Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『日本でテロが起きる日』

いまや、我々先進国に生きる人間にとって一番の脅威は、戦争よりもむしろテロだ。

つい先日(日本時間5月23日)もイギリスでテロが発生、若者が多数亡くなるという痛ましい事件が起きたばかりである。

 

本日取り上げるのは、タイトルもずばり『日本でテロが起きる日』時事通信社。著者は作家の佐藤優さんだ。本著は佐藤さんの講演を単行本化したものである。

 

今回もいつものとおり、個人的に興味深いと思った箇所をいくつかピックアップするとしよう。

 

佐藤さんは、「イスラム国」(IS)は戦前のコミンテルンに似ている、と指摘する。

≪1917年11月にロシアで革命が起きました。共産主義の考え方では、全世界で共産革命を起こすことが目的です。資本家を廃止して、プロレタリアートによる支配を確立しないといけない。その時が来れば「労働者に祖国はない」とマルクスは言っています。つまり、全ての国家をなくすという運動です≫(140頁)

だが世界革命の夢は怱々に潰えてしまった。ドイツ、ハンガリーでの革命運動は鎮圧され、社会主義革命はロシアから先へは広がらなかったのである。ロシアの共産主義者たちは方向転換を迫られた。

≪そういう状況の中で、まずはロシアを固める。1922年にロシアを中心に新しい「ソビエト社会主義共和国連邦」(ソ連)という国を造ります。

 ソ連ができる前の革命ロシアは、「国際法ブルジョワが作ったものだから守る必要はない。自分たちがやりたいように革命をやる」、こう言っていました。

 ところが、そういったことはできない状況になって、「コミンテルン」と「ソ連」を使い分けます。「ソ連としては国際法を守ります、各国の内政には干渉しません。コミンテルンがやっていることはソ連とは関係ありません」、こういう二枚舌を使うわけです≫(141頁)

やがて第二次大戦中にコミンテルン解散ソ連はひとつの主権国家として国際社会のなかで生きていくこととなる。

佐藤さんは、イスラム国もソ連と同じ道をたどるのではないか、と見ているようだ。つまり既存の主権国家の枠組みを超克するものとして誕生したものの、結局は挫折し、主権国家のシステムのなかに取り込まれていくだろう、という考えだ。

僕は、イスラム国はそこまでもたない、と見ている。

現時点でイスラム国は相当消耗している。主権国家として残ることすらできず、イスラム国は消滅していくだろうと僕は見ている。先ほどのロシアの例でたとえれば、帝国主義列強による干渉戦争が成功して革命ロシアが滅んでしまった、というイメージである。

なお、以前本ブログでも取り上げた「アナロジーによって世界史を捉える」やりかたが具体的にこういう形で出てきていることにも注目してほしい。

 

「ロシア・プーチンは何を狙っているか―格不拡散体制、韓国が握る鍵」という章も面白かった。

「…え、なんで韓国が出てくるの?」と不思議に思われる方もいるかもしれない。

要はこういうことだ。

2015年3月15日、プーチン大統領はテレビ番組にて「(クリミア情勢について)核戦力に臨戦態勢を取らせることも検討していた」と発言した。

これは、ロシアにとって重要な利益が絡む問題では核カードの使用も辞さないぞ、というロシアの決意表明であった。

ロシアがどうしてこんな物騒なことを言い出したかというと、中東で核が拡散する恐れが強まっているからである。

核武装する可能性が一番高いのは、イラン。もしイランが核をもてば、それに対抗してサウジアラビア核武装する。サウジの体制が盤石ならばまだいいけれど、もし革命が起こってサウジが混乱に陥れば、上述のイスラム国に核がわたってしまう恐れすらあるのだ。

こうなれば現下の核不拡散体制は崩壊する。ロシアは、そうなると見越したうえであえて上のような過激な発言をし、「核が普通にある世界」に対する国際社会の抵抗がどれほどのものか“テスト”をしたというわけである。

さて、いったん核が拡散すれば、その波は中東だけでなく、我々が暮らすこの東アジアにも及ぶ。具体的には、台湾、韓国が核武装するのである。

ここで日本にとって厄介なのが、韓国の核武装

≪韓国が核武装した場合、竹島問題、慰安婦問題、戦時中の外国人徴用工問題、歴史認識問題、これらに加えて核カードを使いながら日本に向かって≫(182頁)くることが予想されるからだ。

佐藤さんはさらに、韓国ナショナリズムとテロの結合についても警鐘を鳴らす。

2015年3月5日、リッパート駐韓米大使が韓国人の男に切りつけられるというテロ事件が発生した。それだけ韓国国内で反米感情が強まっているということだ。

≪韓国では伊藤博文を暗殺した安重根が英雄とされている、こういう文脈の中でナショナリズムテロリズムと結び付き始めている≫(188頁)

…我々はイスラム国よりもまず、韓国を警戒しなければならないのかもしれない(;^ω^)

 

佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日

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