Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『外務省ハレンチ物語』

作家・佐藤優さんの仕事の幅は、実に広い。

そもそも彼の肩書が「作家」なのは、彼が『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』や『自壊する帝国』などのノンフィクション作品で論壇にデビューしたからである。

だがノンフィクションのほかにも、十八番のインテリジェンス(諜報活動)について解説した著作も多いし、そもそもの専門であるキリスト教神学についてかなり高度なレベルで議論している著作も多数ある。

だが、今回ご紹介する『外務省ハレンチ物語』徳間書店ータイトルから察しがつくかもしれないがー佐藤さんとしては異色の著作である。

なぜって、この本、官能小説なのだ(w

 

本著は三つの章によって構成されている。

一つ目は、日本のある政治家がモスクワにてロシア人の商売女性との間で起こしたトラブルを、当時外務官僚だった佐藤さんがもみ消すという話。政治家の名前こそ仮名となっているものの、この章では佐藤さんはちゃんと「佐藤優」と本名で登場する。

二つ目は、「首席事務官はヘンタイです」と、かなり直截なタイトルがつけられた章。ここでは外務省の規格外の非常識、ハレンチぶりが白日の下にさらされる。読者は唖然とすること請け合いである。

この章では佐藤さん本人は(少なくとも実名では)登場しない。そのかわりに、モデルが自明な「有力政治家」や「西郷茂・外務審議官」、そして「加藤勝・主任分析官」が暗躍するのである。

三つ目は、「家事補助員は見た」という、なんだか某テレビドラマシリーズみたいなタイトルがつけられた章。こちらは在ソ日本大使館に勤務する女性の独白というややユニークな形式で著されているが、ここでもやはり非常識なハレンチ外務官僚たちが仮名で登場、上述の「加藤分析官」も大活躍する。

相変わらず外務省の腐敗体質がこれでもかというほど描かれる一方、インテリジェンスのシビアな世界も垣間見えるのがこの章の特徴だ。

いずれの章も、官能小説というだけあって、セックスに関する描写が豊富である。それが目当てで本著を紐解くという読者も、もしかしたらいるかもしれない(;^ω^)

 

それにしても、佐藤さんはどうしてまた官能小説など書く気になったのだろう。

本著あとがきにて、佐藤さんはネタ晴らしをしている。

≪現下、外務省の能力低下、腐敗、無気力、不作為対質は想像を絶するような状態にある。しかし、それをノンフィクションの形態で書くとセクハラやパワハラの被害者に追加的な負担をかけることになってしまう。また、ノンフィクションの形態でハレンチ事案について記すと、その事実が政治家の権力闘争、高級官僚の人事抗争に利用される。それは筆者の本意ではない。

 いろいろ考えた結果、「官能小説」という形態をとると、外務省の問題に今までとは違った切り口から焦点をあてることができるのではないかという、とりあえずの結論に至った。≫(249‐250頁)

かくして異色の官能小説『外務省ハレンチ物語』が世に出ることと相成ったのである。

 

あとがきでは、また例によって佐藤さんが外務省時代に“お世話になった”外務官僚たちの実名が挙げられている。

≪もちろんこの小説は完全なフィクションなので、これからお名前をあげる人たちをモデルにしているわけではないので、読者はくれぐれも誤解しないでいただきたい≫(252頁)

こういう皮肉たっぷりの書き方がいかにも佐藤さんらしくて、実によろしい。

 

外務省ハレンチ物語 (徳間文庫)

外務省ハレンチ物語 (徳間文庫)