Furusawa Keisuke's blog

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書評『デフレ不況 日本銀行の大罪』

日本においてリフレ派を代表する論客のひとりとして、経済学者の田中秀臣さんの名を挙げることができる。

今回取り上げるのは、そんな田中さんの著作『デフレ不況 日本銀行の大罪』朝日新聞出版)だ。

 

日本銀行の大罪」というサブタイトルからも分かるように、本著はいわゆる「失われた20年」の原因となった、日銀の無為無策の歴史を解説ないし糾弾する本である。

冒頭にて、日銀が責任逃れのために、標準的な経済学から乖離した「日銀理論」を振りかざすことが解説され、次に、そうした「日銀理論」が世界の経済学者たちから酷評されていることが語られる。

続いて、日銀のこれまでの歴史ーすなわち、戦前の昭和恐慌を高橋是清がリフレ政策で克服しようとしたこと(これは輝かしい歴史である)や、1990年代から2000年代にかけての金融政策の失敗につぐ失敗こちらは恥ずべき歴史である)が記述される。

悪手につぐ悪手を連発する日銀は、やはり同様に悪手につぐ悪手を連発して自滅した戦前の旧日本軍と、ダブって見える。

 

本著後半では、小泉政権のとった「構造改革主義」に関する誤解について解説がなされる。

実は、小泉政権時代に景気は回復していたのである。

そういえば当時、テレビで「いざなぎ景気を超えた!」というのでニュースになったでしょう? 実感には乏しかったけれども。

で、ここからが肝心なのだが、その「いざなぎ超え」は、小泉政権構造改革主義の賜物だったのか、否か。

答えは、否である。むしろ小泉政権構造改革主義がなし崩し的に崩壊し、国債発行が増えたことで、景気は回復したのである。

かつて、小泉首相は「国債発行枠30兆円以下」との自らの公約を「たいしたことではない」の一言で放棄、マスコミから随分と非難されたものだが、結果的には小泉首相のほうが「正し」かったのだ。

 

さて、本著終盤では、中央銀行が本来とるべき金融政策が解説され、そこから、日銀が今後とるべき政策の指針が示される。

本著が刊行されたのは、2010年5月、民主党政権真っ只中である。

その後の経緯は、皆さんもよくご存じのとおり。経済に関しまるで無策だった民主党衆院選で惨敗して下野し、第二次安倍政権が成った。この安倍政権のもとでリフレ政策たる「アベノミクス」が実行に移されたのだ。

途中、消費増税などの(大)失政もあったものの、このアベノミクスのおかげで日本経済が少しずつではあるが回復に向かっているのは、周知のとおりである。

本著での提言が、こうして実を結んだのだ。

だが、それまでの道のりは大変険しいものだった。

無為無策を続ける日銀に対し、田中さんたちリフレ派は批判を続けたが、当時はまだリフレ派の論客の数はごく限られたものにすぎず、田中さんたちは実に孤独な戦いを強いられてきたのだ。

当然、無力感に苛まれたことだってあったはずである。日本の将来に絶望したことも一度や二度ではなかったはずである。

それでも彼らリフレ派はめげることなく戦い続け、ようやく今日に至ったのだ。

なんと強靭な精神力だろう!

田中秀臣さんはじめ、リフレ派の人々に敬意を表したい。

 

デフレ不況 日本銀行の大罪

デフレ不況 日本銀行の大罪