Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『「日本の敵」を叩きのめす!』

経済評論家の上念司さんと憲政史家の倉山満さんは、中央大の弁論部における先輩と後輩の関係にあたる。

1969年生まれの上念さんが4年生のときに、1973年生まれの倉山さんが入部したのだという。

以来、ふたりは二十年以上もの付き合いなのだそうで、現在でも、ネット番組にて対談したり共著を出したり、と極めて親密な間柄にある。

 

今回ご紹介する『「日本の敵」を叩きのめす!』(PHP研究所)も、そんなラブラブ(?)なふたりによる対談本である。

 

タイトルだけ見ると、保守論客のふたりがサヨクを批判する内容かと思ってしまう。

たしかに、サヨク批判もある。だがそれ以上に、ふたりはむしろ保守ー彼らの言葉を借りれば、「偽装保守」ーをこそ批判しているのである。例えばこんな風に。

(倉山)保守を名乗りながら、いま、安倍首相が行っている外交を、「対米追従」とか「アメポチ」などと攻撃しないと気が済まない人たちもいますね。バカですか、という話です(笑)。安倍首相こそ、対米自立外交をやっているんですけどね。安倍首相の唱えるセキュリティ・ダイヤモンド構想って、対米一辺倒とか、中国に媚びたりとか、そういうことをやめようという話ですから。

上念 そんなのどうでもいいんですよ、偽装保守の反米論者にとっては。彼らは、反米的な精神を持った人たちにとっての「反米・心のホットライン」なんです。安倍首相の発言から、ちょっと親米的な発言を切り取って、「これは親米だ! 日本は終わりだ!」「アメポチだ!」って、何でも反対する。そんな意見を聞くと気持ちよくなる人がいるんですよ。まるで変態のようですけれど(笑)。≫(212‐213頁)

「心のホットライン」とは、言いえて妙だ。

僕は随分前から、日本の書籍ーとりわけ新書は、右左を問わず、読者にとって一種の「サプリメント」として機能していると感じていた。

たとえば、日本社会の「右傾化」に疲れたリベラルの読者たちが、高橋〇哉センセイや姜〇中センセイの本を読んで癒される、みたいな感じに。僕は、なんだか栄養不足の人がサプリメントを摂取するのと似ているな、と思ってきた。

一方、上念さんはこうした現象に「心のホットライン」というまことに的確な言葉を与えた。僕が思うに、上念さんにはコピーライターの才がある。

 

ふたりはオタク第2世代(※)なので、対談中、よく『ガンダム』や『銀英伝』などの話で盛り上がる。なにかあるとすぐ、これらのアニメの喩えを使うのだ。

※『ガンダム』の影響でオタクになった世代のこと。これに対し『ヤマト』の影響を受けたのが第1世代、『エヴァ』の影響を受けたのが第3世代である。

特に『銀英伝』に対するふたりの熱意は凄まじいものがあり、99頁では編集者がわざわざ

(編集者註:以下、両著者による『銀河英雄伝説』になぞらえた比喩が少しばかり続きます。物語を知らない方には「?」な部分もあるかと思いますが、ご容赦ください)

と註を入れているほどである(;^_^A 

なお、この『銀英伝』の喩えは延々102頁まで続いている。

 

上念さんと倉山さんは、保守論壇において、一種独特の存在感を放っている。

そして彼らの共著には、仲の良さが全編にわたってにじみ出ている。

本著もまた、ふたりの独自性、親密さがよく表れている一冊だった。

もっとも、ギャグがいちいちマニアックすぎて、若干スベっているきらいがあるけれども

 

「日本の敵」を叩きのめす!

「日本の敵」を叩きのめす!