Furusawa Keisuke's blog

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書評『国境のインテリジェンス』

もはや本ブログではすっかりおなじみ、元外交官にして作家の佐藤優さん。

今日ご紹介する本は、佐藤さんの雑誌での連載をまとめた『国境のインテリジェンス』徳間書店だ。

 

タイトルに「国境の」とあるように、今回のテーマは北方領土竹島尖閣などの領土問題である(ただし厳密に言えば尖閣は領土問題ではない)

今まで同様、今回も佐藤さんは自らの古巣・外務省の無能無作為体質を容赦なく斬って斬って斬りまくる。

…のだが。

佐藤さんの話を聞いていると、外務省の無能無作為体質の話よりもむしろ、この省の「人材の層の厚さ」のほうに圧倒されてしまうのだ。

誤解なきよう。優秀というわけではない。

逆だ。あまりにも非常識なビックリ官僚たちが、これでもかこれでもか、というくらいに次々出てくるのである。

本著でも、佐藤さんの著作ではもはやおなじみ、酔っぱらうと赤ちゃん口調になる「赤ちゃんプレイの松」ことM総領事(本文中では実名掲載)が登場、読者を楽しませてくれる。

が。この程度で驚いちゃいけない。世の中、上には上がいるもんですねぇ。

本著で登場するビックリ官僚たちのなかでもひときわ異色なのがオネエ言葉の公使だ。

 

かつて伏魔殿・外務省で奇人変人を数多く目撃してきたであろう、あの佐藤さんをして「規格外の人材」と言わしめる、この公使。

かつて外務省研修生時代、≪大学の寮にロシアの金髪娘を連れ込み、ハレンチなパーティーを毎晩行っていた。そのうちロシア娘を孕ませた。KGBソ連国家保安委員会=秘密警察)は、そのネタでこの研修生を脅そうとしたが、「ロシアのきれいな金髪娘を見れば、ヤリたくなるのが日本男児として普通の感覚だ。子宮に精液を流し込めば、子どもができることくらいあるだろう」と開き直った。通常、女性スキャンダルで脅されると、エリート外交官はビビリあがるのだが、この研修生は、まったく動じなかったので、KGBとしても打つ手がなくなったのである。(中略)

 通常、ロシア娘とトラブルを起こした外交官は、対ロシア外交から外されるのであるが、この人の場合、なぜか主流派に残った。「KGBの脅しにも一切動じないので頼もしい」と評価されたのであろう。≫(158‐159頁)

あまりにも無茶苦茶すぎて唖然とさせられる話だが、そうこうしてこの研修生は在ソ日本大使館の公使となったのである。

上のような経歴にもかかわらず、この公使、興奮するとオネエ言葉で話す癖があったのだという。(※)

 

※これはなかなかに興味深い。普通、こういうオネエ言葉はゲイが使うものなのだが、上掲の滅茶苦茶な経歴を見る限り、どうやらこの公使はゲイではなさそうである。ではなぜオネエ言葉なのか。

…この人物に、僕は並々ならぬ興味と関心を抱いている。

 

ある時、佐藤さんはこの公使に相談を持ちかけた。

≪筆者はこの総括担当公使に、逃げたロシア人妻を追いかけ、外交文書を偽造し、モスクワにやってきた先輩の話をした。すると公使は「まあたいへんね。佐藤ちゃん、あの人は学生時代に遊ばないで童貞のまま外務省に入ってしまったから、女狂いをおこしちゃったのね。僕がきちんと説明しておくわ」と答えた。(中略)「まあたいへんね」とは言っているが、スキャンダルが起きたことをこの公使は明らかに楽しんでいる。≫(160頁)

一体どこまで規格外なんですかアナタは、と唖然とさせられるが(;^ω^)、その後も件の外交官を「あの子」呼ばわりするなど、相変わらずオネエ口調の公使である。

最終的にこの事件はどう決着したか。

≪結局、オネエ言葉で話す公使が、自分の若い頃からのロシア娘との経験などを話し、大和男子のセックスでは、ロシア娘を満足させることはできず、外交官の仕事と性生活を両立させることは不可能であるという説得をし、先輩もその説得に納得し、とりあえず相手から離婚届に署名をとった≫(171‐172頁)

… ごめんなさい、もはやどこからツッコミを入れればいいか分かんないです、と言うほかない話だが、かくしてなんとか事件は解決したのであった。公使曰く

≪「佐藤ちゃん、ほんとうによかったわね。でも童貞で外務省に入ってくる子はほんとうに困るわ。外務省研修所で筆おろしくらい、きちんと指導してくれないと、後で私たちが困るから」≫(172頁)

かくして童貞のまま外務省に入省してはいけないというありがた~い(?)教訓が得られたのであった。めでたしめでたし。

 

…ええっと、本当は笑っちゃ不謹慎な話だとは分かっていても、コレは笑っちゃうよw もはや下手な芸人の漫才よりもよっぽど笑えるんですがw

つくづく、外務省という役所は伏魔殿だということがよく分かりましたね。

 

…あ、ダメだ。オネエ公使の話があまりに衝(笑)撃的すぎて、肝心の領土問題の話がすっかり頭から抜け出ちゃった(w

 

国境のインテリジェンス

国境のインテリジェンス