の20世紀」の意味である。

なぜ20世紀が終わらないのか。簡単に言ってしまえば、(暦の上では)21世紀になった今日でもなお、我々人類は第一次大戦の原因となったナショナリズム帝国主義と決別できていないからである。

いや決別どころかむしろ、それらはますます力を強めつつある。

そこで本著の出番である。

佐藤さんは、たとえば新・帝国主義ー佐藤さんは現下の国際秩序を、20世紀初頭の帝国主義が形を変えて復活した「新・帝国主義」であるとしているーについては、レーニンの『帝国主義岩波書店も含めて、読者が理解を深めるのに役立つ、やや専門的な書物を本著のなかでいくつか紹介している。

これらの著作を通じて、我々読者が帝国主義ナショナリズムについて、そしてそれらを生み出した近代という時代について、理解を深めていくことを佐藤さんは期待しているのである。

これが、本著前半部分の趣旨だ。

 

一方、後半部分はというと…。

こちらはガラリと趣が変わって、電子書籍の活用指南が主な内容となる。

佐藤さんは大変な読書家で、自宅や仕事場には大量の書物が所蔵されている(『読書の技法』冒頭にその写真がおさめられている)。だがそれとは別に、佐藤さんは電子書籍も活用しているというから驚きだ。

電子書籍の利点とは、いったい何だろう。

佐藤さんは≪現状の電子書籍コンテンツを見ると、教養を形づくるような本は出揃っていません≫(105頁)と書いていることから、電子書籍を安直に肯定しているわけではないことが分かる。

佐藤さんは、しかしながら、電子書籍の「携帯図書館」としてのアドバンテージに着目している。

≪人との会話のなかで、読んだ本から引用する際に、端末を持っていれば正確に引っ張ってくることができる。また、人間の記憶力は頼りないので、本を一度読んだだけでは内容がなかなか頭に残りません。しかし細切れの時間を使って、同じ本を電子書籍で何度も再読すれば、理解が深まるし知識も定着しやすい≫(106頁)

つまり、電子書籍で新しく読むのではなく、紙の本と同じ本を電子書籍で読むのである。メインは紙の本であり、その記憶を支えるサブとして電子書籍を位置づけるのである。これが、佐藤優流・電子書籍の使い方なのだ。

 

本著後半部ではこのほか、インターネットでの情報収集術や英語の学習術までもが解説されている。なんと役に立つ指南書なのだろう。

佐藤さんは、「知の巨人」と称えられる。この巨人は、ありがたいことに、実にサービス精神旺盛なのだ。

 

「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)

「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)