Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『日本は破産しない!』

ひところよく叫ばれたのが、「このままでは日本は第二のギリシャになるぞ!」というフレーズ。

え、日本がかつての古代ギリシャのように、思想・哲学の世界的中心地になるってこと? やったぁ!

ー残念ながら、さにあらず。

ギリシャのように日本も財政破綻するぞ、というのが「第二のギリシャ」の意味だ。

 

これに真っ向から反論しているのが、今回取り上げる『日本は破産しない!』(宝島社)だ。著者は、経済評論家の上念司さん。

上念さんの文章は、あいかわらず分かりやすい。

『ガンダム』や『銀英伝』など、いささかマニアックなネタに走ってしまいがちな短所はあるが、本著ではそうしたアニメネタは封印(?)されており、とても読みやすい本へと仕上がっている。

 

個人的にとくに面白いと思った箇所が、「人口が減ったからデフレになった!? デフレをめぐる数々の珍説」と題された章だ。

上念さんはここで、デフレに関して巷ではびこっている誤った説を次々と論駁していく。

たとえば、「人口が減ったからデフレになった」という説。

上念さんは≪人口が減ることは将来的な労働投入量の減少を意味しますから、どちらかと言うとモノの供給が減る要因になります。これに対して、お金は印刷すればすぐに増やせるので、人口減少にはあまり関係がありません≫(169頁)と一刀両断。少子高齢化に悩む他国のデータも挙げて、人口減とデフレに関係がないことを示している。

 

もうひとつ、俎上に載せられるのが、「魅力的な商品がないから、デフレになった(=モノが売れない)」という説。

たとえば、若年層にて車が売れなくなったというので「若者の車離れ」が叫ばれる。これについて、社会学者は、日本社会が変化した結果、もはや車がかつて(高度成長期)のような魅力ある商品ではなくなった、それが原因だ、と「説明」をする。

社会学者が言うとなんだかもっともらしく聞こえるが、上念さんはこうした「説明」を、ミクロとマクロの問題を混同していると、これまた一刀両断にする。

≪デフレの問題は、モノそのものに対する需要より印刷された紙(お金、紙幣)に対する需要が大きくなってしまう、ということに尽きます。

 これに対して、魅力的な商品云々という問題は、すでに市場に存在する需要(ニーズ)にどのように応えていくかという話です。

 前者がマクロ的な視点であるのに対して、後者は明らかにミクロ的な視点です≫(166‐167頁)

≪モノそのものに対するニーズが生まれるように、まずはお金を大量に発行することによって、お金に対するニーズを満たしてやればいいわけです。お金に対するニーズが満たされれば、モノに対するニーズが自然と生まれてきます。≫(168‐169頁)

なんだ、日本の社会学はその実、社“怪”学に過ぎなかったのか、とイヤミのひとつも言いたくなってくる。

 

経済の問題に関しては、多くの自称「専門家」たちが、ああでもない、こうでもない、と議論している。

彼らの主張には、残念ながら、上に挙げた例のように、ただちに論破できてしまうものも少なくないのだーもちそん、そうではない主張もちゃんとある

それは実のところ、彼らが経済学を知らないからである(「専門家」なのに!)

彼らの言説に惑わされることのないよう、我々はもっと、経済学を勉強しなければならない。

上念さんは、そのための優れた導き手のひとりである。

 

日本は破産しない!?騙されるな!「国債暴落で国家破産!」はトンデモ話だ!

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