Furusawa Keisuke's blog

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書評『大和ごころ入門』

そもそも、右翼とは、いったい何なのだろう。

なにも、「北方領土奪還!」とか「自主憲法制定!」とか書かれた黒塗りの街宣車の上から大音量で軍歌を流すような人たちだけを指す言葉ではない。

右翼というのは、人間の理性には限界がある、ということをよくわきまえている人たちのことである。

その反対は、左翼である。

左翼は、人間の理性に限界などない、人間が理性を働かせさえすれば、世界はきっとより良い方向へと向かうーそう考える人たちのことである。

現在の日本では、中国、韓国と親しくしている人たちのことを左翼―あるいはカタカナ表記でサヨクと呼ぶことが多いが、本来の意味での左翼は、中韓とはなんの関係もない。

 

人間の理性に懐疑の眼差しを向ける右翼には、したがって霊感のある人が結構多い。

たとえば戦前右翼の大物・北一輝(1883‐1937)は霊感が強く、自らの霊視体験を日記に残しているほどである。

 

今回ご紹介する、村上正邦さんと佐藤優さんの対談本『大和ごころ入門』(扶桑社)を読んで、右翼と霊感について改めて考えさせられた。

まずは著者紹介から。

村上正邦さんは、元参院議員。在職中は参議院自民党において大きな影響力を持ったことから「参院のドン」とまで呼ばれた。2001年、いわゆるKSD事件により逮捕、収監された。村上さんはこの事件を、いわゆる「国策捜査」だとして批判している。

一方、佐藤さんのほうはというと、こちらは皆さんもよくご存じのとおり、いわゆる鈴木宗男事件により2002年に逮捕、収監された。佐藤さんもまた、この事件をいわゆる「国策捜査」だとして批判している。

 

ともに苦い経験を味わった、村上さんと佐藤さん。実はふたりは東京拘置所の、同じフロアの独房に入れられていたのだそうで、そこで勤務していた看守のことまでも覚えているようである。

≪そこで、看守が言うわけです。(中略)

村上 太った人?

佐藤 ええ、小太りの人でした。≫(17頁)

で話が通じてしまうのだから恐れ入る(;^ω^)

ともに屈辱を味わった村上さんと佐藤さんは、したがって目には見えない強い絆で結ばれているのだろう。

 

ふたりのもうひとつの共通点は、右翼だということである。

ふたりとも、天皇に対する尊崇の気持ちや、目には見えないものに対する畏敬の念が人一倍強い。

ふたりは、南北朝時代天皇である後醍醐天皇(1288‐1339)のゆかりの地・吉野をともに訪れたことがある。

吉野には、後醍醐天皇の御陵(お墓)がある。その御陵を参拝したときのことを、佐藤さんはこう綴っている。

≪そこ(引用註:後醍醐天皇陵)で手を合わせると、足が震えてきたんです。地の底から何かが伝わってくるような感じで。『太平記』を獄中で読んでいたときの想いから始まって、<後醍醐天皇、ここまで来ましたよ。ずっと時空を超えて来ましたよ>という感じで、感無量でした≫(94頁)

佐藤さんは、クリスチャンである。クリスチャンは、神道に全面的には帰依しない。しかしその佐藤さんも、後醍醐天皇陵では名状しがたい<なにか>を感じたのだ。

佐藤さんは、単に頭脳明晰であるだけでなくー頭脳明晰な人ならほかにいくらでもいるー感受性が人一倍豊かなのだろう。僕には、先に挙げた北一輝と佐藤さんが、なんとなくダブって見える。

 

佐藤さんは、「座敷童」に関する神秘体験もしている。

佐藤さんと村上さん、他数人で、座敷童がでることで有名な、東北のとある旅館を訪れた。その晩、佐藤さんは女の子の座敷童から子猫を手渡される夢を見たという。この話にはさらに続きがある。

≪確実に座敷わらしが出たんですよ。弁護士の弘中(惇一郎;引用註)先生が「残念ながら、私のところには出なかった。しかし、なんで子供があんなに朝までバタバタうるさくしているんですか、ここの旅館は」とそんなことを言われるわけです。実はそこの子供はまだ乳飲み子でバタバタ歩けるはずがないので「弘中先生、子供って何ですか」「いや、幼稚園か小学校低学年のくらいの子供が、ずっと外を走り回ってうるさくて寝られなかった」と……。

 誰もそんな音は聞いてないわけですね。確かに座敷わらしが出たわけです≫(76頁)

 

世間では、「中国、韓国が嫌いな人=右翼(ウヨク)」という固定観念がすっかり定着してしまっている。

だが、単なる中韓嫌いとは異なる、神秘的なもの、科学では説明できない<なにか>に精神のアンテナを傾ける人こそが、本当の意味での右翼なのだと僕は思っている。

 

大和ごころ入門

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